36話 まさかの正体と嘘発見器?
馬車に乗ってすぐに私たちのことを、馬車に乗っていた人に紹介したベルナードさん。その人はベルナードさんそっくりな人で、ベルナードさんを少し若くした感じ。それからとてもカッコいい、普通の洋服? を着ていたんだ。
普通の洋服? ってなったのは。船に乗っていた人たちの中に、同じような服を着ていた人たちがいたんだけど。
同じような服なのに、その人たちの服に比べて馬車に乗っていた人の洋服は、生地が良いっていうか、ピシッとしているような。なんか違う感じの、普通の洋服? って感じがしたから。
そんなことを考えているうちに、私たちの紹介を終えたベルナードさんは、続けて馬車に乗っていた人を紹介してくれて。
それがヴァリオス・アーセリオ様で、この街を治めている辺境伯様だったんだ。しかも驚いたのが、ベルナードさんとどういう関係なのかと思ったら、まさかの兄弟。ヴァリオス・アーセリオ様のお兄様が、ベルナードさんだったの。
他の冒険者の人達よりも、服装とか髪型とか、しっかりピシッとしているなと思ったけど、貴族だったからかな? まさかの貴族だったなんてね。
ただ、ベルナードさんは、紹介を終えるとすぐに、
「俺は家を出た人間だから、もう貴族じゃない。だから、そのへんのことは関係ない……」
って話していたんだけど。
「関係ありません。私たちは家族です」
って、その話しに食い気味に、ヴァリオス・アーセリオ様が返したんだ。それにベルナードさんは、なんとも言えない表情をして、それから困ったような顔で少しだけ笑ったの。それだけなのに、その表情がまた渋くて、なんかカッコよくて、さすがイケおじって思ったよね。
まぁ、ただ。貴族だ貴族じゃないって、その辺はね。私は貴族のことはよく分からないけど、きっといろいろあるんだろう。詳しく話しを聞くなんて、そんなことはしなかったよ。ベルナードさん達もそれ以上何も言わなかったし。
と、こんな風に、まさかの方にお会いして。まさかヴァリオス・アーセリオ様のお屋敷につ連れて来られるとは思っていなかった。
そして連れてこられたのはヴァリオス・アーセリオ様のお屋敷の凄さに、私もポル君も、
『はやぁ~』
「はやぁ~」
って言ってたんだ。この世界へ来て初めて深く関わる人間が、まさか貴族だなんて……。
でも、これも全部、ベルナードさんが私たちを心配してくれて、後見人のことを考えてくれたから。貴族だとか、お屋敷だとか、そういうのにビックリしてないで、しっかりと話しをしないとね。
ベルナードさんのおかげで、もしかしたらヴァリオス・アーセリオ様が、私たちの後見人になってくれるかもしれないの。
馬車の中でヴァリオス・アーセリオ様は、ベルナードさんが私たちにしたのと同じ質問をし、内容を確認。その後は、お屋敷に着いてから何をするかを教えてくれたよ。
これから、私たちの話しが本当かどうか、もう1度きちんと確認するみたい、なんかね、その人が嘘をついているかどうか分かる道具があって。それで今まで話したことの、正確さを調べるんだって。
それで問題がなければ、他の確認作業? をして。それも問題なければ、ヴァリオス・アーセリオ様が、私たちの後見人になりましょう、とおっしゃってくださったの。だからこれから大事な時間なんだよ。
道具、どんなかなぁ。嘘発見器みたいな感じ? 別に嘘はついてないから大丈夫だけど、やっぱりドキドキするよ。
『そういえば、あいつの家には面白いものがあったな』
「おもちろい?」
ケロケロとグレイスが、泊めてもらった魔獣さんの家の話しを続ける。
『ええ。庭に大きな穴を開け、そこにお湯を入れて、その中に入るんです。ポルが楽しんでいましたよ。私たちもまぁまぁ楽しめました』
『あれは、酒が良かったな』
大きな穴にお湯? お酒?
「それは……なぁ、そのいろいろ教えてくれたという魔獣は、何という……」
ベルナードさんが何か聞こうとした時、トントンとドアがノックされた。
『失礼いたします。当主様がお越しです』
執事のアルセインさんの声が聞こえ、ランドルフさんが扉の方へ行き、静かに扉を開け一礼すると、ヴァリオス・アーセリオ様が部屋へ入ってきたよ。
私は慌てて立ち上がろうとする。だって私は一般市民。偉い人が入ってきたら、立たないといけないでしょ?
でも、慌てたのは私だけで、ケロケロとグレイスは、何してるんだ? という顔で、私を見てきた。まぁ、魔獣と人間じゃ、生活習慣が違うもんね。
「ああ、そのまま、立たなくて大丈夫ですよ」
そうヴァリオス・アーセリオ様が言ってくれたおかげで、ソファからずれ落ちかけていた私を、ケロケロが引きずり上げてくれた。
『何で立とうとしたんだ?』
「ごあいしゃちゅ」
『さっきしただろう』
いや、確かにそうなんだけど……。
「兄上、遅くなりました。あれの準備に手間取って」
「いや、俺も今きたところだ。あったのか?」
「はい。最近は使うことが多いですからね。ですがちょうど1つ残っていました」
そうヴァリオス・アーセリオ様は言うと、アルセインさんに向かって手を挙げて。アルセインさんがこちらへ歩いてくると、テーブルに何かを置いた。
それは、私の顔の半分くらいの大きさの、水晶みたいに透明で綺麗な石で、その石に合わせて土台がついているものだったよ。もしかしたら、石は土台の上に置かれているだけかもしれないけど。
『これは?』
「これが、お前たちの話しが本当かどうかを確かめる道具だ。この石に手を置いて、俺たちの質問に答える。そうすると、嘘をついていなければ青く、嘘をついていた場合は赤く、この石が光るんだ」
『なるほど。これで分かるのか』
思っていたよりも、シンプルな道具だった。もっとこう、地球の機械みたいな物を想像してたよ。
「よし、それじゃあ早速始めるぞ。まずはちゃんと、この道具が反応するかだ」
ベルナードさんがそう言って、ミストクラブを指さした。




