34話 ドキドキの待ち時間と、ポル君作曲、『お腹すいた』
「おはなち、できちゃかなぁ」
『おはなし、いつもみんなながい。けりょけりょも、ぐれいしゅもながい。あのねぇ、おはかすいたぁ』
『さっきどれだけクッキーを食べたと思っているんですか。これ以上食べると太って素早く動けなくなりますよ』
『でもぉ、ずっとまってる。だからおなかすく』
『俺たちの話しをしに行ってくれているんだ。今は静かに待っていろ』
『おなかぁ、すいたぁ♪』
『『『パチンッ、パチパチッ♪』』』
ポル君が、ポル君作曲、『お腹すいた』を歌うと、それに合わせてミストクラブっていう、私の手のひらサイズの、カニに似ている魔獣たちが、ハサミをパチンパチンと鳴らす。
『おなかぁ、すいたぁ♪』
『『『パチンッ、パチパチッ♪』』』
私たちの話し合いにさっさと飽きて、ミストクラブたちと遊んでいたポル君。今ベルナードさんは、ベルナードさんの関係者さんに、私たちの話しをしに行ってくれているんだけど。いつの間にか、話し合いの間にお友達になっていて、海に帰る時は一緒に帰るんだって。
ミストクラブは全部で10匹。砂浜だろうが海の中だろうが、どこでも暮らせるからね。今から楽しみって言ってるみたい。
ケロケロが、私が海にいる時、甲羅の周りに土魔法で縁を作ってくれたでしょう? あんな感じで砂浜っぽい場所を作ってくれるって。だから普段はそこで暮らして、時々海の中で暮らす。
私たちが街に来る時は、今、海の中、結界の中で待ってくれている魔獣や妖精のルルちゃんたちがいるでしょう? そのみんなと一緒にまっtrくれているって。
街に来る時……。ベルナードさん、どうしたかな? 話し相手が誰だか分からないけど、お話しできたかな?
どうするか聞かれて、少しの間話し合っていたケロケロとグレイス。そうして2人が出した答えは……。私を信じる、そしてベルナードさんの話を信じる、だったよ。
私はベルナードさんのことを信じて、私たちのことを話したり、これからのことを相談したりしたでしょう? 私が信じている人間だから、ケロケロたちもベルナードさんを信じるって言ってくれたの。
だから今、ベルナードさんは私たちのことを、ベルナードさんの関係者に、相談しに行ってくれている最中なんだ。
ベルナードさんが話しに行ってから、どれくらい時間が過ぎたのか。やっぱりドキドキしちゃって、そんなに時間は経っていないかもしれないけど、すごく長い時間、待っているように感じちゃうよ。
ちなみにランドルフさんは、私たちに何かあるといけないって事で、一緒の残ってくれている。ほら、さっきのクラーケンじゃないけど、面倒な人間に絡まれるかもしれないから。後は警備隊の騎士とか、冒険者とかね。
でもそのせいで、時々ポル君にの質問攻めにあっている。街には何があるのか、可愛いぬいぐるみはあるか、さっきみたいな美味しいお菓子はあるか。ミストクラブみたいに仲良くなれる魔獣はいるか、とかね。
でもランドルフさんは、ぜんぜん嫌がらずに、丁寧にポル君の質問に答えてくれているんだ。それに、うちの人間もポルのように、しっかり話しを聞いてくれれば良いのにって、さっきボソッと言っていたよ。うちの人間……、誰だろうね?
