その人の手を取り
掲載日:2012/05/31
君とここまで来ちゃったんだね。
何も言わない君は、ただ、空をじっと見ている。
僕はまるで独り言のように、君に語りかけ続ける。
君は、どうしたいんだい。
話しかけても、なにもしゃべらない人形のような君を見ると、僕は思わず涙が出てきそうな気がする。
でも、何を言っても、君は反応を返してくれない。
悲しくなったが、僕は君に話すことをやめなかった。
気付けば、もう何時間も話し続けていたようだ。
扉が目の前に迫っているのに、やっと気付いた。
扉の上には、何か文字が書かれている。
だが、私には読むことができない文字だ。
扉をくぐると、そこには誰かがいた。
誰かは分からない。
「待っていたよ」
その人は言った。
そうですかと僕は言った。
君は、ゆっくりとその人のところへと向かい、そしてその手を取った。
「さあ、あなたもこちらへ」
それは抗えぬ何かの力が働いていた。
自然に意識は薄れてゆき、手を取った瞬間、僕の意識は霧散した。




