77話 ついに別れの時、さぁ、家に帰ろう!!
『さて、忘れ物はありませんね?』
『ああ、昨日しっかり確認したからな』
『おもちゃ、わすれてない?』
『いろぬりせっと、わすれてないなの?』
『ぬいぐるみも忘れてないんだ?』
『あましあ、ちゃんといれた? いっぱいだよ?』
『うんなの』
『海だとなかなか飲めないんだな』
『はぁ、あなたたちのは昨日、5回も確認したでしょう』
『どれだけ確認すれば気が済むんだ。大体、少しの間それがなくても、次回街に来た時に買えば良いだろう』
『それ、ずっとあと。それまでまてない』
『まてないなの』
『ない時は、すぐに戻ってこないとダメなんだな』
『はぁ、そろそろ行くぞ。ただでさえ昨日の話し合いで疲れていっていうのに、お前たちでまた疲れたくはないからな?』
『そろそろ出ますが、問題ないですか?』
「ああ、大丈夫だ」
『荷物が多いようでしたら、私たちが持って行きますが』
「いいえ、こちらが無理にご一緒させていただくのですから。ベルナード様のお荷物も、私自身の荷物も、私がしっかり持ってまいります」
『そうか。だが、もしも無理そうなら、すぐに言ってくれ。俺たちはどれだけ荷物があっても、問題ないからな』
「ありがたく存じます」
『それでは出発しましょう』
「外に馬車を用意してある。人があまりこない、俺たちがあまり目立たない海岸までそれで移動して。そこからはお前たちに任せる」
『分かりました』
お屋敷を出ると、門の前には住民が使用する馬車が用意されていて、私たちがその馬車に乗り込むと。すぐに馬車は走り出し、街のお店通りを抜け、やがて人影の少ない海岸へと向かった。
海岸に着くまでの間、私は馬車の1番後ろに座り、街並みを眺めていたよ。当分の間、陸には上がらないからね。初めての異世界の街、ちょっとしたゴタゴタはあったけど、楽しいことばかりで、次に別の街へ行くのが楽しみ。
今日、私たちはいよいよ街を出て、私たちの家に帰るよ。次に陸に上がるのは、4ヶ月か5か月後だって。
次の陸での予定は、まだどうなるかは分からないけど。まずベルナードさんたちを街に送り届けて、その後すぐにケイブンさんの所へ。それから数日街で過ごした後、別の街へ行くって。
前日のケイブンさんとの、ありがとうさようならのパーティーね。結局後半ずっと、喧嘩をしていたベルナードさんとケイブンさんだったけど。最後の方で、まさかのケイブンさんまで、私たちについて来たいって言い始めちゃって。諦めてもらうのが大変だったんだ。
でもケロケロとグレイスが、何とかケイブンさんを説得してくれて、ようやくケイブンさんは諦めてくれたの。ただ。ただね、ある約束をする事に。
それが次回の予定に組み込まれている、ベルナードさんを送った後に、ケイブンさんの所へ行く、なんだ。
次回街に来た時は必ず、ケイブンさんに会いに来ること。それで剣のメンテナスをさせる。それから、ケイブンさんのお酒に付き合う。後は1日で良いから行動を共にする、だって。これで何とか今回は、諦めてもらえたんだ。
よかったよ、無理やりついて来られたら、ケロケロたちの正体がどんどん他の人にバレちゃうってことだもん。
ただ、この話し合いの後に、またケイブンさんにお礼を言う出来事があったんだ。私たちを気に入ってくれたケイブンさんが餞別として、ケイブンさん作の、たくさんの武器をくれたの。
ケロケロとグレイスに合う剣や小刀、斧に槍、ナイフに投げナイフ、それはもう本当にいろいろな武器を用意してくれていて。しかもケロケロたちだけじゃなく、私やポル君たちの分まであったから、全部合わせるとかなりの量の武器を用意してくれていたんだ。
