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物語は始まった 5話

お待たせしました、第4話の続きです。

ハヤセ達は赤い筒とリュックサックの中身を設置を終えて、ユウトとツバキを待っているとチームメンバーの1人が言う。


「リーダー!車が来ました!追ってきた妖精族プレイヤーは少なくとも30人以上です!」


ハヤセはその言葉を聞くと満足げに頷いて言う。


「よし・・・妖精族に地獄を見せてやろうぜ?」


ハヤセはそう言って手に持っているボタンを押した。








妖精族プレイヤー達は一軒家が密集した道の狭い区画に車が入り込んだのを見て勝ちを確信し、一気に仕留めようと一軒家の密集する区画の上空をしばらく飛んでいると気づく。


密集している一軒家の影から一筋の白い光が何十本も空を飛んでいる彼らのはるか頭上に向かって飛んで行ったかと思うと、白い光が急に消えた瞬間に爆発が起こり凄まじい量の光の玉をそこらじゅうに撒き散らす。


最初は人間族プレイヤーの攻撃かと警戒したものの、妖精族プレイヤーのはるか頭上で握り拳くらいの大きさの色とりどりの光の玉が漂う幻想的な光景を見て妖精族のプレイヤーは思わず呟いてしまう。


「は、花火?なんで花火が・・・?」


「おかしいな?今の時間帯にこんな場所で花火大会か?」


「ここはイベント期間中だっけ?」


「でも綺麗ね!こんな間近で初めて見た!」


そんな何十発もの花火が一斉に打ち上げられている光景に妖精族のプレイヤー達が目を奪われていると、たまたま近くを漂っていた光の玉に興味本意で触っていたプレイヤーが叫び声をあげた。


「きゃあああ!?熱い熱い熱い!誰か助けてぇ!!」


漂う光の玉を触っていた妖精族プレイヤーの体が燃えて急に燃え出して飛べなくなった妖精族のプレイヤーが地面に墜落していく光景に妖精族のプレイヤーはしばらく唖然としていたがチームをまとめていたリーダーが一番先に我に帰ると急いで指示をした。


「みんなこれは罠よ!!はやくここから離れてッ!」


だがリーダーの悲鳴のような叫びと同時に彼らのはるか頭上で漂っていた何万もの火花が一気に彼らに降り注ぐ。


火花を体に浴びた途端に体が燃えて飛べなくなり、地面に勢いよく叩きつけられHPバーが吹き飛び死亡扱いになるプレイヤーが続出するなか死に物狂いで逃げ切れたのはリーダーを含めて僅か5人。


元々車を追っていた妖精族プレイヤーと五分間ずっと飛び続けた疲労困憊の体に鞭打って車を追ってもらった古参プレイヤー達を合わせた30人以上のチームメンバーが打ち上げ花火によって僅か5名にまで減らされた事実に生き残った妖精族プレイヤー達は呆然とするなか妖精族プレイヤー達のリーダーは内心予想外の出来事に焦っていたものの、なんとか冷静を装いながら言う。


「いい?たった5人になったわたしたちが、何処にどれだけの数がいるかも分からない敵を探し出して倒すのはリスクが高いし勝てるかどうかも分からない。でもあの男と女はHPバーが残り少ないし、おそらく銃の弾も残り少ないはず・・・だからせめて仲間の仇討ちをしてからこの拠点から逃げるわ。」


リーダーの言葉にチームメンバーは頷くとユウトとツバキを探し始めた。





※以下ユウト視点です。





俺は一軒家の密集した道の狭い区画に車で入りしばらく走っていると白い一筋の光が何本も空に飛んでいくのを見て、急いで車を停止させ針ネズミになったバンを置いてツバキと共に近くの一軒家の屋根の下に入る。


しばらくすると色とりどりの光の玉が降り注いで来て光の玉が降ってこないことを確認するとツバキと共にハヤセ達の待つ場所に向かった。



一軒家が密集しているため建物の壁や塀が邪魔で見えない道路の曲がり角に近づく度にツバキは俺の前に出ると、H&K MP7を構えて建物の曲がり角の先を慎重にクリアリングし安全を確かめながらハヤセの待つ場所に向かっていくと、何度目かのクリアリングを済ませたツバキが俺に小声で言う。


「・・・持ってきた木箱に入ってたのはやっぱり打ち上げ花火だったんですね・・・どうして花火を使おうと思ったんですか?」


「あの花火は俺がミユがライブステージで使ってるものを『ファルコンクロー』に売ってもらうように頼んだ物なんだ。」



俺はそう言って不思議そうにしているツバキに説明した。






俺の立てた作戦は極めて単純だった。


クレー射撃のように軌道の読みやすいクレーを狙うならともかく、弾丸にかかる重力や横風を考慮しながら空中を高速で自由自在に飛ぶプレイヤーを銃で狙うのは至難の技だ。


つまり空中を高速で自由自在に飛ぶ妖精族プレイヤーに勝つには飛べないようにするか避けるのが難しい攻撃をするしかないが、そうなると航空機に搭載するようなナパーム弾で空中を一気に焼くか重い対空機関銃を幾つも並べて弾幕を張るか熱探知誘導ミサイルで撃ち落とすかぐらいしか方法は無い。