『おなかぁ、すいたぁ♪』
『『『パチンッ、パチパチッ♪』』』
『おなか、ぺったん♪』
『『『パチンッ、パチパチッ♪』』』
『はぁ、分かった分かった。グレイス、持ってきていたクッキーを、1枚ずつ出してやれ』
『仕方ないですね。1枚だけですよ。これ以上はダメです。夕飯が食べられなくなるかもしれません。街に入れることになっても、そのまま帰ることになっても、夕飯は食べるんですからね』
『わーい!』
『『『パチパチパチーンッ!』』』
そうしてポル君たちの歌に負けたグレイスが、1枚ずつ出してくれたクッキーは、ほぼ一瞬でなくなったよ。ポル君はまだ分かるけど、カニってこんな早く食べられるの? いやカニに似ている魔獣だけどさ。
私のは……。みんなにあげたよ。だってベルナードさんの話しがどうなったのか、気になって、食べる気にならなかったから。
それにしても、ベルナードさんの関係者さんって、どんな人なのかな? 後見人って日本だと地位とか関係なくて、信用ができる人? って感じがするんだけど。
じゃあ、このライトノベルみたいに世界では? 私の読んだライトノベルだと、貴族とか騎士とか、後は街の有力者? って感じだった。貴族がいるんだよね? 話の途中でちょこちょこ出てきたし。ただ、貴族は地球にもいるし、どこまでライトノベルとそっくりなのか。
と、そんなことを考えている時だった。ケロケロとグレイスが同時に同じ方を見て、それからポル君に私のカバンに入るように言ったよ。
それから、一緒に帰るって言っていたミストクラブたちは。グレイスが風魔法でササッと包んで、そのままグレイスの顔あたりまで浮かべた。一緒に逃げる時は、風でビュンと投げ飛ばすから大丈夫だって。
飛ばすのは良いんだけど、グレイスが投げ飛ばすんだよね? ……どこまで飛んで行くのか。飛ばして、どこかに行っちゃう、なんてことないよね? そんなことしたらポル君は大泣きだし、ミストクラブだって困るよ?
「けりょけりょ、ぐれいしゅ。どちたの?」
『向こうから、そこそこの人数の者たちがやってくる。…‥10人か』
『あの者もいます』
「べりゅなーどしゃん?」
『ああ』
「ベルナード様が、関係者とおっしゃっていた方と共に、こちらへ向かって来ているのかと」
『話しはできたと言うことか』
「おそらくは」
『それか、私たちをどうにかしようと、誰かを連れてきたか』
「ぐれいしゅ、しんじりゅ」
『ええ、それはもちろん。ですがあの者が味方でも、相手がそうとは限りません。様々な状況を想定しなければ。リアとポルを守るためです』
『そうだ。リアはしっかりとグレイスにつかまっていろ。急に動くかもしれないからな』
グレイスが私を抱き上げて、私はグレイスの洋服をしっかり握ったよ。
そうして数分もすると、ケロケロたちが気づいていたものが、私にも見えてきて。それは、初めて見る馬車だったよ。遠くからだから、まだはっきりとは分からないけれど、飾りはついていないみたい? テレビで見た、海外の豪華な馬車とは違う感じ?
それから、馬に乗った人たちが7人。いや、きっと馬じゃなくて、馬に似た魔獣かな?
「間違いありません」
『知っている者は?』
「全員、存じております。あの馬車に、ベルナード様と関係者の方々が乗っておられるはずです」
知ってるって、この距離で顔が見えたの? 私はまだ、輪郭くらいしか分からないんだけど。さすが遠くを見ることができる魔法だね。私も使えないかなぁ。
どんどん近づいてくる馬車と、魔獣に乗った人たち。そして、さらに数分後……。
ランドルフさんは、私たちにその場から動かないように言うと、前へ出て行って手を挙げた。するとすぐに、馬車と魔獣に乗った人たちはその場に止まって。やっぱり馬車は、何も飾りのない、シンプルな馬車だったよ。
それからランドルフさんは1人の、魔獣に乗っている人と何かを話すと、そのまま馬車の方へ。
そしてまた、馬車に向かって何か言ったあと、すぐに馬車のドアを静かに開いて。そうしたら、ランドルフさんが言っていた通り、馬車からベルナードさんが降りてきたんだ。




