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サングラム  作者: 國崎晶
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俺と真夜中の最低10




俺は風子のことが好きなのだろうか。

深夜三時半。すぐそこから幽霊のでかいいびきが聞こえる。しかし今日俺が眠れないのは、いびきがうるさいからとかそんなちゃちな理由ではない。

俺は風子のことが好きなのだろうか。再度自問してみるが、どうもしっくりこない。

いい子だとは思う。今時珍しい清い心をしている。人としてとても素晴らしい。だが、俺の心はそれが恋愛に結びついているだろうか?何度考えてもやはりしっくりこない。

そもそも俺は風子をしっかりと女性として見ているだろうか。年はあまり離れてはいないが、彼女の性格的にどっちかというと妹のように感じる。人間的には好ましいと思っているが、恋愛の好きではない気がしてきた。

じゃあよすがに問い詰められて動揺したのは何故なのか。風子への好意を恋慕ではないと決定づけたら、そこには最低な答えだけが残ってしまう。風子は、水祈と同じ声をしているのだ。

きっと俺には疚しい気持ちがある。水祈と同じ声だから優しくしてしまうし、水祈と同じ声だから気になる存在になる。水祈と同じ声だから風子のことを目で追ってしまうのだ。これを最低と言わずしてなんと呼ぼう。

俺は風子のことが好きなんじゃない。きっと、風子を通して水祈を見ているのだ。

一年の月日は俺に平静を与えるのに十分な時間だと思った。でもあの声で名前を呼ばれると心がざわつくのも事実なのだ。

「ふ、」

俺は思わず笑い声を漏らしてしまった。

残念だったなよすが。俺にはそんなキレイな気持ちはない。俺は風子に恋などしていない。俺は未だに水祈に捕らえられているのだ。

よすがの言葉に動揺したのは事実だ。しかし俺はいとも呆気なく一つの答えを導き出した。その答えに安堵したこともまた、俺が最低の腰抜けである証拠だと思う。




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