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 神田明神参道半ばにある“きやり”。閉伊の号令で幹事を任された良介はちょっと遅れて到着したのだけれど、先に来ていた律子と閉伊は弥欷助をつまみに既に盛り上がっていた。閉伊に催促され、良介はメンバーに席に着くよう促した。

「まあ、取り敢えず、席に着きましょうか」

 良介は律子の隣に座った。閉伊は弥欷助をどかして香穂里を手招きしたのだけれど、そこに腰をおろしたのは齋藤だった。

「誰にゃん?」

「初めまして。齋藤と申します。今後ともよろしくお願いいたします」

 齋藤はそう言って、閉伊に微笑んだ。しかし、その目力に閉伊は一瞬、怯んだ。

「まあ、いっか…」

 齋藤の隣には美子、並んで午雲、水無月、まゆ。弥欷助は閉伊の隣を逃れていちばん手前の席に移った。

 良介の隣にはかおりと糸香がずれてきた。続いてcoachと香穂里が座り、最後に大橋が席に着いた。

 席に着いた良介は顔ぶれを確認した。

「まだ、うさぎさんが来ていないですね」

「うさぎ?日下部ちゃん、ペットも連れて来たのか」

「りっきさん、日下部さんがうさぎさんって呼ぶのは河野夜兎さんですよ」

「なんだ、大橋ちゃん良く知ってるなあ。そうか!夜兎も来るのか」

「取り敢えず、時間も過ぎて居るので始めましょう」

 良介の言葉を聞いて、大橋が仲居に合図した。ビールとグラスが運ばれて来ると、みんなでビールを注ぎ合い、グラスを掲げた。

「ちょっと待った!」

 声と同時に座敷の障子が開いた。夜兎だった。

「うさぎさん!着物、とても素敵です」

「本当に!良かった。日下部さんのために着て来たんだよ」

「能書きはいいから早く座ってビールを注ぐにゃん」

 大橋が夜兎のグラスにビールを注いだ。

「それでは…」

「かんぱ~い」

 良介が口上を述べる前に律子が乾杯を口にした。みんなの視線が律子に集まったが、「まっ、いっか」良介は乾杯を促し、各々、グラスを合わせて乾杯した。


 今回、良介が選んだメンバーはサイトで“お気に入り”に登録していて昨年、活動報告や作品の感想を頻繁に書いたり書かれたりしているメンバーなのだが、それについて齋藤が訪ねた。

「私が知る限りでは一人忘れている気がするんですが」

「そうですね。夏陽ちゃんのことでしょう。悩んだんですが、彼女はまだ未成年ですから今回は見送らせていただきました」

「なるほど。納得です」

「齋藤さんは彼女のことがことのほかお気に入りみたいですもんね」

 水無月が言った。

「今日は初めてお会いした方ばかりですが、日下部さんがお付き合いしているだけあって、みなさん個性的ですな」

「一部の人だけだと思いますけど」

「おい、まゆゆ、それは誰のことにゃん?」

「それを聞く人のことよね」

「カオリン、いつからそんなにきつい女になったにゃん?」

「さあね。それより、日下部さんのお気に入りには女性の方が多いですよね」

「えっ?」

「私もそう思う」

 まゆが頷きながら同意する。

「日下部さんの恋愛小説はとてもリアルですからね。女性のファンが多いんじゃないですか」

「そんなのスケベなだけだろう」

「りっきさんとは違います!」

「そう言えば、まゆゆは鉄人とコラボしたり、誕生日に小説プレゼントしたり親密だよね」

「あら、りったんだって恋人同志みたいに絡んでるじゃない。私は今年、クリスマスプレゼント貰っていないし。ってか、りったん酔いが醒めたみたいね」

「コラボかぁ…」

「糸香さん、どうかしたの?」

 ため息をついた糸香に香穂里が尋ねた。

「私も前にコラボ誘われたんですけど、お断りしたもので」

「ほう、日下部さんを振るとは鉄人ならぬ鉄女ですな」

「午雲さん!」

「私は不倫について色々アドバイスもらっとるんよ」

「そう言えば、かおりさんって日下部さんが今、いちばん通い詰めてる方ですよね」

「あっ!かおりさん、鉄人と不倫してるでしょう」

「なんか、すごいとこに来たなあ。ちょっと病気で休んでる間に不倫掲示板になったか」

「うさぎさん、あまり飲まない方が…」

「ぬかせ!酒呑みに来たのにウーロン茶ばかり飲んでられるか」

「いいぞ!夜兎。もっとやれ」

「ちょっと、誰かこいつを黙らせて!」

「それでは私が」

 そう言って、齋藤は鞄からロープとガムテープを取り出して閉伊を縛り上げて口にガムテープを貼った。

「さ、齋藤さん、やり過ぎじゃあ…」

「coachさん、おとなしいですね」

 さっきから何もしゃべらないcoachを気遣って香穂里が話しかけた。

「なんか圧倒されちゃって。でもほら、水無月さんも」

「いえ、いえ、私みたいな新参者はここに呼んで頂けただけで十分ですから。それにあんな風になるくらいなら…」

 水無月が向けた視線の先では弥欷助が大の字になって鼻ちょうちんを膨らませたり、萎めたりしていた。

「プッ!」

 coachと香穂里は思わず噴き出した。

「そう言えば、すっかり忘れてた。で、この人誰だっけ?」

「カオリン、失礼よ。聞こえてないから良かったものの。ウルトラ福助さんですよ」

「そうだっけ?」

 弥欷助!それでいいのか!


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