25話 大切な家族証明書をどうするか……
この世界には、家族証明書というものがあるらしい。教会と呼ばれている場所に行って、家族の登録をするって。
それは住民人数を確認したり、どんな人々が街に住んでいるか把握したり、いろいろなことで活用されるんだけど。家族としての証明にも使われて。
この世界何があるか分からないからね。例えば盗賊、海賊、人攫いに攫われたり。魔獣に襲われたり。そこで救出された時にも、家族証明書が使われるんだ。だから家族証明書は、誰もが絶対に持っていないといけないんだって。
その話しを聞いたケロケロたち。そういえば、あいつがそんなことも言っていたなって。あいつっていうのは、ケロケロたちにいろいろ教えてくれた魔獣ね。
でも今までケロケロたちは3人、魔獣だけで自然で生きていたから、気にしていなかったって。
「そうだろうな。だが、今度からはこの子と一緒に暮らすんだろう? それなら、証明書はきちんと取得しておいた方がいい。街で何かあった時、お前たちなら簡単に逃げられるかもしれないが、今回のように止められて、証明書を見せろ、と言われたらどうする? 証明書がなければ、お前たちを調べるために、この子と引き離される可能性があるんだ」
確認はとても大切なこと。実際、犯罪者の手から子どもたちを救出したあと、この家族証明書を使い、子供たちの確認が行われ、親元に帰ることができているらしい。
うん、それは、私も良かったと思う。だって、みんな家族のもとへ帰ることができたんだから。でも、私の場合は?
家族だと証明できなかったら、私は保護の名目でケロケロたちと引き離され、その後、詳しい調査が行われる。そして調査の中で、家族だという証拠が見つからなかったら、私は教会に預けられて、ケロケロたちと離れて暮らすことになるらしい。
もちろん、そんなことになっても、きっとケロケロたちは私をさっと連れ出して、すぐに街を出てくれるだろうけど。でも、それでも。なるべく安全に、街でちゃんと過ごせるように、やっぱり、証明書は作っておいたほうがいいって。
ただ……。そうなると。親が魔獣っていうのは、今の人間の世界では、あまり認められていないみたい。だから結局、証明書も作ってもらえないらしい。
じゃあ、私が家族の中心になればいい? それも……。親のいない、ちびっ子の私じゃ、それもできない。
冒険者カードみたいに偽造できないかって、ケロケロたちが聞いたよ。それも、家族証明書はかなり細かく質問されて、下手をするとここでも調査されることがあり。絶対とはいえないけど、偽造するのはおそらく無理だろうって。
はぁ。思っていたよりも、街で過ごすのは大変だったみたい。ケロケロたちだけの時は良かったけど、私のせいでケロケロ達の邪魔をしちゃうよ。ポル君、街を楽しみにしていたのに。
「あたち、まちいかないほがい? なりゃ、いかない」
うん、もしあれだったら、どこかで留守番してるよ。こうさ、ケロケロたちは結界を張れるでしょう? どこかに隠れて結界を張ってもらって。それで留守番してれば大丈夫だと思うんだ。
『何を言っている。家族は共にいなければ。お前を1人にするわけないだろう』
『まったくです。私たちがそんなことするわけないでしょう』
『りあ、いっしょよ』
「でも、みんな、たいへん。だからおりゅしゅばんのほがいい」
寂しさにふと下を向いた私のそばへ、ケロケロたちが来てくれて、そっと寄り添ってくれたよ。
「はぁ、まったくお前達は。だがそうだな。今の感じ。本当にお前たちは家族として、共にいるんだな」
『だから、さっきから言ってるだろう』
『家族以外のなんでもありませんよ』
『ぼく、りあのおにいちゃん』
「ハハッ、お兄ちゃんか。……はぁ、分かった! 俺が今から考えてやる。お前たちに家族証明書を取らせる方法をな」
え?
『どういう意味だ?』
「そのままだよ。俺がお前達が街でゆっくり過ごせるように、家族証明書が作れるよう考えてやる。だから少し待っててくれ」
まさかの提案だった。ベルナードさんが考えてくれるなんて。だって、私たちは今出会ったばかりの他人だよ?
それに、ケロケロたちの正体についても、気になっているはずなのに、あえて聞かずにいてくれているのに。他にも聞きたいことがあるはずなのに。そんな中で、家族証明書を作れるように考えてくれるなんて。
そう、思ったのは私だけじゃなかった。
『なぜそこまでしてくれるのですか? あなたにとって私たちなど、ただの他人。いえ、その辺にいる魔獣でしかないでしょう。確かにリアのことはありますが、それもただの1人の子供でしかない。それこそその辺に、たくさんの同じような者達がいるはず』
『それで我々に何かしようと、考えているのではあるまいな』
「いちいち、証明書を取るにはどうしたら良いかなんて、面倒なことを考えて、何かしようとは思わん。俺は面倒なことはしたくないタチなんだ。……まぁ、俺にもいろいろあるんだよ。で、お前たちみたいなのを放っておけないだけだ」
『なぜ、そこまでしてくれるのですか? あなたにとって私たちなど、ただの他人。いえ、その辺にいる魔獣と大差ないはずです。確かにリアのことはありますが、それだって、ただの1人の子供に過ぎません。似たような者なら、その辺にいくらでもいるでしょう』
『それで、我々に何か企んでいるのではありますまいな?』
「何か企むために、いちいち証明書の取り方を考えるなんて、そんな面倒なこと、俺がするかよ。俺は面倒ごとが嫌いなんだ。……まぁ、俺にもいろいろあるんだよ。そしてお前たちみたいなのを、放っておけないだけだ」
『『……』』
「……」
あたりがしんと静まり返る。……そして私は決めたんだ。
「……あたち、しんじりゅ」
『リア……』
なんかさ、何がっていうわけじゃないんだけど。初めて会って、少し話しただけだけど。私もベルナードさんのことを、信じて良いと思ったの。
それにもしも、やっぱりダメな人なら、さっさと逃げて別の街へ行けば良いし。そして私は留守番してれば良いからさ。
「あたち、しんじりゅ。しょりぇで、みんなとかじょく!」
『……グレイス、どうする?』
『はぁ、リアがそう言うなら。確かにこの人間は信用できそうですからね』
「よし! 決まりだ。……とは言っても、俺もどこまで考えられるか分からんが。もしあれだったらあいつの力を借りて……」
『あいつ?』
「いやちょっとな。力を貸してくれそうな奴がいるんだ。だからもしも良い考えが思いつかなければ、そいつに力を借りようかと思ってな。が、とりあえず、最初は俺が考える。ただ、すぐには無理だろうから、2人は遊んで待っていてくれ。そっちの2人は考えながら、他にも話しをするぞ」
『分かった』
『分かりました。ではリア。私たちの姿が見える場所で遊んでいてください。ああ、これを』
グレイスが私に渡したのは、私がいつも、スプラッシュスライムを倒している時に使っている木の棒だった。
『ここにもいるでしょうからね』
『いつも通りにすれば良い』
そうか、ここは海辺だもんね。どこからかスプラッシュスライムが来るかも。他のスライムもね。
『りあ、むこういく!』
「うん!!」
私たちはケロケロ達から少し離れた場所へ行き、そこで貝殻を拾い始めたんだ。ただ、このあとすぐに、ちょっとした? 問題が起こったんだよ。そう、ケロケロたちにはちょっとした問題ね。