もうさ、何回もお礼を言ったよね。だっていくらケロケロたちがお金を持っていたとしても、ケイブンさんが作るとても素晴らしい武器は、そうそう買える物じゃないんだから。
だから最初、ケロケロたちは、お金を払おうとしたんだ。でもケイブンさんは、絶対にお金を受け取らず。ケロケロたちもあまりしつこくするのは失礼だって、ありがたく受け取ることに。帰ったら、貰った武器でも訓練するんだ。
「お、そろそろだな」
お屋敷を出てから20分くらいして、ベルナードさんが外を覗きながらそう言うと、ガタンと音を立てて馬車が止まったよ。そろそろというか、ちょうどだったみたい。
すぐに馬車から降ろしてもらって周りを見る。するとそこは岩ばかりの場所で、遊べるような場所じゃなく。見える範囲でだけど、人も見当たらなかった。
「この場所は、何故か魚も貝もあまり集まらなくてな。釣りをする住民もいないから、海に出るなら、ここが良いと思ったんだ。どうだ? 出られそうか?」
『ああ、問題ない。ところでお前たち、始めどうするつもりだ?』
「ケロケロが目立つといけないからな。途中までは小舟で行くから、途中から背に乗せてくれるか?」
『それは構わんが、その船はどうするんだ? 俺がしまって持って行くか? そうすればリアたちが、向こうで船を楽しめる』
「なるほど、それもありか。いやな、アルセインが水魔法が得意でな。少しの荒波でも小舟を操る事ができるから、アルセインに持って帰ってもらうつもりだったんだが。アーセリオ、小舟は持っていって良いか?」
「ええ、かまいません」
「そうか。よし、じゃあ船は持って行こう」
見送りに来てくれたアーセリオ様に許可をもらって、小舟を持っていけることになったよ。
岩場に接触しないように小舟を海に浮かべ、より目立たないようにって、ケロケロ以外は船に乗ることに。順番にみんなで乗って、ちょうどくらいの大きさの小舟だったよ。ポッカとチーちゃんは飛んでくれてるしね。
『それじゃあ、街にいる間は世話になったな』
『他にもいろいろと教えていただき、ありがとうございます。これで帰っても、ポルたちを喜ばせることができる』
「いえ、こちらこそ、サンデリオのこと、本当にありがとうございました。大きな被害なく奴らを撤退させられたのも、あなた方のおかげです。次回もぜひ、屋敷へお越しください。それと兄のこと、よろしくお願いします」
『ああ』
『数ヶ月後には必ず連れて来ます』
「じゃあ、行ってくるな」
「兄上、決して迷惑をかけぬようお願いしますよ」
「迷惑なんてかけるかよ」
「アーセリオ様、ベルナード様のことは私にお任せください。何かありましたら、すぐに私が止めますので」
それぞれ短い挨拶を終わらせる。最後は私とポル君が。
「ありがちょ、ごじゃまちた!!」
『くっきーとけーき、ありがとございます!!』
「また、遊びに来てくださいね」
「あい!!」
『ほい!!』
ランドルフさんが船を漕ぎ始めて、船の隣をケロケロが泳ぎ始める。
「ばいばい!!」
『くちゃらちゃあ、ばいばい!!』
『くちゃらちゃあ、ばいばいなの!!』
『バイバイなんだな!!』
ポル君たちと一緒に手を振る。どんどん姿が小さくなっていくアーセリオさんたち。そうして少しすれば、アーセリオさんたちはすっかり見えなくなった。
面倒な事があって、他の街へは行けなかったけど、それでもたくさんの出会いがあって。初めての異世界の陸は、とっても楽しかったし。それに帰ったらやりたい事いっぱい。
それに待っててくれてるみんな、元気にしてるかな? お土産もいっぱいだし、みんな喜んでくれると良いなぁ。
そんなことを考えながら、私は街が見えなくなるまで、ずっと街を眺めていたんだ。




