26話 注意と陸での初めての魔獣討伐(前半ベルナード視点、後半リア視点)
それは俺が、リアという子供について、家族証明書以外のことで、保護者の魔獣たちに注意している時だった。ああ、本当の名はまだ聞いていなかったから、とりあえずはウルシェイドとアスレイドと呼ぶことにしたぞ。
そのウルシェイドたちだが、1度でも長く街で暮らした経験があれば。あるいはリアの他に、人間の大人と共に生活したことがあれば、分かっているかもしれないが。
だが今までの話を聞く限り、ウルシェイドもアスレイドも、長く街で過ごしたことはないだろうし。
リアもまだ2歳の幼児で、しかも親に捨てられたとなれば、きちんとした生活を送っていたとは考えにくい。
そうなると《《あの時》》にどうすれば良いのか分からずに。ウルシェイドとアスレイドの対処が遅れる場合や、そもそも対応できない場合もある。
そのため俺は、まず注意をしてから提案をすることにした。何についての注意かと言えば、リアが病気になった時どうするのか、ということだ。
もしリアが病気になったら? 軽い体調不良で済み、すぐに元気になるのなら良い。だが治癒魔法が必要な場合、近くにそれを使える者がいなければどうする? 中には、薬でなければ治らない病もある。
それに怪我も同じだ。かすり傷ですぐに治れば良いが重症の場合は? もしかしたらかすり傷でも、それから大変な事になるかもしれない。
リアたちが住んでいるのは、どう考えても自然界だ。そんな場所に、すぐ治療してくれる者がいるとは思えなかった。だからこそ俺は、このことを2人に伝え、注意させなければと思ったんだ。
だが、話を聞くと。どうやらウルシェイドは、基本的な治癒魔法のヒールを使えるらしく、少しは安心した。とはいえ、重病や酷い怪我となれば、それだけでは足りない。先ほども言った通り、薬でしか治らない病気もある。
そうなれば、大きな街や中規模の街にある治療院に頼るしかない。そういった施設がある場所なら、すぐに治療を受けられるからな。
そのことを含め、自然で生きていくのは良いのだが、すぐに街へ駆けつけられるよう。なるべくなら街の近くで暮らした方が良いと提案した。
するとウルシェイドとアスレイドは、今住んでいる場所は一応決まっている場所で、もしもそこから動く場合は、周りの者たちもついてくると。そうなるとかなりの人数のため、新たなな場所を探すのが大変だと言ってきた。仲間の魔獣がついてくると。
一体どんな魔獣がついてくるのか。ここはやはり、できるならば魔獣の種類を聞いておきたいところだが。
「なるべくなら、街にすぐに来れる場所の方が良い。そうだな、向こうの山なんてどうだ? なかなか大きな山だから、仲間も来られると思うが。それにお前たちなら、あの山ならばすぐに駆けつけられるだろう?」
『いや、俺たちは海で暮らしているんだ』
「ああ、そうか、お前は海か。なら、そのままこの街近くで住むのはどうだ?」
『ここは人が多すぎる』
『私たちの仲間には、人が苦手な者もいるので』
「そうか……」
『だが、そうだな。そういう事も考えなくてはいけないのか』
『なるべく考えてみましょう』
「そうか!!」
思っていたよりも、すんなり話を受け入れてくれて良かった。なにしろ、俺も初めての経験だからな。魔獣が人の子を家族として、一緒に暮らしているなんて。
この家族が、できるだけ幸せに暮らせるように。俺にできることがあれば、できる限り力になれればと思う。
「それじゃあ、その事、考えてみてくれ」
『分かった』
「それとだ、他にも注意というか、聞きたいことがあったんだが……」
と、次の話しをしようとした時だった。
少し前、向こうで待たせていたランドルフのもとに。先ほどまで俺たちが乗っていた船から、冒険者が小舟に乗ってやってきて。ランドルフに何か書類を手渡すと、そのまま戻っていき。ランドルフは受け取った書類に、目を通していたのだが。
そのランドルフが、大きな声を上げた。
「危ない!!」
その声に全員が振り向く。と、リアとポルピネラの、確かポルと言ったか? 2人の前に、Bランク魔獣のスプラッシュスライムがいて。今にも2人を襲おうとしていたのだ。
俺は慌てて剣を取り、リアたちの元へ行こうとする。ランドルフも魔法を放とうとしていた。が、しかし、次の瞬間……。
「は?」
俺は信じられない光景を見て、思わずその場に止まってしまった。そして俺の後ろでは、ウルシェイドとアスレイドが。
『ん? ああ、いつもよりも弱いな』
『今の避けは良かったですね。切る方はいつも通り……いえ、いつもよりも少々動きが遅いでしょうか』
『まぁ、いつもと違う初めての場所だ。少しくらい動きが遅くてもしょうがないだろう』
『どんな時でもしっかり行動できるように、これからも訓練しなければ』
そういう会話が聞こえてきて……。
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「ぽりゅくん、こりぇかわい!」
『かわいいの、もってかえる。かっこいいのも、おもしろいのも!』
「うん! いっぱい、もっちぇかえりょ!」
私とポリ君は貝殻を探して、フラフラ砂浜を移動していた。
最初の頃は気になって、時々ケロケロの方を見たけど、話しが聞これるわけもなく。でも、これからの事を考えてくれるって言ったベルナードさんを信じて、途中からはケロケロたちを見なくなっていたよ。
ランドルフさんも、最初は私たちを見ていたけれど。途中で、さっき乗った船にいた冒険者さんが小舟でやってきて。その冒険者さんがランドルフさんに、何か書類のようなものを渡し戻っていくと。ランドルフさんは、その書類を見始めたよ。
そんな時だった。ケロケロの背中でしか見たことのなかったスプラッシュスライムが、海から上がって。私たちの方へ近づいてきたんだ。
「ぽりゅくん、きちゃ!」
『ぷるんぷるん、ふやす!』
新しい枕を作って欲しいみたいで、ポル君は今、スライムを集めているんだよ。ここは逃せない。
「ぽりゅくん、じゅび!」
『こうげき、きをつける!』
私は棒を手に取って、いつでも攻撃できるように構える。だけど攻撃する前に、スプラッシュスライムが私たちを攻撃してきた。
「ふんっ!!」
「危ない!!」
『ちょおぉぉぉ!!』
いつもみたいに、しっかりと攻撃を避けたよ。でも……、今、私たちの声の他に、誰かの声が聞こえたような? と、今は他は気にしちゃダメ。すぐに攻撃だ!
「ぽりゅくん、いく!!」
『いくぞー!!』
「ちょおぉぉぉっ!!」
『にょおぉぉぉ!!』
う~ん、ちょっといつもよりも、振りが遅かった? スプラッシュスライムは私たちの連携攻撃で、綺麗に切ることができたんだけど。なんかちょっと、って感じだった。
とりあえず、今は叩けるものがなかったから、今回はポル君が核を壊したよ。
『なんかおそかった、つぎはがんばる』
「うん、おしょかったね、がんばりょ」
ポル君も同じことを思っていたみたい。ただ、そう2人で話していたら。
「おかしいだろう!」
ってベルナードさんの声が。と、それとほぼ同時に海の沖の方で、大きな波飛沫が立ったんだ。




