【1】
新作です。
勢いだけのお話ですがどうぞ宜しくお願いします。
「嘘……」
「紫…すまない…」
突然通っていた学校から実家に呼び出された私を待っていたのは、借金ができたという話だった。
父親が会社の同僚の保証人になっていたのを今日始めて知った。
その同僚が行方不明になり借金を背負う事になったという…
その額一億とんで三千万!!
勘弁してよ!どうやって返せというんだ!!
「その逃げた人の足取りは掴めないのか?」
「ああ。見事に家はもぬけの殻だったよ…まさか大嶺がそんな事をするなんて…」
「そこは意地でも探し出すに決まってるだろ!こんな大金背負ういわれはないんだから!で?支払いはいつまで?」
「……」
「父さん?」
「……明日までだ」
「え?」
「明日までに支払わなければ、この家のものは差し押さえられる」
「はああああああ?」
「それでだな……」
まだ何か言っている父はさておき、私は思考のふちに沈む。
一億三千万って、あの一億よね?それ宝くじでも当たらないとすぐには返せないよね。
ああもう、だから父さんは母さんに捨てられたりするんだよ!
しかも大峰さんって、今まで名前すら聞いた事ないよ!そんな大して深く知らない人からのお願いをほいほい聞くからお人よしの馬鹿って言われるんだ。
第一娘の私に一言も断りもなくハンコを付くな!ってあれほど言ってたのに!!
私が寮に入ったからいけなかったのか?そうなのか??
もともと大して裕福でもない一般家庭で育った私は、某有名なお嬢様学校に通っていた。
もちろん奨学金目当てだ。財力が有り余っている女子が通う高校では、成績優秀者には学費から制服まで全て無料で提供される。
しかし、ここは幼少時から通う名家の者が多く、外部生はごく少数だから私のようなものは目立つ。
そして隔離とも言われる狭い世界だ。入学すれば家柄でいちゃもん付けられる事は目に見えていた。
なので私はオ●カル様を目指す事にした。
長い髪は1つに縛り、元々釣り目できつい顔立ちと、モテモテな従兄弟の雅司兄を参考にした甘い台詞と立ち回りはお嬢様方の心をわし掴みにした。
もちろん運動にも力を入れ、テニス部のエースにもなった私は麗しの王子様と言われるようになった。
お嬢様学校なだけあって、男性と触れ合う事のできるのは、近くにある名家の通う男子校との合同イベントのみだ。
女子高なら仮初の恋に夢中になるだろうと思った私の予想は大当たりだった。
私は見事この学園で王子の地位を築いたのだ。
このままここを卒業し、作ったコネを総動員しながらより良い仕事に就き、趣味のお菓子作りでいずれは店を持とうと密かに企み、順調に友人を増やしつつ卒業まであと一年!と思っていた。
なのに…
「おめでとうございます隼人様!」
「綺麗です紫様…私の事わすれないでくださいませ…」
「紫様!私ども一同紫様を応援いたしますわ!!」
「隼人様紫様を幸せにしてくださいませ」
純粋にお祝いを言う者。
祝いの言葉と共に泣き去っていく者。
きらきらと目を輝かせて応援する者。
そして睨みつけるように殺意をぶつける者達を前に、彼は極上の笑顔で答えた。
「ありがとう。勿論紫を大事にするとここにいる皆に誓うよ」
どうして結婚なんて事になっているんだよーーー!!