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サングラム  作者: 國崎晶
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俺と揺れるスカートのワルツ6




俺と幽霊が深尾駅に着くと、改札を出てすぐのところに風子が立っていた。

「おはよう!風子!」

「早いな」

「お、おはようっ。楽しみにしすぎて早く着いちゃった。えへへ……」

そうとう早くから待っていたのだろう、風子は照れ臭そうに笑った。

「一瞬見つけられなかったぞ」

「えっ!?そ、そうかな。変かな?これ」

風子はそう言って身につけているワンピースの裾を摘んだ。七月も半ばとなるとさすがに暑い。今日は風子もいつもの和装を洋服に衣替えし、白いワンピースに上品な帽子を被っている。夏になると水祈がよくこういう格好をしていたなと思った。

「そんなことないぞ!すごく似合ってる!な!和輝!」

「ああ、そっちの方がいいと思う」

「ほんと?よかったぁ。お洋服はいつも着ないからあんまり持ってなくて」

改札で待っている風子の姿を確かに一瞬見逃しそうになったが、それでも探し回ることはなかった。風子の長い白髪はやはり目立つ。乗降者数の多いこの深尾駅でもそれは同じだ。

「よーし、さっそく行くか!」

幽霊の合図で俺達は駅の近くに展開されている大型のショッピング街へと向かった。

「風子は何か行きたい店あるか?ないならとりあえず片っぱしから入るけど」

「わたしもどんなお店があるか詳しくないし、いろんなお店に入りたいな」

このショッピング街はメンズとレディースそれぞれに特化した店が多いので、幽霊の服と風子の服を買うとなると結局全部の店を覗くことになりそうだ。メンズもレディースも売っている店は、子供服も置いてあるファミリー向けの店くらいだろうか。それかあとはカジュアルなイメージの商品が置いてある店だが……風子の趣味ではなさそうだ。

最初に入った店をザッと一周してみるがピンとくるものがなく、早々に隣の店へ。どっちかというとレディースの店の方が数が多いので、風子の買い物はさっさと終わるかもしれない。

「風子!これお前に似合いそうだぞ!」

店に入るなり、幽霊はマネキンを指差す。マネキンが身に着けているのは白地にピンクの花柄のワンピースで、首から肩にかけてレースの切り替えしが施されている。

「うわぁ、かわいいね。でもわたしには可愛すぎないかなぁ?」

「そんなことない、絶対似合うって!」

「そうかなぁ」

二人のことはあまり気にせず水着の売り場を探していたが、風子が困っているっぽいので近付いて会話に入る。今日風子が着ているワンピースも七部袖で丈もふくらはぎまである物だし、肩まわりがレースになっているような露出要素がある服が苦手なんじゃないだろうか。

「おい、今日買いに来たのは水着だろ。あっちにあったぞ」

店の奥の方の水着コーナーを指差すと、風子はほっとしてそちらに向かった。さすがにシーズンの商品なので水着自体は何着も用意されていたが、セパレーツ型の物ばかりでワンピースタイプは四着しかなかった。風子の好みに合う物がなかったので、すぐさま次の店へ移動する。

五軒目の店で見つけた水着を無事購入した。この店は派手ではないが可愛いといった感じのナチュラルな服がメインで売られていたので、水着も風子が着れる物があってよかった。白地にネイビーの花柄で、フレアになった裾と鎖骨の辺りからぐるっと一周するようについたフリルがポイントだ。肩の部分だけ丸く穴が空いているが、ワンピースタイプの水着というよりは最早ワンピースである。いや、その辺を歩いている中高生の方が露出の高い服を着ているかもしれない。

風子はその水着と、更に水辺で使える羽織りを一枚買って、るんるんで店を出た。あとは雑貨屋でビーチサンダルと水に濡れても大丈夫なバッグを買えば、とりあえず風子の装備は完了だ。

幽霊の服と水着を探す前に、ちょうどいい時間なので昼食を摂ることにした。カフェやファストフード店が並ぶフードコーナーに足を運ぶ。

「わぁ、わたしハンバーガー食べるの久しぶり!」

「お前ハンバーガー食ったことあんのか」

「あるよ、たまにお兄ちゃんが買ってきてくれるの」

昼時でどこも混んでいたので、俺達はすぐ提供されて野外のテーブルでも食べれるハンバーガーを選択した。ハンバーガーの代名詞であるアクドナルドの商品を皆一様に頬張った。




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