エピローグ
「これにてこの話はおしまいです。私はかつて、実の叔母に呪われていましたが……今ではこの通りです」
両手を広げ、目の前の男性を見つめる。豊かな黒髪と黒い瞳を持った男性が頷き、くちびるの端を歪めた。一見初老男性に見えるが、実年齢はおそらく四十二歳ほどだろうか?
仕立ての良い黒衣に身を包み、聡明な黒い眼差しを細める。つい先程現れたこの男性はどこかで噂話でも耳にしたのか、「貴女が呪われているお嬢様だろうか?」と話しかけてきたのだ。だからこうして家に招き、お茶を出して語って聞かせた。
「ありがとう、すまないね。長々と語らせてしまって」
「いいえ、ちょうど暇でしたし。あっ、先程お話していた元死霊使いの夫も帰ってきますよ? もうじき。良かったらそれまでゆっくりしていてくださいな」
「いや、いや。それは流石に申し訳ない。なぁ?」
従者らしき三十代ぐらいの男性に話しかけ、愉快そうに笑う。話しかけられた黒い胡服姿の男性は美しい眉を顰め、きっと主人を睨みつけた。その冷徹な眼差しに少しだけひやりとしてしまう。主従関係にあると思ったのだが。
「それでは茶も馳走になったことだし。良い話も聞かせて貰ったことだし。帰ろうか、翠玉。ありがとう、お嬢さん。これからも夫婦でどうぞお幸せに」
「まぁ、そんな。私もお嬢さんだなんて年じゃないんですけどね……でも嬉しいです、ありがとうございます」
「申し訳ありません、奥様。俺の主が我が儘を言いまして」
丁寧にぺこりと頭を下げ、怪我でもしているのか足を引き摺って歩いている主人を支えて出てゆく。それをぼんやりと見守っていたが、もうじき夫が帰ってくることを思い出して慌てて昼食の準備を始める。
(でも、変な人。もう何十年も前の話なのに……)
「一生大事にします」と言ってくれた彼は本当に毎日優しくしてくれて、あれから子供も五人産まれた。彼そっくりのやんちゃな娘と優しい息子達に囲まれていると、あの出来事は遠い遠い幻だったのかと思う。
(ああ、幸せ。でも幻じゃなかった。彼がいなかったらこんな風に働いて子供を産むこともなかった……ただただ死を待つばかりだったのに)
彼が現れて、あの鋭い切っ先で深い深い暗闇を切り裂いてくれた。妖魔の血が白い頬に飛び散って美しかった。今でも目を閉じるとむざむざと蘇ってくる。世界で一番愛おしくて、今でも私のことをお姫様扱いしてくれる男性。それがグエンという人だった。
「お母さーん、お父さんが帰ってきたよー」
「ご飯できたー? お腹空いた!!」
「ちょっと待ってね、ごめんね? 遅くなっちゃって」
包丁を片手に野菜を剝きつつ、焦って声を張り上げる。ああ、どうしようかな。あんな話をしたからか無性に彼に会いたい。夫に会いたい。
「リーファ様。俺がしますよ、大丈夫ですか?」
「グエン様。ええ、大丈夫。出来ますから、ねっ?」
ぬっと彼が現れ、青い瞳を細める。畑でも耕していたのだろうか、その衣は土で汚れていた。こちらに手を伸ばして、指先をそっと握り締める。昔のような傷一つ無い手ではないけど、こちらの方が気に入っていた。
「少し顔色が悪いですよ、大丈夫ですか? 季節の変わり目なんだしあんまり無理しないで」
「ふふっ、大丈夫。ちょっとね、昔話をしていたから。それでかな……」
昔を思い出して微笑んでいると、彼が嬉しそうな顔でぎゅっと抱き締めてくれる。汚れてしまうだとか皮剝きが途中だとかも忘れて、少しだけ放り投げてそっと抱き締め返した。
「……昔話って一体何ですか? 俺がいない間に男でも連れ込んでた? 湯呑みが二つある。怪しいな」
「ふふっ、そうね? 皇族だって言われても納得出来るような男性が二人いて……私が呪われていた頃の話が聞きたいって。そう言っていたものだから。嘘を交えてお話したの」
流石に全部は話せない。知らない人だし所々嘘を交えて話したのだが。
「でも、変ね? 会いませんでした? 途中で。今出て行ったばかりだったんですけど……」
「会いませんでしたけど? あれ? 入れ違いになったのかな……」
首を傾げていると、ぐっと体を揺らした彼が頬に口付けてくる。笑ってお返しに口付けていると、腰に手を回してきたのでそれを掴んで止める。
「さっ、ご飯を食べましょう? あなた。呼んで来てくれない? あの子達を」
「ちぇっ、はーい……おーい、ランランにシンー。飯だぞー」
彼が出て行った後、ふと振り返って卓上に置かれた湯呑み二つを見つめる。あれ、おかしいな。ぼんやりと頭に白い霞がかかって上手く思い出せない。
