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ファースト・キスの魔法【完結執筆済】  作者: 姫 沙羅


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秘宝を求めて③

 リュートの目が見開いて、両手を突き出したラヴィアンが衝撃を受けて顔を歪ませる姿が映り込む。

 防御壁は一瞬にして霧散したが、腕がびりびりと痺れる程度でラヴィアンに怪我はない。

「大丈夫ですか!?」

 大丈夫だろうと思いつつリュートのほうへ振り向けば、その綺麗な顔はすぐに真剣な面持ちになった。

「ありがとうございます。ちょっと気が緩んでいました」

「そんな感じはしてました。けど、しっかりしてください」

 奉納庫を見つけたことで、リュートの緊張が緩んでいたことには気づいていた。だが、本番はここからだ。

「すみません」

 ぴりりとした緊張を取り戻したリュートが謝罪を口にして、ラヴィアンとともに先ほどの衝撃波の正体へと顔を向ける。

「まさか、石像が動くなんて……」

 ラヴィアンの視線の先には、細長い槍を持った奇妙な生物が宙に浮いていた。その数、二匹。

「まぁ、ただしくは、石像に擬態していた、でしょうか」

 そう……、その奇妙な生物は、まさに玄室の扉の横に置かれていた石像が息を吹き込まれたものだった。

 その身ごとラヴィアンたちのほうへ突っ込んできたはずの生き物は、とくにダメージを受けた様子もなく、二匹並んでふよふよとこちらを窺っている。

「シャロル!」

 一瞬の睨み合いがあった後、相棒へ視線を向けることなくリュートの厳しい声が上がった。

 ――にゃあ!

 すぐに前へと駆け出したシャロルは、リュートに応えるように短い鳴き声を響かせる。

「先手必勝。いくよ」

 ――にゃあ!

 ぶつぶつと(まじな)いを呟くリュートの足元から風が巻き上がり、リュートは頼もしい相棒に並び立つ。

「きゃ……っ?」

 ラヴィアンもすぐに魔術を発動できるように身構えてはいるものの、自然とリュートの後方に庇われるような立ち位置になってしまう。

「滅せよ!」

 言葉は力となり、リュートの足元から渦巻いていた風が、鋭い刃となって浮遊体へ飛んでいく。

 だが、その攻撃は浮遊体へ辿り着く前に薙ぎ払われ、仕返しとばかりに赤い口がぱかりと開いた。

「――っ」

 超音波のようなものがラヴィアンの鼓膜を震わせて、耳鳴りと同時に頭がくらりとした。

 音なき攻撃を迎え撃ったのはシャロルだ。

 シャロルの全身の毛が逆立ち、今まで見たことがないような怖い表情で鳴き声を上げたかと思えば、ぱりん……っ、となにかが壊れる感覚がして、衝撃波が相殺した。

「ち……っ」

 簡単には破壊できないことを悟ったリュートの口からは小さな舌打ちが零れ、二匹の生き物を睨み付ける。

 基本的にはシャロルが防御を担当し、リュートが攻撃をするという攻防戦が繰り返される。

 隙を突き、時折シャロルも援護射撃をするものの、不意打ちまではいかずに悉く跳ね返されてしまう。

「……く……っ」

 飛んできた槍を身を捻って避けたものの、刃の切っ先が頬を掠め、リュートの顔が悔しげに歪んだ。

「リュート様……っ!」

「ラヴィアンさんは離れていてください……!」

 咄嗟に駆け寄ろうとしたところを制され、ラヴィアンはその場で動きを止める。

「申し訳ありませんが、貴女には少々重荷な相手です……っ」

 たった数十秒の攻防戦から、それくらいのことは理解した。

 多少であればやりあえないこともないだろうが、結果は火を見るよりも明らかだ。

 わかっている。ラヴィアンが下手に動けば邪魔になるだけ。お荷物になるだけだ。

「でも……っ」

 二匹の奇怪な生き物にじわじわと押されている感覚が、なんとなく肌に伝わってきた。

 この不利な状況下で、ラヴィアンにもなにかできることはないだろうか。

 魔術学校の首席卒業の実力はこんなものなのかと悔しくなる。たとえ役に立つところまではいかずとも、足を引っ張ることはないと思われて同行を望まれたのだろうに。

 二匹の生き物のうちの片方の口が開き、また超音波が放たれるのかと身構える。

 だが。

「! リュート様……っ! 後ろ……!」

 攻撃に備えた隙をつき、もう一方の生き物が一瞬にしてリュートの後ろ側に回って距離を詰めた光景に、ラヴィアンの口からは焦燥の声が上がった。

「――!?」

 リュートの目が驚きで見開かれ、迫りくる炎の塊が映り込む。

「リュー……」

 防御壁を張ろうにも、突然すぎて間に合わない。

 リュートもリュートで咄嗟に逃げることも叶わず、そのまま炎に身を包まれてしまうかと、ラヴィアンの口から悲鳴が上がりかけた時。

 ――にゃぁぁぁ~~!

「シャロル!?」

 リュートの前に飛び出す小さな黒い影があり、リュートの口から動揺の声が上がった。

「……っ!」

 ラヴィアンの目の前で、小さな身体が炎の塊を一身に受けて燃え上がる。

 どす黒い炎に包まれたシャロルの身体はそのままリュートの足元に落ち、火はすぐに消えたものの、全身が焼き焦げた小さな身体は力なく倒れたまま。

「シャロル……!」

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