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物語は始まった 4話

2~3日で更新しますと言いつつ、遅れてしまい申し訳ありません。

あと初めての戦闘描写なので分かりづらいところがあると思いますが、広い心で読んでいただければ幸いです。


後今までフェアリー族とか妖精族とややこしい書き方をしてしまいましたのでこれからは妖精族で統一します。

※以下第3者視点です。



ユウトはツバキに『ファルコンクロー』の黒塗りのバンに乗せてもらい、『本拠点・秋葉原』を出発して森を抜けてそのまま『シティ・暁』に向かって進む事を伝えるとツバキは頷きハヤセが3台のバンに乗るメンバーを指定するとバンは発進した。



ユウトの乗っているバンにはユウトとツバキが後部座席に、ハヤセが助手席で『ファルコンクロー』のメンバーの男が運転手と合計四名が乗っており、後ろの荷台には『ファルコンクロー』が『歌姫親衛傭兵団』から買い取った物の入った木箱とリュックが積んである。


『ファルコンクロー』のメンバーの男は『シティ・暁』に向かって車を走らせながら隣にいるハヤセに小声で聞く。


(リーダー、後ろの座席に座ってる女の子って誰かと付き合ってるんですか?好きな男とかいます?)


ハヤセは急にそんなことを聞いてきた男に驚いた表情を浮かべたが、すぐに哀れな人を見るような目で男を見ながら言った。


(い、いきなりだな?・・・まぁツバキちゃんは誰とも付き合ってないしユウト以外と付き合おうとしないだろうな。だからツバキちゃんを彼女にしたいとか考えてるなら止めておけよ?下手したら怪我じゃすまねぇからな。)


そんなハヤセの言葉にメンバーの男は首を振るとミラー越しに後部座席にいるツバキとユウトを見る。


真面目そうなユウトとその隣で幸せそうな笑顔を浮かべるツバキはどう見ても付き合っているように見えるが、実際は友人以上恋人未満の関係なのだ。


一生懸命に好意を伝えても理解してもらえない不憫なツバキと、そんなツバキの好意に全く気付かないユウトを見ていた男は視線を前方に移すとハヤセに言う。


(・・・あの女の子、ユウトさんの隣であんな幸せそうな笑顔を浮かべてるのになんでユウトさんは気づかないんですかね?あの女の子が可哀想になりますよ。)


そんなメンバーの男の言葉にハヤセは意外なものを見たような顔をしたが、すぐに真剣な顔になると言う。


(・・・ユウトはな、ツバキちゃんの好意に気付かないんじゃなくて多分気付けないんだ。)


(気付かないんじゃなくて気付けない?どういう意味ですか?)


メンバーの男の言葉にハヤセは少し喋りすぎたかと反省するように呟き、1キロほど先に森に囲まれた町が見えるとメンバーの男に指示する。


(・・・『シティ・暁』が見えてきたな。そろそろ近くの森林付近にバンから降りて作戦を始めるぞ、お前は他の車に止まるように合図しろ。)


メンバーの男はユウトがツバキの好意に気づけない理由について気になったものの、今はその理由を気にしている場合ではないと意識を切り換える。


メンバーの男はハヤセの指示に従い他の車に合図をした。




※以下ユウト視点です。




俺の乗るバンは『シティ・暁』から1キロほど離れた森の中で止まるとハヤセや『ファルコンクロー』のメンバーが3台のバンの後ろの荷台からリュックサックと木箱を出していき、木箱を開けると困惑したように言う。


「な、なんだこれ?真っ赤な塗装のバズーカみたいなのが入ってるぞ?」


「火気厳禁のステッカーが貼ってあるな・・・っていうかNPCの店にこんなカラーリングの武器なんてあったか?」


「フェアリー族相手にこんなの持ってく意味が分からないんだが・・・?」


そんな困惑する男達と真っ赤な塗装の筒を見たツバキはぎこちない笑みを浮かべると俺に聞いてきた。


「えっと・・・センパイ?なんであんなもの持ってきたんですか?」


「それは今回の作戦の主役だからだよ、あれで妖精族プレイヤーを倒す。」


そんな俺の言葉が予想外だったのかツバキは唖然とした表情を浮かべていると、木箱の中身を確認したハヤセが俺とツバキと『ファルコンクロー』のメンバー全員に言う。


「取り敢えず必要なものは全て揃ったから作戦通りにいくぞ。まずオレと『ファルコンクロー』のメンバー15人のAチームはこの赤い筒とリュックサックを持って市街地に侵入しこの赤い筒をオレが指示した場所に設置する。」


