21話 さっさと終わった取り調べとまさかの送迎サービス
「お前、アスレイドっていう兄と、冒険者活動をしているウルシェイドだろう?」
『だから、そうだとだと言っているだろう』
「そうかそうか、お前があの」
「ベルナード様、この者をご存じなのですか?」
「ああ。数ヶ月前にオグベルクで、クリスタルドラゴンが出たって話しが、この街にも届いただろう」
「はい」
「だが、その後のことをきちんと把握しているか? いつもより早く、討伐完了の話が伝わってきたんだが」
「……そういえば通常よりも早く、その話が伝わってきたような。オルンベルグは小さな街。ドラゴンを討伐するほどの力はなく、他からの応援を待ってからの討伐になるため、それまでの間に街が無事かどうかと話していましたが、こちらからの応援もいるかと考えていた頃、討伐完了の報告がありました」
「だろう? そのクリスタルドラゴンを討伐したのが、このウルシェイドとアスレイドの兄弟だ」
「この冒険者たちが!?」
ベルナードさんの話しに、周りにいた人たちが息を飲んだり、まさか本当にと愕然としていたり。ランドルフさんみたいに、とても驚いている。
と言うか私も驚いてたよ。まさかドラゴンの討伐をしていたなんて。図鑑を読んでもらった時、ドラゴンも数種類載っていて。今聞いた、クリスタルドラゴンについては書いていなかったけど。
ドラゴンには人と共に生きられるドラゴン、比較的友好関係を築けるドラゴン。とりあえず何もしなければ、敵対してこないドラゴン。人間や他の種族を、問答無用で襲ってくるドラゴンと。いろいろ種類があり。
また力も、とても弱いドラゴンから、襲われれば数時間で大きな街がなくなってしまうほどの、力をを持っている最恐のドラゴンまで様々で。1番弱いドラゴンでも、倒すのはとても大変らしい。
そんなドラゴンを、ケロケロたちは討伐していたって? いや、いつもの攻撃を見ていれば、ドラゴンくらい簡単に倒しちゃうのか?
どちらにしても、ドラゴンを倒していたなんて。言ってくれれば良かったのに。私、ケロケロたちの戦いの話しを聞くのが結構好きで、2人も喜んで話してくれてたんだからさ。
というか、よくよく今までの話しを聞いてたら、冒険者カードがどう言うものか、ハッキリとは分からないけど、2人とも冒険者風じゃなくて、本当に冒険者だったの? しかも私の知らない名前だし。
……偽造か? たぶんそうだよね。まぁ、2人ともアウピドケロンとかグレイスウルフなんて書けないし、ケロケロとグレイスそのままもね。
「あのドラゴン討伐の後、オルンベルグから来た冒険者に詳しい話を聞こうと思ったんだが、そいつもよく分かっていなくては。討伐の後、この兄妹はギルドマスターと話をしていたらしいが、途中で話を中断して街を出てしまい、その後のことはまったく分からなかったと。そのおかげで、本当にそんな兄妹がいたのか、という話にまでなっていたんだ」
「本当にこの冒険者が……」
「ランドルフ、あれを持ってこい。おい、ウルシェイド。これからこの冒険者カードを調べさせてもらうが、良いな? これで記録に問題がなければ、お前たちの疑いは晴れたも同然だ」
『そうですか、分かりました』
すぐに返事をするグレイス。ランドルフさんは他の人に何かをいうと、その人は急いで船の後ろの方へ。そして何かを持って戻ってくると、それをランドルフさんに渡した。
それは、片手でも持てるほどの大きさの、四角い箱のようなもので。手のひらにすっぽり収まるくらいの、小さなクリスタルのような石が、中心にがついていた。
それをランドルフさんが持ったまま。今度はベルナードさんがその道具に近づき、箱には溝があって、グレイスの冒険者カードをその溝に差し込んだ。
するとすぐだった。クリスタルが光って、ブオンッと透明な光が浮かび上がったて、思わずじっと見ちゃったよ。
「どれどれ……。なるほど、登録されている名前はお前のものだし、確かにドラゴン討伐の記録が残ってる。他の情報も問題はなさそうだ。犯罪歴もないし、冒険者ギルドでの評価もかなり高い」
「それでは」
「ああ、この男は問題ない。解放して大丈夫だ」
どうやらう浮かび上がった光の中に、グレイスの情報が載っていたらしく。それを確認したベルナードさんは、一瞬ホッとしたような表情を浮かべた後、ニッと笑い。冒険者カードを抜き取ると、グレイスに返してきた。
「お前の疑いは晴れた。すまなかったな、船まで来てもらって。だがこれも仕事でな」
『いえ、疑いが晴れたのなら問題はありません』
「こんな沖に人がいるのはおかしいと思ったが。ドラゴンを倒すほどの力を持っているんだ。それで魔獣に乗って移動していたって、たいした問題じゃなかったな」
『それでは私たちはもう降りても大丈夫ですね。では』
突然の出来事にドキドキしていたけど、クッキーを食べ、ジュースを飲んでいるうちに。思っていたよりもあっさり、取り調べは終わってしまった。
そしてグレイスの降りるという言葉に、ポル君が止まっていた手を再度動かし、残りのクッキーをカバンにしまうと。これまた残りのジュース、ゴクゴクと飲み干したよ。それを見て、急いで私もジュースを飲む。こんな美味しいジュース、残すなんて勿体無いもん。
『さぁ、リア、ポル、行きますよ』
「ま、まちゅ。も、もしゅこち」
『ちー、ちちち』
『ほら、また何かあるかも分かりませんから』
私たちの所にくると、こそっとそう言ったグレイス。ケロケロもう頷いていて。さらに慌ててジュースを飲む私とお皿に1枚残っていたクッキーを食べるポル君。すると……。
「はははっ!! 待て待て、ゆっくり食べて飲んでいって良いぞ。お前たちあの岸の方へ行く予定だったんだろう? お詫びにそこまで連れて行ってやる」
え?
『いえ、私たちは……』
「良いから良いから、小さいな子を慌てさせるな。どうせそこまでなんだから、ゆっくり乗っていけ。それに着くまで、もう少しクッキーを出してやる。クククッ、そこのチビ魔獣が、全部カバンにしまったみたいだからな。今食べる分を出してやろう」
ポル君の行動、完璧に見られてたよ。顔を見合わせたケロケロとグレイス。そうして数秒後、ケロケロが1回頷き。私たちはなぜかベルナードさんに、岸まで送ってもらう事になったんだ。3回目のクッキーとジュースのおかわり付きで。




