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ファースト・キスの魔法【完結執筆済】  作者: 姫 沙羅


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22/40

密会④

「先ほども言いましたが、それはありえません」

 最後のキスのくだり以外の話をしたラヴィアンに、リュートは再度、不審者の正体は自分の身内ではないと断言した。

 だが、十年も前の出来事で、いくら子供だったとはいえ、そこまで記憶があやふやになっているとは思えない。

 少なくともあの時の不審者は、怪盗のような黒いマント付きの装束に身を包んでいた。

「……どういうことだ……?」

 リュートはわけがわからないと眉を顰めて悩んでいるが、ラヴィアンにも意味がわからなかった。

 なによりも最大級の謎は、ラヴィアンの唇を奪っていったことだ。幼い子供の唇を奪うなど、幼女趣味の変態だったのだろうか。

 だが、不審者の性癖は置いておくとして、その所業はラヴィアンが怪盗のリュートとはじめて対峙したあの日の出来事とも重なった。

 果たして、こんな偶然がなんの意味もなくあるのだろうか。

「なので、王家の墓からすでに秘宝が持ち出されてしまっているという殿下の話は嘘ではないかと……」

 あの日の記憶を手繰り寄せてみても、不審者の青年がなにかを持っていたような気はしない。だからといって、王家の墓から秘宝を盗んだ犯人ではないと断定もできなかった。

 そもそも、王家の秘宝がどういったものなのか具体的な形状は知らないが、胸元に隠し持つことができてしまうくらい小さなものだとしたら、幼いラヴィアンが目にしているはずもない。

 ただ、これだけの偶然が重なって、あの時の不審者が秘宝を盗んだ犯人ではないなどとは到底思えなかった。

「だとしても、確認しないわけにはいきません」

 たとえ王家の墓からすでに秘宝が持ち出されている可能性が高いとしても、次の段階に進むためには、そうではない僅かな可能性を潰してからでなければならないと、リュートは悔し気に表情を歪ませる。

「今日はまず、その話をしようと思っていたんです」

 一端気持ちを切り替えて、真剣な表情になったリュートは真っ直ぐラヴィアンを見つめてくる。

「秘宝が本当に盗まれてしまっているのか、殿下から確認する許可をもらいました」

 王家の墓に何者かが侵入し、そこから奉納品を盗み出したことがたしかでも、それがリュートの求めている秘宝とは限らない。

 一縷の望みをかけて王家の墓に向かうことを決めたリュートを止めることも反対する理由も思いつかず、ラヴィアンは黙ってリュートの意見に耳を傾ける。

「現状確認が一番でしょう」

 秘宝が王家の墓の中に現在も眠っているのか、それとも行方不明なのか。結果次第で今後の動きが変わってくる。

 怪盗としてのリュートの行動はもちろんのこと、表向きの警備責任者としての仕事も同時に考える必要がある。

 すでに秘宝が盗み出されているというのなら、今後怪盗に侵入されてもかまわないという話にはならないが、それでも王家の墓に手厚い警備を敷く必要がなくなることはたしかだ。

 そのためにも、一度王家の墓の中にある奉納庫を確認させてほしいと王太子に願い出たところ、許可を下ろしてくれたとのことだった。

「メンバーですが……、殿下は僕が魔術遣いだとはもちろん知りません」

 現状、王太子に本当の話をすることができない以上、王家の墓に向かうメンバーは、かなり厳選された精鋭部隊ということになる。

 だが、それなりの実力があり、口が硬い者を数人……、と思っていたラヴィアンの考えは、すぐに否定されることになった。

「ですので」

 にこり、と笑ったリュートの視線に嫌な予感を覚えたのは、気のせいなどではなかった。

「貴女と僕と、二人で行くことになりました」

「……はい?」

 あっさりと告げられた内容に、ラヴィアンは聞き違いかと疑問符を投げかける。

「あぁ、もちろんシャロルも一緒ですけど」

 けれど返ってきた追加メンバーは期待したものではなく、ラヴィアンは思わず顔を引き攣らせてしまう。

「そういうことでは」

 問題はそこではない。リュートの相棒を務める聖獣・シャロルがどのような力を持っているのかは知らないが、いくらなんでも二人と一匹のパーティーでは頼りなさすぎはしないだろうか。

「事情を知らない者に同行されても厄介なだけですし」

「それは……、そうですけど」

 リュートの意見はもっともだが、本当に大丈夫なのかという不安は残る。

「貴女が優秀な術師で助かりました」

 警備団の中だけに留まらず、ラヴィアンの魔術の実力は魔術学校時代から知られている。

 その名声があったからこそ王太子からの許可も出たのだと嬉しそうに話すリュートに、なんとも複雑な気持ちになる。

「一緒に来ていただけますか?」

 そう窺ってくるリュートは、笑顔の中に少しだけ不安そうな色を覗かせていて、ラヴィアンは溜め息混じりの頷きを返す。

「わかりました……」

「ありがとうございます!」

 途端、太陽を思わせるような明るい光を放ったリュートに、どうやら自分はかなりリュートに絆されているらしいと自覚する。

 ついついなんでも許したくなってしまうのは、人懐こい大型犬を思わせる無邪気さに邪気を抜かれてしまうからだろうか。

「日程ですが……」

 行動を起こすのならば、すべてにおいて早すぎることはない。

 王家の墓に向かう日の調整と具体的な捜索案などを提示してくるリュートの話に耳を傾けながら、頭の隅でラヴィアンなりに情報を整理する。

 もし王家の墓に秘宝が残されていなかったなら、十年前に秘宝を持ち出した人物を探し出さなければならなくなる。

 それは、砂漠の中から砂金を見つけるくらいに難しい気がして、考えたくもない最悪の事態だった。

(とりあえずは、リュート様の言うように、王家の墓の秘宝を確認してから……!)

 そこに秘宝がある望みは薄いと思いながらも、ラヴィアンは来るべくその日に向けて気合いを入れたのだった。

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