だがそもそもエルフ族や獣人族との戦いの最前線に駆り出されている戦闘爆撃機や戦闘ヘリが使えるなら俺達に依頼する必要がないし重い対空機関銃や熱探知誘導ミサイルは重いために携行数は少ないし値段が高くて数が用意出来ない。


それに止まっている所をスナイパーライフルで狙撃することも考えたが1人を狙撃したところで妖精族プレイヤー達にあっという間に接近されてしまう。


そこで軽くて幾つも携行出来るのに加えて、手軽に設置可能で広範囲に攻撃できる物があったかを考えた俺は大型打ち上げ花火の存在を思い出したのだった。


そんな俺の解説を聞いたツバキは呆れたような顔で言う。


「いやいや、なんでそこで大型打ち上げ花火が出てくるのか全くわかりませんよ。普通の人なら航空機の支援もなしに空中を飛び回る妖精族プレイヤーと戦わないですからね?」




「打ち上げ花火の火花の効果を覚えていたからさ。たまたま俺が間違って打ち上げ花火をガソリンスタンドに撃ち込んだ時に盛大に燃えたから打ち上げ花火の火花には状態異常の燃焼を引き起こすことを知ったんだ。」


「センパイは一体何してるんですか!?何をどう間違えたらガソリンスタンドに打ち上げ花火を撃ち込めるんですか!?」


驚きのあまりにツバキは普通の声で話してしまい慌てた様子で周りを見渡し安全なことを確かめると安堵した顔をする。


俺はそんなツバキに優しく注意した。


「ほらツバキ、静かにしないと敵はまだ近くにいるかもしれないぞ・・・まぁつまりそれから俺は打ち上げ花火について調べたんだ。」

俺はそう言ってツバキに解説を続ける。




大型打ち上げ花火とは消費アイテムで武器ではないのにも関わらずアイテム作成者がリアル思考のため、プレイヤーに花火の火花にぶつかると20%の確率で状態異常の燃焼が発生するよう設定されている。


おまけにバズーカ砲などの武器とは違いアイテムなので重さが非常に軽く幾つも携行することが出来て、しかも爆発範囲は広い。


加えて花火の火花は地面に落ちるまで20%の確率で状態異常の燃焼が発生するように設定されている。


そして妖精族プレイヤーは空を飛ぶので金属鎧は着られないから可燃性の服を着込んでおり、体が燃えた状態で飛ぶことに慣れていないだろう。






そこで今回の作戦は、まず囮を用意し妖精族プレイヤーを引き付けて、追い付くか追い付かないかの速度を維持し妖精族プレイヤーが出せる限界の速度で追わせる。


妖精族プレイヤーの空を飛ぶ行為は俺達が百メートル走を五分間ずっと同じペースで走るのと変わらないので、いくらゲームとはいえど次第に疲労が溜まってくる。


すると疲労が溜まってきた妖精族プレイヤーは楽がしたくなってきて短慮な行動を取り始めていき、頃合いを見計らった俺は疲労困憊の妖精族プレイヤーを一軒家の密集する区画に誘い込む。


そして一軒家の影に隠してある50個の電気着火式大型打ち上げ花火を一斉に発射し妖精族プレイヤーの頭上に5万以上の花火の火花を雨のように降らせることで、疲労困憊で判断力が鈍っていた上に意表を突かれた妖精族プレイヤーが罠だと気づいたときには、既に火花を浴びており状態異常の燃焼が発生している。



後は状態異常の燃焼が発生すれば急に体が燃え出して焦った妖精族プレイヤーは飛べなくなった末に墜落して、落下ダメージでHPバーが吹き飛び、花火の火花の雨を掻い潜って運良く生き延びた妖精族プレイヤーが残っている場合はハヤセのチームが止めを刺す予定になっている。


この方法なら妖精族プレイヤーがどれだけ高速で自由自在に飛んでも撃破することが可能だった。


俺がそうツバキに解説し、ハヤセ達と合流しようとすると複数の羽音が聞こえるなりツバキはMP7のトリガーを引いた。


4.6×30㎜の弾丸が一軒家の影から飛び出してきた五人の妖精族プレイヤーは掠めていった弾丸に驚いて空中で静止する。


「だ、誰・・・きゃああ!?」


「あの女の子・・・ぐぁあああ!?」


五人の妖精族プレイヤーのうち、ツバキに近い妖精族プレイヤーの二人にツバキは鉛弾を叩き込むと残りの3人がツバキと俺の存在に気づき弓を引き絞ると同時にツバキは俺の手を引っ張り、近くにある一軒家の裏手に隠れると俺達のいた場所に矢が突き刺さった。


