#0 綺麗な月の下で
僕は、不治の病にかかっている。助からない病。そんなクソみたいな病気だ。
病名もつけられていないような、珍しい…いや、稀すぎるのだ。今まで不治の病になった人なんて記録に残っていないらしい。
今までは既存する薬でなんとかやっていたのだが、どうやら体が耐えられなかったらしい。
……僕は昨日の夜、吐血し倒れた。
僕はあまりその時のことを覚えていない。なんと言うのだろうか…思い出そうとすると頭痛がするだ。体が思い出すのを拒んでいるのだろう。
もしも耐えきれなかったら…と思うと背筋がゾクッとする。
そして、僕は次の日…余命宣言のようなものを受けた。
曰く、次の治療ですべてが決まるらしい。成功したら余命は伸びる。失敗したら…the endだ。そして、この治療の成功率は…1/1000未満。絶望的である。
でも、僕にはあまり興味はなかった。助かろうとも思わない。何故なのかって?
だって、生き残っても結局死んじゃうじゃん。伸びても一年。そして待っているのは病院生活。
そんな事するくらいなら…!僕は…死を選ぶ。
幸いにも、病室は屋上に近かった。看護師や医師の目を盗み、屋上まで来た。
上を見上げると、そこには綺麗な月が写っていた。おそらく二度と見ない月が…そこにはあった。
そして、僕が一歩を踏み出そうとした時…
「ちょっと待ちな嬢ちゃん。こんな綺麗な月の下で自殺するつもりかい?」
後ろから声がする。でも、もうそんなのどうだって良い。助かりはしないんだ。
そして一歩を踏み出し、飛び降りた…
「ちょっと待ちなって、言っただろ?嬢ちゃん」
なにか、温かいような、冷たいような…そんな感触が僕を襲う。僕は、恐怖で閉じていた目を開ける。
そこには…真っ白ななにかがあった。