(う、うーん? おかしいな、品が良い男性だったってことはよく覚えているんだけどな……)
深く考え込んでいると外から「お母さーん! トアン叔父ちゃんが来たよ!」と聞こえてきた。そこでそのことはすっかり忘れてしまい、従兄弟を迎えるために外に出る。
あれからというもののトアンは両親の愛情を受けて育ち、どんどん穏やかな男性になっていった。そして成人したその日に、自分の罪を償うために出家したのだ。あれには驚いた。髪も贅沢な衣服も捨てて、出家して今では丸っきり違う男性になっている。
「お久しぶりです、リーファさん。……お元気でしたか?」
「トアン、久しぶりね。ああ、ごめんなさい。うちの息子達が貴方に甘えて」
もうおんぶだの抱っこだのされるような年じゃないくせに、トアンの足やら腕にしがみついてぶら下がっている。トアンが苦笑して、大きくなった息子を抱き上げて見つめていた。きっとまだ好きなのだ、グエン様のことが。一切口には出さないが、絶対にそうだ。
(も~、グエン様は気が付いてないけど。すっかり俺の弟になったなぁ、なーんてお酒を飲んで呑気に話してるけど)
でもいいの。彼の一番は私だし、トアンは愛おしそうな眼差しで「グエン兄さん」と呟くだけ。もう昔のようにべたべたしたりしないし、私をきっと睨みつけてくることも無い。でも。
(たまに時折。物凄く淋しそうな目をして私を見つめてくる……)
穏やかな茶色い瞳が「いいな、貴女はそうやって彼の傍にいれて」と言っている。それを見る度申し訳なく思うが。
「おっ、トアン? 久しぶりだなー! 泊まってくだろ? 今日! 母さんも喜ぶ」
「兄さん。お久しぶりです。ふらりと立ち寄っただけですからすぐに……」
「いいって! そんな遠慮をするなよ? 淋しかったんだぞー? 一年ぶりか? もうちょい顔を出せよな、お前!」
肩を組んで笑い、黒い袈裟姿のトアンが困ったように笑う。ああ、こんな無神経なところは昔から変わってない。彼はいくつになっても成長しない。胸がちりりと嫉妬の炎で焦げる。
「ねぇ、あなた! ご飯が出来たわよ、ほら! トアンも食べていくでしょう?」
「ああ、そうだった。そうだった。こら、メイメイ? ファファの尻尾を掴むんじゃない、嫌がってんだろー?」
それでも穏やかな日々が続いてゆく。昔とは比べ物にならないくらい穏やかで、妹のリンファから来た文を見てにっこりと笑う。彼女も彼女でユウロンと結婚して、一男一女をもうけた。遠いから中々会いに行けないものの、こうして頻繁に文のやり取りをしている。
「ふふっ、グエン様ー? 眠るのならちゃんとお布団を被って下さいね? お腹、壊しちゃいますよー?」
「んぁ~、待ってます。ずっと、待ってます……」
寝ぼけているのか、もにゃもにゃとそんなことを呟く。返事を書こうと思ったのだが筆を置いて、彼の傍へと行く。
(ああ、懐かしいな。出会ったばかりの頃、こうしてお布団に潜り込んで楽しんでた……)
ぐっすりと眠っている彼の脇腹に潜り込んで、白い夜着を握り締めて頬を赤くしていた。昔に戻った気分となって布団に潜り込み、ぎゅっと彼にしがみつく。
すると、むにゃむにゃと寝言を言いながらも私を抱き締め返してくれた。その幸福に酔い痴れ、そっと両目を閉じる。
「グエン様……私を救って下さってありがとうございます。貴方のお陰で今の私がいる……幸せです」
「……リーファ様。俺の方こそ……貴女がいたからこそ本当の意味で生き返れた。またもう一度生きて、こうして貴女に触れることが出来る」
「ぐ、グエン様……起きていたんですね?」
照れ臭くなって顔を埋めると、低く笑ってぎゅっと抱き締めてくれた。ああ、幸せだ。ここに恐ろしい妖魔も呪いもありはしない、あるのはようやく得た幸せだけ。ようやく得た命と幸せだけ。
「ふふっ、グエン様。おやすみなさい、その、また明日……」
「はい、おやすみなさい。リーファ様。愛していますよ? また明日……」
あれは確かに恋心じゃなかった。淋しくて苛立って真っ暗闇の中でもがいていると、彼の声が響いてきた。
『トアン、大丈夫か? 歩けるか?』
優しい声と手のひらを差し伸べてくれる。それを見て嬉しい感情がこんこんと湧いてきた。人混みの中ではぐれぬよう熱い手のひらでこちらの手を繋ぎ、優しい声で一つ一つ教えてくれる。
(ああ、グエン兄さん。確かにあれは恋心じゃなかった、貴方の言う通りだった)