「いたぞ!あそこの建物の影だ!」


「分かったわ!」


「仲間の仇をとるのよ!」


そんな妖精族プレイヤーの声が聞こえるとツバキは焦ったように俺に言う。


「センパイ、銃に12発と40連マガジンがあと一個の計52発しか弾が残ってません。この数だと頑張って妖精族プレイヤーを二人倒したところで弾切れになります。どんなに頑張っても三人は倒せません。」


そんな焦ったツバキの言葉に俺は苦笑いを浮かべてしまう。


「さすがにこれは予想外だな。まさか妖精族プレイヤー達がハヤセ達の存在を気づきながら囮である俺たちを追ってくるとは思わなかった。確実に倒せる俺達だけを狙ってくるところから、俺達だけを倒してこの拠点から逃げる算段のようだな。」


俺達はそう言いながら音を立てないように気を付けつつ、一軒家の影から影を次々と移動していく間も妖精族プレイヤーの羽音が聞こえては遠ざかりを繰り返す。


俺達が建物の影から次の建物の影に移動しようとすると俺達を探していた妖精族プレイヤーと鉢合わせしてしまい、妖精族プレイヤーが弓を引くより先にツバキがトリガーを引き、そんなトリガーに指を掛けたツバキを見た妖精族プレイヤーはMP7の銃口が光る前に弓を捨てて一気に真上に飛ぶと近くの一軒家の壁に幾つもの弾痕が残る。


ツバキが弾切れになったマガジンを交換し空中にいる妖精族プレイヤーに向けると同時に妖精族プレイヤーはナイフを抜いてツバキを刺そうと一気に突っ込む。


だが突っ込んできた妖精族プレイヤーにツバキは落ち着いて銃を向け、指切りしながら撃つと頭を何発も撃ち抜かれてHPバーが吹き飛んだ妖精族プレイヤーが地面に激突した。


すると銃声を聞き付けた妖精族プレイヤー達が弓矢を引き絞りながら現れ、俺達に矢を射ようとした瞬間にツバキが銃を妖精族プレイヤー達に乱射して弓矢を射るのを妨害したものの、ついに弾切れになった銃を見てツバキは舌打ちする。


勝ちを確信した笑みを浮かべた妖精族プレイヤー達が弓矢を引き絞ると、そこらじゅうから幾つもの銃声が響き妖精族プレイヤーのリーダーは反射的に空へと逃げたものの、逃げ損ねた妖精族プレイヤーを5.45×39㎜の弾丸が蜂の巣にする。


「大丈夫かユウトとツバキちゃん!?」


「すみません、妖精族プレイヤーを一人逃がしました!」


そんなことを言いながら建物の影から現れたハヤセと『ファルコンクロー』のメンバーを横目に俺は空を見上げると、妖精族プレイヤーのリーダーが悔しそうな顔をして逃げ去っていった。


俺はようやく終わったと安心するとツバキはハヤセに微笑みながら言う。


「遅いですよハヤセさん?ハヤセさん達がもう少し遅かったら危うくセンパイも私も倒されて装備を失うところでした。」


そんなツバキの責めるような言葉にハヤセは申し訳なさそうな顔になると言う。


「悪いなツバキちゃん、まさか妖精族プレイヤーがオレ達の存在に気づきながら囮であるユウト達のところにいくとは思わなかったんだ・・・。」


そんなハヤセの言葉にツバキは更に何が言おうとするのを遮るように俺はハヤセに言った。


「まぁツバキ、俺とツバキは生き延びたんだからいいじゃないか。それよりも早くここに『歌姫親衛傭兵団』のメンバーを送ってもらうようにミユに連絡しよう。」


「そうだな、オレ達がバンにある無線機で歌姫親衛傭兵団の最高司令官に連絡するからユウトとツバキちゃんはここで待っててくれ。」


ハヤセはそう言って『ファルコンクロー』のメンバーと共に最高司令官に妖精族プレイヤーを撃破したことを伝えるべくバンに向かうと残された俺とツバキはようやく終わったミユの依頼に安堵の息を吐いた。

一応、物語は始まった編はここでおしまいです。


初めての戦闘描写だったので分かりにくいところが多かったり地味な終わり方をしてしまいましたが次回はうまくいくよう頑張ります。


これからは後日談とオマケを書いた後にツバキとユウトと新キャラが主役の『友好の道』編を始めますのでのんびりとお待ちいただければ幸いです。








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