夏のはじまり
早々に明けてしまった梅雨の
名残のような湿り気が
纏わりつくように汗ばむ肌を覆う昼日中
コンビニの傘立て
取り残されたビニール傘
影を生む日傘は我が物顔で咲き誇り
白い陽の輝きは輪を列ね
緩慢な思い出を引きずる道行くひとの
渇いた喉もとを照らし
つかえた息を熱くする
高くとがった耳鳴りのあと
まだ地中に眠る
蝉の淡い産声が聞こえたなら
寄せては波打つ
終わりから数えるばかりの焦燥も
段々と積み上げられた雲の天辺
目を細め
空を見上げた者から 夏になる