56話 バシッ!! ビシッ!! ヒュン!! それからピュ~ン!!
“行くなんだなぁ!!”
ワイバーンが心の中でそう叫び、上へと飛んだ。それに驚き声をあげるサンデリオと、参謀のドミニク・ラヴァント。
「な、何んだ!? おい、勝手に動くでない!?」
「サンデリオ様!? おい、行け!! お前とお前も来い!!」
ドミニクが近くにいた、せっかく綺麗に並んでいたワイバーン部部隊の2組に声をかけ、サンデリオを追う。でもワイバーンは止まることなく上へ飛んで行き、サンデリオの叫び声がどんどん遠くなっていったよ。
というか、どこまで行くつもりなの!? ワイバーンに最初にやってもらうこと。それはケロケロが手を挙げたら、サンデリオを攻撃して、自分の体からサンデリオを落として貰うことだったの。
だって、こっちへ来てもらうのに、サンデリオまで連れてこられちゃ迷惑だもん。いくら倒す敵であっても、ほら、私たちは別にこの街で暮らしている住民じゃないし。ベルナードさんたちもその辺は、いろいろ考えているだろうし。
何かあれば、サンデリオに攻撃はするけど、死ぬまではやらないって、ケロケロたちは言ってたんだ。
だからサンデリオをこっちに連れてこないように、ケロケロに降ろすように言ったの。
まぁ、そのまま連れてきて、サンデリオがしようとしているように。逆にサンデリオを捕まえて、そのまま捕虜にし、交渉しても良いかもなって、ベルナードさんは言っていたけど。
なるべく自ら引かせるようにして、さっさと街から出ていって欲しいみたい。あれでも向こうの国では、一応は必要とされている人間だから、今よりも問題が大きくなって、大きな戦いになるのを避けたいって。
なのにワイバーンは、すぐにサンデリオを自分の背中から落とさずに、かなり上まで飛んで行っちゃったんだよ。
あ~あ~、あんな上まで行っちゃって。サンデリオの顔が見えないくらいまで、飛んで行ったワイバーン。
『どこまで、いくのかなぁ?』
「ね、うえしゅぎる」
『奴は何をしているんだ』
『リア、心の声で話しかけて、もしも答えが返ってくるようなら、早く降りて来なさい、と言ってください』
「わかっちゃ!」
ねぇ、私の声が聞こえる!? どうしてそんな高く飛んで行ったの!? ケロケロとグレイスが早く降りて来いって言ってるよ!? グレイスは怒るととっても怖いから、早く降りて来た方が良いよ!!
“今から降りるんだな!! 変な帽子、高いところから降りるの、とっても嫌いなんだな。いつもいやなことされたし、させられたから、オレもやるなんだな!! それ~なんだなぁ!!”
心の声と共に、今度はどんどん下へ降りてくるワイバーンと、
『ギャアァァァッ!?』
と近づいてくる、サンデリオの叫び声。そして慌てて戻ってくるドミニクたち。
「さ、サンデリオ様!!」
ワイバーンの飛ぶスピードが、かなり速いんだ。海で襲って来たワイバーンたちよりも速いの。
だから追いかけていったドミニクたちの間を、ビュッ!! と通り過ぎてちゃって。ドミニクたちは置いて行かれて、慌てて戻って来てるところだよ。
でも、差はどんどん広がって、数秒後には元の位置まで戻って来たワイバーン。この時にはサンデリオの叫び声は消えていて、うえっ、だから、おえっだか。それからうめき声が少しだけ聞こえてきたよ。それに顔色がとっても悪かった。
「お、お前、……帰ったらどうなるか分かっているな。お前もアレも、最大の苦しみを。いや、まず先にお前たちに罰として……。な、なんだ? なぜ私の力が発動せぬのだ!?」
『もう、何もできないんだな!! もう邪魔はさせないんだな!! 約束したんだな!! それぇ!!』
「な、なぜだ!! 私のいう事をき……」
“バシッ!! ビシッ!! なんだなぁ!!”
まずワイバーンは、背中からサンデリオをしっぽで叩き落とし、そのあとさらに翼ではたき落としたよ。グエッという声だけ残し、地面へ落ちていくサンデリオ。なるほどこれが、さっき話してたビシッ! バシッ! か。
あっ、でも。
「サンデリオ様!?」
ようやく追いついたドミニクが、地面ギリギリでサンデリオを拾い上げたよ。うん、残念。
“ヒュン!!”
声が聞こえてワイバーンの方を見ると、他のワイバーンがワイバーンを攻撃しようとして、それをヒュン!! とワイバーンが避ける。おお、これがあのヒュン! ね。
“最後はピュ~ン!!”
最後は声をしっかり出していたワイバーン。その言葉とともに、ワイバーンは私たちの方へ飛んできて。それに合わせるように、ケロケロとグレイスが少しだけ結界を開き、そこからワイバーンが中へ入って来て、ビシィィィッと綺麗に着地したんだ。
うんうん。これでさっき聞いていた、
“大丈夫なんだな!! リアがオレと契約する、それでケロケロが手をあげたら、バシッ!! ビシッ!! ヒュン!! で。それからピュ~ン!! なんだな!!”
の音は全部回収したね。
『よし、お前が上へ飛んだこと以外は予定通りだ』
『その話しは、後ほどしっかりとしますからね。ですが今は次です』
『少々苦しい思いをさせてしまうかもしれないが、助けるためだ。良いな』
『うん、なんだな!』
『では、行ってきますね』
「ぐれいしゅ、きをちゅけて! がんばっちぇ!!」
『がんばれ、ぐれいしゅ、いけいけ、ぐれいしゅ!! くちゃらちゃあ!!』
『くちゃらちゃ? なんなんだな?』
「あとでおちえりゅ。いまはしゃき、たしゅけりゅ!」
『リア、お話しちがうなんだな』
「しょれもあちょで!!」
『ケロケロ、ポルとリアをお願いします』
『ああ』
そう言うと結界から出たグレイス。次の瞬間にはもう、グレイスの姿は見えなくなっていたよ。