ハヤセはそう言ってAチームのメンバーの名前を呼び、呼ばれたメンバーはハヤセから木箱から真っ赤な塗装の筒とリュックサックを次々と『ファルコンクロー』のメンバーに渡して細かい説明を始めた。


ハヤセの説明を聞いた『ファルコンクロー』のメンバーが準備し始めると、ハヤセは俺とツバキに言う。


「そしてAチームが赤い筒を設置する間にユウトとツバキちゃんはバンに乗って正面から突入しておき、Aチームが準備完了したらAチームとユウトとツバキちゃんが一気にフェアリー族を攻撃する・・・これで問題ないか?」


ツバキが・・・センパイと私の二人で囮・・・?そんな話聞いてないんですけど?と呟いていた気がするがハヤセは全員に言う。


「・・・よし、じゃあAチームは徒歩で『シティ・暁』に侵入する、Bチームは囮を頼んだぞ!」




※以下第三者視点です。




人間族の拠点『シティ・暁』を手に入れた妖精族のプレイヤー達はすっかり警戒心を解いて面倒臭げな雰囲気を放っており、人間族のプレイヤーに勝利した時のような笑顔はどこにも見当たらなかった。




彼らは妖精族の中でもっとも強い精鋭チームでチームメンバー全員はみんな古参プレイヤーのベテラン揃いだった。


このチームに所属するプレイヤーはスキルポイントを少しだけSTRに振り、後は全部AGIに振ることで他の妖精族のプレイヤーと比べて高い飛行速度や長い飛行時間を手に入れている。


そんな空中を自由自在に飛び回り射程の短い弓矢で攻撃しつつ、敵の攻撃は当たらないという無傷勝利を何度も納めていた彼らだが実を言うと森林同盟と人間族との戦いに飽きて嫌気が差し始めていた。



前まで妖精族のプレイヤー達はもともとエンジョイ勢の集まりで、純粋に空を飛ぶのを楽しんだり曲芸飛行をして遊んだりとそこまで他種族との戦いに興味はなかったのだがグレイン・オルスという名前のプレイヤーが現れてからエルフ族を中心とした森林同盟に否応なしに参加するはめになったのだ。



エルフ族のグレイン・オルスはエルフ族特有の金髪と優れた容姿を持ち誰に対しても優しい性格の男性プレイヤーでグレインの見た目や性格に惚れた女性ファンは多く、男性プレイヤーも剣を使わせたら右に出るものがいないほど強い剣の使い手であるグレインを尊敬していた。


そんなグレインは人間族の強力な兵器や武器を見てもしこのまま魔王軍を倒していけば今度は自分達に強力な兵器や武器が牙を剥くのではないかと考えたグレインは先手を打つべく弱小勢力だった獣人族のプレイヤーや妖精族のプレイヤーなどに人間族を倒すために協力するよう呼び掛ける。


しかし実際にはグレインに声を掛けられた勢力が協力しないとグレインのファンが無理矢理協力をさせようとし、それでも協力しない場合はその勢力に攻め込んで入ったばかりの新参プレイヤーを集中攻撃するという悪質な行為を始めたのだ。


そのため妖精族も空を飛ぶことが楽しみだった新参プレイヤーがグレインのファンに集中攻撃されれば安全な本拠点以外での飛行が不可能になり自由に空を飛べなくなることを危惧した心優しい古参プレイヤーたちが仕方なく同盟に参加する羽目になったのだ。


そんな経緯で彼らは嫌々人間族と戦いを繰り返す事になり、加えて一方的に勝ちが続くので彼らは段々退屈になっていた。



そんな彼らは『シティ・暁』に1台の黒塗りのバンがこっちに向かって走っていることに気がつくと、彼らはお互いに顔を見合わせるなり助走をつけて一斉に飛び立ち、1台の黒塗りのバンに向かって行った。









