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サングラム  作者: 國崎晶
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俺と気持ちの爆発7




場所を変えないかと言ったのはよすがだった。彼女の提案を、何も言い返せなくて固まってしまった俺への助け舟だと、かなり前向きに解釈した。

「確かに、いつまでもここにいるわけにはいかないな。校舎裏の住宅街は一応人通りあるし」

「ええ。それに、屋根がないと空からは丸見えです。もし天界の者が近くにいたら一目でバレますよ」

幽霊とよすがのその会話を俺と大名は否定も肯定もしなかった。だがそれはほぼ肯定だったからである。この校舎裏は普段生徒が寄り付かないぶん、愛の告白やイジメやカツアゲの現場、一人でゆっくりタバコを吸いたい教師などにたまに使用されている。そういう者がたまたまやって来て目撃されても面倒だ。

「ならどこに行く?どこか店に入るか?」

俺はさっさと幽霊とよすがの会話に混ざった。大名と二人セットで放置されたくない。

「手頃な店があると良いのですが……。学生がいても目立たなくて、周りに話を聞かれないような場所がいいですね」

「うーん、そこのカフェとかじゃダメか」

「もう少し人が少ない空間がいいですね」

「あ、なら和輝の部屋はどうだ!?誰にも話聞かれないぞ」

「アホ。母さんがいるだろ。何で学校サボったんだって聞かれるぞ」

「う〜ん、それもそうかぁ」

「なら、」

全員が一斉に大名の方を見た。その「なら」は今日の昼休みに「ねぇ、私も暇だから手伝いに行ってもいい?」の「ねぇ」にとてもよく似ていた。

「私の家に来る?夜まで誰もいないし」

俺は幽霊の反応を確認した。幽霊はよすがの反応を見たかったらしく、彼は俺に横顔を向けた。よすがは何やら決めかねている様子でしばらく口をもごもごさせていたが、やがてこう言った。

「いや、ですが……それはあまりよろしくないのでは?」

その後よすがは一瞬だけ俺を見たが、どういう合図だったのだろうか。

「なぜ?」

「何故と言われますと……。……やはり、女性の部屋に男性が上がり込むのは良くないかと」

「え!オレよすがの部屋によく遊びに行ってたけどダメだったのか」

「いやそれ二人きりとかの場合じゃねぇ?俺ら集団じゃん」

「オレ単身だったぞ!よすがは良く思ってなかったのか!?」

「何を言います。プライベートなものがごろごろ転がる女性の部屋に上がり込むなんてデリカシーの欠如を感じます」

「カタカナを使いこなすなカタカナを」

何故かよすがは拒んでいるが、結局決定権は家主にある。

「うちでもいい人の方が多いならうちでいいよね?」

大名の問いかけに俺と幽霊は頷き、よすがは疲れたように肩を落とした。




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