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サングラム  作者: 國崎晶
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俺とあの日の記憶




うたた寝してしまった俺は母親が夕飯に呼びに来る声で目を覚ました。十分程寝ていたようだ。幽霊はまだ帰って来ていないので夕飯を済ます。

三十分程して俺が部屋に戻ると、幽霊はベッドに転がりながら漫画を読んでいた。

「戻ってたのか」

「上手くいったぞ」

どうやらよすがの交渉の行く末を見守っていたらしい。よすがは実体化して大名と話したのだろうが、幽霊は実体化しなければ成り行きを見守りたい放題だ。大名とゼロ距離でもバレない。

幽霊はぴょんと起き上がると、顛末を説明した。

その話によれば、よすがは大名が自室に一人でいるときに実体化し、自分は霊体だと説明。霊体化と実体化を繰り返して証明。あとの言い訳は幽霊とほとんど一緒で、友達を探しに来たが仕事をサボっているので他の天使にバレると連れ戻されるというもの。そして、迷惑をかけないために自活したいから名前を貸してほしいと交渉。

俺は大名はそんな親切な人間ではないと思っていたが、よすがの頼みを何故か快諾。この大名にお願いするって作戦は、俺は正直失敗すんるじゃないかと思ってたのだが。よすがは無事に宿と戸籍を手に入れた。

「で、今日からさっそく衣食住を共にするそうだ」

「本当に俺達のことは何も言ってなかったのか?」

「ああ、その友達っていうのも佳子を探しに来たことになってる」

「大名は何か交換条件を出してこなかったのか?例えば……そうだな、銀行から金を盗って来いとか」

「そんなことは言わない。迷惑がかからなければいいって言ってたぞ」

本当かぁ?あいつがそんな人の心を持ってるなんて思わなかったな。幽霊飼うなんてただでさえ面倒で願い下げなのに。それとも、断ったら呪われるとでも思ったのか?

「まぁいい、よすがも寄生先が見つかったし、大名も忙しくなって俺に構わなくなるだろう。蓋を開けてみれば一石二鳥の名案だったかもな」

「だろ!?オレすげー閃いたもん!」

名案という単語だけが都合よく耳に入ったらしく、幽霊は満足げな笑みを俺に向けた。

「母さんが明日銀行行って通帳作ってきてくれるらしいから、明後日からさっそくバイト探しだな」

「おう!任せろ!」

夕飯の時に、将来の貯金用にもう一つ通帳が欲しいと適当な理由で説明したら、明日はパートの仕事が休みだから代わりに銀行に行くと母さんに言われた。銀行は三時までしか開いていないから、俺が学校を早退しなくてもいいようにだろう。俺が一人で銀行に行ったってどうせ親宛に電話がかかってくるんだから、母さんに行ってもらった方が話は早い。俺は有り難くお願いすることにした。

「明日お前にパソコン貸してやるから、出来そうな仕事適当に調べてみろ」

幽霊は「はーい」と元気よく返事をした。バイトはもともとやってみたいと思っていたらしく、乗り気である。こちらとしても有り難い限りだ。

まぁ幽霊なら食費だけ稼げば十分だから、俺がバイトしてる間にこいつもバイトしてるくらいでちょうどいいだろう。俺の元来のオバケのイメージでは、食費すらもいらなかったはずなんだけどな。

「とりあえず夕飯取ってくるから、大人しくしとけよ」

幽霊は先程と同じように元気な返事をした。




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