ハヤセと『ファルコンクロー』のメンバー合わせて16人は背中にリュックサックを背負い、肩からスリングで銃をぶら下げて腕には赤い筒を何本も持って森の中を歩いていき妖精族のプレイヤーに気付かれないように『シティ・暁』に侵入すると俺とツバキはどんどん目的地に進んでいった。


『シティ・暁』の上空には妖精族の姿はないところから囮は成功しているようだとハヤセが安心すると隣を歩いていた『ファルコンクロー』のメンバーが聞いてきた。


「この赤い筒とリュックサックは何に使うんですか?」


その言葉にハヤセはユウトから聞いた作戦を思い出しながら言った。


「・・・そもそもこの赤い筒とリュックサックの中身は武器ですらないぞ。これはな・・・」


ハヤセはユウトに言われた作戦を隣を歩くチームメンバーにそのまま伝えると驚いた顔になり周りで聞いていたチームメンバーも信じられないような顔をしていた。


「そんな驚いた顔してないでさっさと置きに行くぞ、オレだってユウトが言わなきゃこんな作戦なんてやろうと思わねぇよ・・・目的地に着いたな、予定通り設置していくから準備しろ。」


ハヤセはそう言って背中のリュックサックを下ろして中身を取り出した。








『シティ・暁』は住宅団地を幾つも合わせて作ったような町並みで、高層ビルやマンションの類いは存在せず一軒家が多いため妖精族は障害物を気にせず自由に飛び回る事ができる。



そんな『シティ・暁』内の大通りをボディやドアやフロントガラスに何十本と矢が刺さり、天井をPDWで無理矢理ぶち抜いて大穴を開けたバンが疾走していた。


運転手席に座るユウトのHPバーは既に残り2割になっており、全身傷だらけになっているもののハンドルを巧みに操り大通りに放置されている車を避けながら妖精族のプレイヤーがあと少しで追い付くぐらいの距離を保ちつつ車を走らせる。


すると妖精族プレイヤーが地面すれすれの低空飛行でバンの横を並走し弓矢で運転するユウトを撃ち抜こうとすると天井の大穴から上半身を乗り出したツバキが現れると同時に断続的な銃声が響く。


並走していた妖精族プレイヤーがニヤつきながら一気に高度を上げて銃弾を避け、それを見たツバキが舌打ちしながら車内に入ると手に持っているH&K MP7のマガジンを交換しながらユウトに叫ぶ。


「聞いてないですよセンパイっ!?30人以上の妖精族プレイヤー相手に2人で逃げ回るなんて!まぁ愛の逃避行みたいで素敵ですけど・・・ああ、もう邪魔ッ!!」


ツバキはそう叫ぶと車の天井の穴から身を乗り出して低空飛行で車の横を並走しながらバンを運転するユウトを弓矢で撃ち抜こうとする妖精族のプレイヤーに銃を構えて鉛弾を浴びせようとした。


それを見た妖精族のプレイヤーが一気に高度を上げて避けると同時に別の妖精族のプレイヤーが上半身を乗り出したツバキを弓矢で撃ち抜こうとする。


慌ててツバキは車内に隠れるとツバキの頭があった位置を弓矢が通り過ぎていき、それを見たツバキが嫌そうな顔をして言う。


「幾らなんでも二人で相手するには数が多すぎですよ!おまけにあの妖精族プレイヤーの装備からおそらく『スピードスター』っていう妖精族で一番強いチームで・・・って、きゃああああ!?浮いてる!?右側のタイヤが浮いてますよセンパイ!?」


車は交差点に差し掛かった瞬間にユウトは右に急ハンドルを切りアクセルを踏み込んで一気に曲がると、何人の妖精族プレイヤーは片輪走行しながら曲がるバンを見て悲鳴をあげていたがユウトは気にせず曲がりきるとツバキに言う。


「大丈夫だ、妖精族プレイヤーは連続で五分以上飛べないから今攻撃してきてるのは十数名程度だ。それに理論上車は左右35度以上傾かなかったら横転しないし俺だけじゃなくてツバキも乗せてるんだから無茶をして事故するような真似もしない。」


