俺と神様の転合
「どういう意味だ?それ」
呆気にとられて何も言えない俺に代わって、意外にも冷静な幽霊が尋ねた。幽霊の声を聞いて、俺の脳みそはようやく回転を加速させる。
「お前らがどうにかしてくれるってことか?」
俺は男の姿を観察した。少しゆるめのジーンズに黒のパーカー。昨日同様楽でラフな格好だ。両手はジーンズのポケットに突っ込まれていて見えない。ポケットの中に武器でも隠しているのだろうか。ナイフで天使を殺せればの話だが。
男の妹は、男の背中に隠れるようにこちらを伺っている。俺達を警戒しているのだろうか。先程まで同じテーブルでフルーツジュースを飲んでいたのに?
「俺達の仕事をまだ説明していなかったな。俺達は霊媒師なんだ」
「霊媒師?」
俺はその単語をオウム返しに口にした。霊媒師という職業単語は聞き慣れないものだが、こいつらが霊媒師だということは納得できた。霊を操っているように見えたし、何より霊体であるこの神様に攻撃できたのだ。俺は男の言葉を素直に信じることにした。
「ああ。基本は依頼人から霊を祓って金を稼いでいる。その他にフラフラしている霊を除霊したりの慈善活動もしている」
「それで俺らを襲ったのか」
「人聞きの悪いことを言うな。まぁ、失敗したのはお前が初めてだがな」
そう言って男は幽霊に目を向けた。
「正直、お前の強さは認めるよ。俺のお祓いでも消えずに自由自在に実体化するなんて、よっぽど霊力が強くなきゃできない芸当だ」
「お兄ちゃん、もう」
「そうだな。それより、ここを移動しよう。ゆっくり話もできない」
妹に急かされ、男は身を翻した。先程と同じだ。着いて来いという合図。
俺は隣の幽霊と顔を合わせた。意見を確認し合う。女の子が俺達が着いていているのを確かめるように振り返った。その時にはもう、俺達は歩き出したところだった。




