57話 もう1つ魔獣契約と、あれ? これで終わり?
そうしてグレイスがいなくなってから5分もしないうちに……。
『戻りました!!』
『チーちゃんなんだな!?』
『おにいちゃなの? ……くるしいなの』
『リア! ケロケロ、お願いします!!』
急いて結界の中へ入ってくるグレイス。そして私に、ある生き物を渡してきたよ。私はその子をギュッと抱きしめる。大丈夫だよ、すぐに苦しいのなくしてあげるからね!
『よし、リア。魔力を引き出すぞ。…‥どうだ?』
「だじょぶ!! やりゅ!! ていむ!!」
私はその生き物に向かって、魔獣契約をしたよ。ワイバーンと同じ重ね掛けの契約をね。
すぐに私とその魔獣を白い光が包む。重ね掛けだからか、ワイバーンの時みたいに相手魔獣の気配を、気持ちを感じ取ることができない。だけど大丈夫。さっきもケロケロたちが言ったように、ちゃんとワイバーンと契約できたんだから。この魔獣とも契約できる。
私は何も気にせず、魔獣のことだけを考えたよ。そして……。
『よし、リア契約は終わりだ』
ケロケロの声に目を開けると、白い光は消えていて。苦しそうにハァハァと息をしていた魔獣は、もう苦しそうにしておらず。周りをキョロキョロ見たあとワイバーンを見て、急いでワイバーンの方へ飛んで行って、ワイバーンに抱きついたんだ。
『おにいちゃなの!! しんぱいしてたなの!!』
『チーちゃん、もう苦しくないなんだな!?』
『あれ? くるしくないなの? うん、くるしくないなの!!』
『良かったなんだな! ケロケロとグレイスとリアが助けてくれたんだな。それからポルが応援してくれたなんだな。もうあいつらの所にいなくて良いなんだな!!』
『けりょけりょ、ぐれいしゅ、りあ、ぽりゅなの?』
私たちの方を見てくる、ワイバーンの次に契約した魔獣。良かった、本当にもう大丈夫そう。
私はワイバーンたちの方へ行こうとする。だけどケロケロとグレイスに止められたよ。それからベルナードさんとランドルフさんにも。
『面倒なのでさっさと片付けますから、2人ともリアとポルの方へ』
『あのバカも、少しだが復活してしまったようだからな。あれがいるとゆっくり話しもできん』
ケロケロとグレイスの言葉に、私は前を見ると。ドミニクがサンデリオを連れて、上に戻ってきてたんだ。しかも顔色も良くなっていたし、少しだけだけど会話もできるように、なっちゃってたんだ。
まぁ、少しだけって言っても、かなり煩いけどね。よくもまぁ、あれだけ煩くできるよ。
『うるさいなぁ、くちゃらちゃあ』
『くちゃらちゃあなの?』
『うん、くちゃらちゃあ。これはねぇ……』
ワイバーンたちが私たちの方まで来て、ポル君の言葉を聞いた2番目に契約した魔獣が、ポル君に『くちゃらちゃあ』について質問をすると、ポル君がそれについて説明し始めた。あの煩いサンデリオを無視して。うん、2人とも、あれは無視して2人でお話しして。
「お前たち、何をしたのだ!!」
『別に大したことはしていない。お前を嫌うものを助けただけだ』
『それよりも、そろそろ帰っていただけませんかね、その煩い口を閉じて。私もいい加減、あなたのようなバカを相手にするのも疲れたので』
「ば、バカだと!? きさま!! この私に向かってバカだと!? 私はグリザイドの辺境伯サンデリオだぞ!!」
『いや、ただにバカだろう』
『そうです、ただのバカです。というかバカにも失礼かと』
2人とも、せめて話しをするときだけは、名前を呼んであげないと……。
「き、貴様ら!! おい!! 何をボケっとしておる!! 早く攻撃しないか!! 人質はあのバカな兄のベルナードだけで十分だ!! 他は殺してしまえ!!」
「サンデリオ様! お待ちください! どうにも様子がおかしいです。あの結界も、あの者たちも。ワイバーンが向こうへ行ったことも、あまりにもおかしなことが多い。ここは1度下がり状況の確認を……
「煩い!! 攻撃するのだ!!」
おお、参謀ドミニク。たまにはまともなことを言うな、と思っていたけど。そのドミニクの言葉を遮り、サンデリオは止まらずに、ワイバーン部隊に攻撃を命じる。それに従うしかないワイバーン部隊の面々。
なんとも言えない雰囲気のまま、ワイバーン部隊は一斉に攻撃をしてきた。ワイバーンのブレス攻撃だ。弱~いブレス攻撃ね。
だからケロケロとグレイスの結界にぶつかったところで、少しも傷をつけることもできずに、ペシッと止められたよ。
そうして止められたブレスはびよ~んと跳ね返り、ワイバーン部隊とサンデリオの方へと飛んで行って。
「な、何だと!? ぐあぁぁぁ!?」
ワイバーン部隊の準備した盾に当たり、かなりの被害が出た。というかあれで、半分以上のワイバーン部隊の人もワイバーンも、下へ落ちて行ったんだけど。自分たちの弱いブレスだよ?
『ぺしっ、びよよよ~ん』
『ぺしっ、びよよよ~んなの?』
『うん。あのねぇ、あのわいばーんたちはとってもよわくてね……』
また説明してあげるポル君。
「ぐ、わ、私の、私の物が……」
あっ、サンデリオは落ちてなかった。煙が消えて向こうが見えると、サンデリオとドミニクは残っていて、まだ飛んでたよ。ただ、サンデリオはさっきのワイバーンの落下攻撃の時よりも、ぐったり意識朦朧って感じだったけど。
「おのれ、私の、私の……」
「さ、サンデリオ様!! おのれよくも!!」
よくもと言われても、やったのは自分だろうに。しかもあれだけ弱い攻撃で、そんなになるなんて。
「おい!! サンデリオ様をお連れしろ!! ここは一旦引くぞ。サンデリオ様の回復が先だ!!」
「はっ!!」
「お前たち覚えておけ。サンデリオ様が回復され、いつものサンデリオ様に戻られたら、必ずお前たちを殺すだろう。それまで震えて過ごすがいい」
ドミニクはそう言うと、サンデリオを他のワイバーン部隊の人に渡し、自分も他のワイバーン部隊の人たちと一緒に、飛んで行っちゃったんだ。
え? これで終わり? ケロケロもグレイスも何もしてないよ? ほらケロケロたちもあれ? って顔してるし。
『何か他の攻撃をするために戻ったのでしょうか?』
『おそらくそうだろう。これで終わるとは思えんからな』
本当にそうかな? 私はベルナードさんたちの方を見る。ほら、2人ともなんとも言えない顔をしてるよ?