「何故なんですかね!?私を乗せてるから無茶しないって言葉は嬉しいのにセンパイのスペックが高すぎて片輪走行しながら道を曲がるのが無茶に入らないせいで素直に喜べないです!」


そう叫ぶツバキを横目にユウトはバックミラーに追ってくる妖精族プレイヤーの姿が映っているのを確認すると、ユウトは妖精族プレイヤーとの距離を一定に保ちつつ路上に放置されている車を避けるとツバキに振り向いて言う。


「いや?理論上は可能だから出来るんだ。俺の実力じゃないよ。」


「分かりましたから、センパイは前を見て運転してください!?あとさっきから邪魔なんですよこの妖精ッ!」


後ろを向きながら片手で運転するユウトにツバキは青ざめながら叫ぶと、穴が開いた車の天井から身を乗り出して車の後ろをのんびりと追ってくる妖精族プレイヤーに銃を構えてトリガーを引く。


4.6×30㎜の弾丸が幾つも空に撃ち出されたものの揺れる車から身を乗り出して撃った弾丸は、空を自由自在に飛ぶ妖精族プレイヤーの横を通り過ぎていくだけで当たらない。


ツバキは弾丸を避けて余裕の笑みを浮かべる妖精族プレイヤーを嫌そうに眺めていると、車に2人の妖精族プレイヤーが近付いてきてツバキをバカにするよう言う。


「一発ぐらい当ててみなさいよバーカ!」


「しっかり狙えば当たるかも?」


そんな車の後をつけてくる2人の妖精族プレイヤーにツバキは暗い笑みを浮かべると言う。


「ふふふ・・・センパイ、次の角を右に曲がってください。」


そうツバキは言うとユウトは不思議そうな顔をしながら細い道に入っていく。


そこは狭い道の商店街の様なところで屋台が並んでいるためユウトは妖精族プレイヤーに追い付かれないようにアクセルを踏み込みながら屋台を避けていく。


そんなジクザグに走る車の天井の穴からツバキが上半身を乗り出して銃をそこらじゅうに乱射するのを見た2人の妖精族プレイヤーは車の近くを飛びながらバカにしたように言った。


「そんなの当たるわけ・・・わぁあっ!?」


車の近くを飛んでいた2人の妖精族のプレイヤーは車の真横に並走しユウトを弓矢で撃ち抜こうと車の横に入り込んだ瞬間、妖精族プレイヤーの目の前に中折れした街灯の柱が倒れ込んでくる。


1人の妖精族プレイヤーが中折れした街灯を避けきれずに激突してHPバーが吹き飛び、もう1人の方は予想外の事態に慌てて急停止した瞬間を逃がさずツバキは銃を撃つと残った妖精族プレイヤーは鉛弾を全身に浴びてHPバーが吹き飛んだ。



それを見ていた妖精族プレイヤー達は車を遠巻きで眺めながらお互いに話し合う。


「ど、どうしたの!?なんで味方がやられたの!?」


「あの栗毛の女の子、銃を乱射するふりして商店街に並んでる細い街灯の柱を撃ち抜いてやがった!」


「それはともかく、このままだと埒があかないからそろそろ仕留めにかかるぞ!」


そう遠巻きに見ていた妖精族プレイヤー達は車に乗っているユウトとツバキを仕留めようと一斉に襲いかかり、矢を雨のように降らせようとするのをツバキは必死でMP7を乱射し弾を撃ち尽くす前にスピードリロードを繰り返しと、とにかく妖精族プレイヤーの妨害を行い弓矢を撃たせないようにする。


しかし商店街の細い道から大通りに出るとそこには休んでいたところを鞭打って増援に来た妖精族プレイヤー達が待ち伏せしており、ツバキが慌てて車内に戻るとバンの天井に矢が針ネズミのように刺さり、天井の穴から入ってきた矢がツバキの肩や腕を掠める。


ツバキのHPバーが残り3割になるのを見たユウトはそろそろ限界だなと呟き、ある場所に向かって車を走らせた。


この話の続きはもうすぐ出る予定ですのでのんびりとお待ち下さい。

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