俺と気持ちの爆発14
「まぁ俺の話はまだ終わってねぇけどな」
「えっ!」
「何がえっ!だよ、当たり前だろ」
「もう話すことないぞオレ」
「安心しろ、俺はあるから」
先程まで殊勝に正座をしていた幽霊は足を崩すばかりか、両脚を思い切り伸ばした。「あ痛ててて」と声を漏らしているところを見ると、どうやら足が痺れたらしい。
「俺達が出ていってからは何しゃべってたんだよ。こんな夜中まで」
「大名が落ち込んでたから話聞いてただけだよ」
「こんな?夜中まで?」
「和輝が振ったりするからだぞ」
「まるで俺のせいみたいな言い草だな」
話の流れをぶった切って放たれた大名の告白に、俺は「俺お前のこと嫌いなんだ、ごめん」とだけ返した。大名も俺の返事は予想がついていたようで、たいして驚きもせず「そう」とだけ言って俯いたきり動かなくなったから、居心地が悪くなって一言挨拶して出てきたのだ。
「別に和輝が悪いとも言わねーよ。誰も悪くない。なるべくしてこうなった」
「わかってるじゃねぇか」
「悲しいな。オレは神様だけど、女の子の恋一つ成就させてやることができないんだ」
幽霊はそう言って湿っぽいため息をついた。どうやらこいつはこいつで悩むものがあるらしい。
「話聞いてたって、どんな話してたんだ」
「けっこうどうでもいい話ばっかりだぞ。普段何して過ごしてるのかとか。将来の話とか。あと、よすがの話も少しした。仕事の話はしてないけど、どんな奴なのかとか」
「ほとんどどうでもいいな」
「だからそう言ってるじゃねーか。基本的にオレが質問して大名が答えるお喋りだったから、オレの話はそんなにしてねーんだ」
「まぁ、あいつ会話スキルゴミそうだもんな」
「あ、あと、和輝のどこが好きなのか聞いてきたぞ」
幽霊は楽しそうにニパッと笑った。俺にとってはそんな楽しい話題じゃねぇぞ。
「気にはならないけど聞いてやろう。何て言ってた?」
「特に理由はないってさ。気付いたら好きになってたって。和輝が存在してくれてることが重要なんだってさ。オバケのオレに言うことじゃねーよな」
幽霊の「ははははは」という笑い声が、壁一枚向こうにあるようにくぐもって聞こえた。俺は、よすがに水祈のことを聞かれて自分が何と答えたのかを思い出してしまっていた。
「でもさ、いいよなそういうの。いつの間にか好きになってるって。きっとオレの恋もそういう気持ちだったんだ。そう思うよ」
そう言った幽霊が少し寂しそうに見えたのは、ピカピカ光る輪っかのせいだろうか。それとも、どうなんだろうか。




