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サングラム  作者: 國崎晶
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俺と現実の悪夢




今の俺は周囲からどういう目で見られているのだろうか。日曜日に男女が二人で出かけているのだ。おそらく高校生カップルが可愛らしくデートをしていると思われているのだろう。

もちろん断じてそんなことはなく、実際には俺と風子の周りにもれなく霊が三体もいるのだが。

「う〜……ん、ここでも見当たらなかったね……。木下佳子さんのお名前……」

隣で風子が「ふぅ」とため息をついた。

俺達は今日、栗生除霊霊媒事務所がある泉町市を中心に幽霊の想い出探しをしていた。俺の家があるのはもう少し南の野洲市なのだが、その近辺はよすがの頑張りのおかげでかなり捜索できていた。今回は風子が家からあまり離れられないという理由で泉町市になったが、この辺りはまだ何も捜索できていないのでちょうど良かったのだ。

俺はスマホのメモ帳に書かれた【泉町市歴史博物館】の文字の先頭にバツ印をつける。

「まぁこんなもんだろ。よすがだって毎日駆けずり回ってるのに何も見つけれてないんだし」

午前十一時に駅前に集合した俺達は、バスなどを利用しながら泉町市民活動センター、近江商人博物館、埋蔵文化財センターをめぐっていた。四ヶ所目の泉町市歴史博物館を出た現在の時刻は午後四時である。

「けっこう遅い時間になっちまったな。風子、兄貴は大丈夫か?」

「うん、まだ連絡ないから大丈夫だと思う……」

風子は肩にかけたちりめんのショルダーバッグからスマホを取り出すと時刻を確認した。

すぐ近くをふよふよ浮いていた幽霊が身を反転させてこちらを向く。

「この後もう一箇所行く予定なんだよな?」

「ああ、滋賀銅鐸の森ってとこだな」

幽霊はこちらに寄ってきて、俺の手にあるスマホの画面を覗き込む。

「風子、そろそろ帰らないと不味いかな?」

「どうする、風子。次のとこまでバスで二十分ってとこだから……家に着くのは六時は回ると思うけど」

俺と幽霊は風子の顔を見て反応を窺った。どうやら悩んでいるようだ。風子と悠葵ちゃんがいなくても出来ることではあるから、時間がヤバいなら先に帰ってもらっても大丈夫なのだが。遅くまで連れ回して栗生がキレることの方が面倒臭い。

「うぅ〜ん……。……でもわたしも一緒に行きたいなぁ」

風子は悩みに悩んでそう言った。風子の答えに俺はほんの少し驚いた。どうやらそれは悠葵ちゃんも同じらしい。いつもいつも兄貴の言いなりになっているイメージが強い風子が、兄貴に叱られるかもしれないリスクを犯してでも想い出探しの続きをしたいだなんて。

「本当に大丈夫なのか?あんまり遅くまで外出したことないんだろ?」

心配する幽霊に、風子は「大丈夫っ。それにお兄ちゃん今日予定があるって言ってたから」と微笑んだ。

そうと決まればさっそく出発だ。俺達五人は連立ってバス乗り場へと向かった。




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