窮状
オレ、シン・グァン!
小6!
数年前まで大陸の帝国で暮らしてたけど、お袋に呼ばれて親父と一緒に こっちの島に引っ越して来た。
急だったから苦労もあったし、疑問も あったけど、後で教えてもらった所、あの頃の帝国はヤバかったらしい……。
なんでも、英雄の子孫である自分たちこそ要職にふさわしい!と主張するボンボン、そして そのボンボンとなって甘い蜜を啜ろうとする有象 無象が結託。
通称 '血統 派' が宮廷を牛耳り、'シンザンモノ' 'ヨソモノ' 'イナカモノ' を公職から追放、逆らうヤツを刑務所に入れたり、事故に見せかけて暗殺してたんだと……。
血統派からすれば、親父は地方 民族と言う名の蛮族、お袋は旧 属国 出身の下等 人種、オレは その混血だから、一家 全員 将来が危ぶまれたんだそうだ。
実際、今の帝国は地方 民族を '浄化' してるとかで、お袋の心配は杞憂じゃなかった。
ただ、最近は こちらでも 外人 叩きで有名だった前 国王のシンパが外人 排斥 運動を再開、キナ臭くなってる。
'こんな時は帝国人 同士で結束して身を守る 他ない。'
そう言うと親父は、オレをミナトハマ グルメ横丁に連れていった。
横丁は、帝国からの移民が集まって商売してる大きな商店街だ。帝国 料理レストランや帝国 雑貨店が沢山あって、観光スポットにもなってる。
大勢の観光客で ごったえす中を ついていくと、途中から人気のない裏通りに入り、さいごは町外れの倉庫に着いた。
親父が倉庫のシャッターを一定のリズムで叩くと、それが合図だったのか、シャッターが開いた。
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「ようこそ、グァンさん。お久しぶりです。」
「こちらこそ、お久しぶりです。テイ大人。」
「そちらの お子さんは、はじめましてだね? 私はテイ・テシク、よろしく。」
「はっ、はじめまして! シン・グァンです! よろしく、お願いします!」
(すっげー美人……! でも、男……だよな??)
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「では、グァンさん。さっそくですが、本題に入りましょう。」
「えぇ……。」
「ご懸念の通り、ここ最近、前国王シンパの動きが ますます活発化しています。」
「やはり……」
「この間の強盗 事件も、彼らがドラコ人を使って起こさせたものだと分かっています。」
「──!
警察は、なんと……?」
「まだ警察 内部でも、前国王のシンパが幅をきかせていて、ヘタに動けないそうです。」
「そうですか……」
「先日の議会で、彼ら肝煎りの外国人 排斥 法案が否決された以上、再び世論を盛り上げようと、同様の事件を起こす可能性が高い……。
次の標的は、このグルメ横丁かもしれません。」
「なんですって!?」
「もちろん、こちらも手をこまねいて待つつもりは ありません──。
とは言え、警備メカを随所に配置すれば、予算が かかりすぎる上、 ものものしさ から観光に影響が出かねず……。
現在、作業用に見せかけたメカを目立たないかたちで配置していますが、戦力不足は否めません。」
「……分かりました。
私たちも警備に手を お貸し しまょう。」
「!? しかし、グァンさんは もう……?」
「えぇ……。ですから私の子ども……シンを お貸し します。」
「えっ!? オ……オレッ?」
「それは頼もしい……
シンさん、よろしく お願いします。」
「──は?! はいっ!」