46話 自然界と人間に育てられたワイバーンの違いとくちゃらちゃ
「ありぇが、わいばーん?」
『ああ、そうだ』
『あの真ん中で飛んでいるワイバーンが、1番この中では強いでしょうか? あちらのバカが乗っているのか。他の人間が乗っているのか。人間たちの中で、あのワイバーンに乗っている人間が、1番魔力を持っていますね』
『それでも、ちょっと強い冒険者くらいだが』
『そうですね。後はその辺の人間より、少し強いくらいでしょうか』
へぇ、そのくらいなのか。と言われてもこの世界の、人の強さの平均が分からないから、なんとも言えないんだけど。それよりもだよ、私が気になってるのはワイバーンの方。ワイバーンって、あんなに小さくて攻撃も弱かったっけ?
海にいる時に、時々襲ってくるワイバーンは、もっと大きくて攻撃も強くて。それだけじゃなく、もっとこうしっかり? 攻撃してきたよね? 私はすぐに、ケロケロとグレイスに聞いてみた。
今は午前10時頃。街の壁の近くで、敵と戦闘が繰り広げられている。ベルナードさんの言った通り、戦闘は朝方に始まったけど、今のところこちらに何も被害は出ていないらしい。
それからワイバーン部隊だけ来たのかと思っていたら、普通に騎士たちがも来ていたみたいで。そのことについては、私が寝ているうちに、ケロケロたちとベルナードさんたちが話していたよ。
ただ、こっちの地上部隊との戦闘でも、これといって被害は出ておらず、今のところ問題はないって。
港の方も攻撃を受けそうな場所は、きちんと対策をしているから問題なし。問題なしだらけで、街の中も問題なし。初めての戦闘ってことでドキドキしていたけど、拍子抜けって感じ。まぁ、何もないのは良い事だよね。
ただ気になるのが、あのワイバーンたちだ。
『ああ、ちゃんと気づきましたね』
『何羽かは、捕らえてきた者もいるんだろうがな』
「なんわ?」
『ええ。あのワイバーンはおそらく、人間の元で生まれ、育てられた者たちです。魔力量も戦闘能力も、自然界で生きている者と人間の元で生きている者とでは、かなり変わってくるのです』
簡単な話しだった。自然界で揉まれて生きてきた、自然界のワイバーンは、生き残るためになんでもしなくちゃいけなくて。そのおかげで体が大きくなり、戦闘能力も必然と上がってくる。
でも人に育てられたワイバーンは、もちろんワイバーンなんだから強いは強いけど。それでも危険なことはほぼなく、与えられたこと、教えられた事ををこなすだけで、生きることができてしまうため、自然界のワイバーンのように、大きく強くなれないんだって。
ただ個体によっては、小さくてもとても強いワイバーンがいるから、それは気をつけなくちゃダメなんだ。
それと、ワイバーンを育てるのは大変みたい。だからあれだけ育てたワイバーンがいることには、ケロケロたちも少しだけ驚いていたよ。うん、本当に少しだけね。
『あれだけ弱いと、ポルの訓練にはなりませんね』
『リアでも十分倒せると思うぞ』
え? そんなに?
『もぐもぐ、もぐもぐ、ぽるくん、こうげきしない?』
私たちの話し聞いて、ベルナードさんからもらったクッキーを食べながら、ポル君がこっちに歩いてきた。
深夜、なんとも言えない寝言を言っていたポル君。ポル君が起きた時、きっと覚えていないだろうなと思いながら、一体どんな夢を見てたのって聞いたら、ポル君はちゃんと、夢の事を覚えていて。クッキーの国に行った夢を見ていたんだって。
道も家も家具も、何もかもがクッキーでできている国で、住人もクッキーの姿をしていてね。それで私たちはある家に泊めてもらって、その家を満足いくまで、食べさせてもらったんだって。しかも食べた物はすぐに復活して、おかわり自由。
そして家クッキーを楽しんだ後は、みんなでクッキーパーティーをして。最後はたくさんのクッキーを貰って帰ってきた、ってところで起きたみたい。
起きてすぐに見たのが、ワイバーンとの戦闘で、すっごく嫌な顔をしていたよ。せっかくクッキーの楽しい夢見たのにって。
『こちらにきたら、ポルに戦わせる予定だったが、あの様子ではな』
『人の方も、リアに見せるつもりでしたが、そっちもなくなりそうです』
『見せに行っても良いが、あの男に止められるだろうからな。わざわざ行くなと』
『なんとかない力と頭を使い、こちらに来てくれませんかね』
凄い言われようだし、来てくれって思うのもどうなのよ。まったく緊張感がない。
その後も何も問題なく、私たちは普通にお昼ご飯を食べて、普通にチラッとお店通りに行ってみて、普通におやつを食べてって、普通に過ごすことに。
だけど事態が動いたのは、次の日のお昼過ぎだった。ケロケロとグレイスが急にワイバーンたちの方を見て、
『バカな事を』
『これだから人間は。それをやって、本当に勝てると思っているんですから』
って言ったんだ。何? と思って窓に近づき、ケロケロたちに聞こうとした私。でもその前に街を囲む壁で、大きな爆発が起きて。びっくりしていたところに、ベルナードさんが来たよ。
「少し面倒なことになった。まぁ、倒せるから問題ないが、一応気を付けておいてくれ」
『奴ら、薬を使ったな』
「気づいたか」
『あれは独特の匂いがしますからね。私たち魔獣はすぐに気づきますよ』
『くちゃらちゃあ』
くちゃらちゃ?
『くちゃいくちゃい、つかった。めいわく』
「くちゃいくちゃい? なに?」
『ああ、リアにはまだ教えていなかったな』
『今の爆発、ワイバーンの攻撃は見ましたか?』
ワイバーンの攻撃? 見たよ? いつもの攻撃と同じ、青白いブレスを吐いてた。
『何か先ほどまで違ったところは?』
う~ん……。そういえば、さっきまでの細いブレス攻撃より、ブレスの幅が広がって、力強さも出たような?
「まえより、ちょとちゅよくなっちゃ?」
『正解です。人間が役に立たないのに、迷惑にしかならない薬を使いました』




