22話 しつこいベルナードさんと突然の警告
「は? 今なんとおっしゃいましたか?」
「だから、どうせもうすぐ俺の仕事は終わりだろう? 今日は海上で交代する予定だったからな。また戻るなんて面倒だ。だから俺はこのまま帰るって言ったんだよ。それにこいつらに、ドラゴンの話しを聞きたいからな」
「何をおっしゃっているんですか。きちんと手順は守っていただきませんと」
「ああ、サインだろう? おい、貸してくれ」
「は、はい!」
「……と、これで良いだろう。よし、じゃあ俺の仕事は終わりだ」
「はぁ、ダメに決まっているじゃないですか。ベルナード様、船にお戻りください」
「いいからいいから。今日は俺の仕事は終わりだ」
「いいからではありません! 最後まできちんとしていただかないと。それに、もうすぐ終わりと言っても、まだ時間はあります。もし何かあったらどうするんですか」
「今日はもう大丈夫だろう。面倒な船はもう全部入ったからな。それに俺のあとの担当はショルダーだろ? あいつは俺よりも細かくしっかり調べる。あいつに任せるさ。よし、さぁ、行くぞ」
『私たちは何も言っていませんが?』
「ベルナード様!! はぁ、後のことは任せます。何かあればすぐに屋敷に連絡を。責任はベルナード様が取りますので」
「おい、後のことは俺のせいじゃないぞ! って、なんでお前まで降りてるんだよ」
「ベルナード様が、この方々に迷惑をかけないか監視するためです」
「俺はドラゴンの話しを聞くだけだ。ドラゴンは他人事じゃないからな。いつここが襲われるかもしれない。話しを聞いておかなければいけないだろう」
「でしたら私もご一緒して、話をうかがいます」
「はぁ、面倒だな」
何だろう。もう私たちの疑いは晴れたんでしょう? ここまで送ってもらったのはありがたいけど、もう私たちから離れてくれないかな? 何で一緒に行こうとするの?
3回目のおかわりクッキーを食べ終え、ジュースもしっかり飲んだ私とポル君。ちょうど食べ終わると、船は港から少し離れた岸近くに到着して。
船に乗った時みたいに、小舟に乗って海に降ろされ、そのまま岸まで送ってもらったんだ。だけど……。
さぁ、これでベルナードさんたちとは別れて、あとはどうやって私が街に入るか、考えようと思ってい私たち。
ほら、ケロケロたちは一応身分証があるけど、私はないから。というか、船で見せろなんて言われなくて良かったよね。もし見せろって言われてたら、なんて言うつもりだったんだろう。岸に来るまでは、誰に会わずに来る予定だったからさ。
そう、身分証がないと、街に入るのにいろいろと面倒らしい。大きな街や中くらいの街には、外からの攻撃から街を守るために、街を大きな壁で囲んでいるらしく。
確かにこの港町は、港はライトノベルに出てくるような、普通の港だけど、街の方は大きな壁に囲まれていたしね。
街に入るには、この壁に作られた門をくぐらないとダメで。しかも、通るには身分証の提示が必要らしい。これは、危険な人物を街に入れないためで、確かに大事なことなんだけど。
もし身分証を持っていないと、別の場所へ連れて行かれて、あれこれと質問され。門番さんが納得してくれないと、街に入れなくなっちゃうんだ。
ほら、私。いろいろ問題があるでしょう? どこで生まれとか、どこから来たとか、名前と歳に、ケロケロたちとの関係。細かく聞かれれば聞かれるほど問題だ。だから門じゃなく、入れそうな場所からこっそり入ろう、なんて前に話してて。
それなのに、ベルナードさんが面倒なことを言い始めたんだ。自分もここで船を降りて、私たちと一緒に街まで行くって言い出したの。しかもそも理由が、ドラゴンを倒した、ケロケロたちの話しを、聞きたいってことみたい。
ここで一緒に降りるって聞いただけで、は? って思ってたのに。さらに、は? ってなったよね。
だってこれからのことを決めなくちゃいけなくて。しかも、どこからか入らなくちゃいけないなら、その場所も見つけないといけないでしょう?
『私たちは話しをするなどと言っていませんよ、しかも共に行くなど、それも許可していません』
そうそうグレイス、もっと言ってあげて。
「まぁ、そう言うなって。理由はさっきも言ったろう? ドラゴンが出たんだ。街のためにも話しを聞かないとな。ああ、そうだ。こいつは邪魔だろう。先に帰すから、俺たちだけで話しをしようじゃないか」
「私ではなく、どう考えてもベルナード様が邪魔をしていますが? はぁ、あちらをご覧ない」
「ん? 何だ?」
「子供たちです」
「子供たち?」
私たち? 私たちがどうかした?
「……おいおい、なんて顔をしてるんだよ」
「それだけベルナード様が邪魔だということでは?」
「そんなにか!?」
『まったく……』
グレイスが鏡をだしてくれて、私とポル君を映す。すると私とポル君は、今の気持ちが顔に出てしまっていたみたい。目を細めて、眉間に皺を寄せ、口はへの字になっていた。
『可愛い顔がだいなしです。そんな顔をしてはいけません』
そうは言われても、こんな顔にもなるでしょう? だって自分のことは棚に上げ、ランドルフさんは邪魔だろうから帰させるって言ってし。私たちは2人に帰って欲しいんだよ。ランドルフさんはベルナードさんに、巻き込まれた感じだけど。
「その顔も可愛いな」
……私たちは嫌がってるんだけど?
スレイブが鏡をしまい、ベルナードさんの方を見る。
『私たちは、私たちの用事がありますので、話しをする時間はありません。ですのでここで失礼します』
そう言って、私とポル君をケロケロに乗せ、歩き始めようとした。だけど……。
「はぁ、ちょっと待て。おい、ランドルフ。俺が良いと言うまで、少しの間俺たちから離れていろ」
急にベルナードさんが、それまでのニコニコした緊張感のない態度から一変して、とても真面目な顔になり。雰囲気もピリッと引き締まって、声の調子も少し強くなった。
「……ベルナード様」
「これは決定だ。下がれ」
「……は」
「それとお前」
そして私たちの方へ、どんどん歩いてきたベルナードさん。スレイブの肩に手を置いて、近くに体を寄せ、小声でこう言ったんだ。
『お前、魔獣だろう? それに名前も、身分証も。あれは偽造だな。そしてたぶん、この子供は身分証を持っていない。仮にあっても、こっちも偽造のはずだ。街に無事入りたいなら、俺と話をするんだな』
そう言ったんだ。