自分の犯した罪を知って、両目をきつく閉じるとそれは恋心に変わっていった。あの幼い子供の執着心から本物の恋心へと変わっていった。しかし今なら分かる。貴方の言葉を理解出来る。
『リーファ様は俺が幸せであればそれでいいと。そう言ってくれるんだ、トアン。お前とは違って』
そうだ、愛情というものはそういうものだ。どんなに貴方が恋しくても貴方の幸せだけを願っている。この恋心を秘めて一生貴方の弟でいよう、絶対に口にすることは無い。「好きなんだ」と。
「グエン兄さん……未練がましいな、でも」
彼があの手で俺のことを救ってくれた。刺されてもなお声を震わせて、温かい手のひらでこちらを抱き締めてくれた。
『だから帰ろう、一緒に。帰ろう、トアン。俺は、お前の苦しんでいる姿なんか見たくない。幸せになって欲しいよ、トアン』
泣いてしまうほど嬉しかった、その言葉が。人から初めて必要とされた、認めて貰えた。幸せになって欲しいと、そう願って貰えた。ああ、だったらグエン兄さん。
(俺はこの狂気を手放そう。……今更人生をやり直すだなんて、恐ろしくて仕方が無かったけど)
まともになって自分の罪と向き合うのが、恐ろしくて恐ろしくて仕方が無かった。でもそれが彼の願いだった、彼の残酷な願いだった。
「グエンさん……グエンさん」
好きだ、どうしようもなく。でも言わない、言えない。遠くで貴方の幸せだけを願っていよう。どれほど辛くとも彼女のように隣に立ちたかったと思って歯を食い縛っていても、俺は貴方のことが好きだから。
弟でいることが、貴方の一番の幸せだとそう理解しているから。
(……許されないことをしてしまった。我ながら、なんと惨いことをしてしまったのか……)
殺した赤子とその子供の供養をして生きてゆく。全てを投げ捨てて世のため、人のために尽くそう。それこそが彼の願っている俺の姿。彼を幸せにする方法で、俺が歩むべき道。
「父さんと母さんにも。また会いに行かなくっちゃな……元気にしてるかな」
母もすっかり穏やかな人となって、父と幸せに暮らしている。昔のように極端に構ったり放置することもなくなった。良い両親だと思う。
そんなことを考えつつ黙々と歩いていると、後方から「トアン叔父さーんっ!」と聞き慣れた少年の声が響いてくる。思わず振り返って、走ってくる少年を見つめた。
彼そっくりの青い瞳と黒髪を持った少年がぜいぜいと息を荒げ、何かをその手に持っている。
「シン……一体どうしたんだ? 忘れ物はしていない筈だが……」
「これっ! 柘榴! 持ってって! 無いよりましだろ? さっき収穫してきたばっかだから。ほらっ」
ざらんざらんと冷たい柘榴の塊を俺の手に押し付け、頬を赤くして笑う。このためだけに寒い中を走ってきたのか、シンは。
「ありがとう……グエン兄さんが? 俺に?」
「いんや、俺の判断。これからもっともっと寒くなってくるし……ごめんな、もうちょい食べやすいやつの方が良かったんだろうけど……俺が丹精込めて育てた柘榴だから。叔父さん、こういうのの方が喜ぶかと思って」
あどけない笑顔を浮かべ、青い瞳を細める。彼の思いつきかと思ったのにそうじゃなかった。優しい子に育った、彼そっくりの。彼女の面影を残しつつも、シンは彼にそっくりだった。これぐらいは許して欲しいと願い、シンを強く強く抱き締める。
「わっ、叔父さん? ……良かった、そんなに喜んで貰えて。父さんも淋しがってたからもうちょい寄ってって。次は。忙しいんだろうけどさ」
シンが笑って、こちらを強く抱き締め返す。ふっと蘇ってきた昔の記憶に蓋をして、くちびるを噛み締めた。
(ああ、グエン兄さん……こうしていつまでも俺のことを救ってくれる。貴方とよく似た眼差しの息子が、こうして俺のことを気遣ってくれる……)
どうかどうか、彼らがこのまま幸せでありますように。かつての乱暴な想いを脱ぎ捨て、そう願う。泣いてはいないだろうか、自分は? シンが少しだけ青い瞳を瞠って、心配そうな顔をしている。
「あり、ありがとう、シン……ありがとう」
「だっ、大丈夫? 叔父さん。そんなに嬉しかったのか? なぁ?」
目の端に浮かんだ涙を拭い、もう一度だけと願ってシンを強く抱き締める。ああ、良かった。俺の幸福は今ここにある。良かった、あの時彼を殺してしまわなくて。殺していたらシンもメイメイも生まれてこなかったから。
「……ありがとう、シン。大事に食べるよ、折角お前が作って持ってきてくれたものだからな」
「うん、こっちこそありがとう。じゃあまた。気をつけて!」
手を振り返して笑う。ああ、グエン兄さん。大丈夫、この想いを胸に抱えて生きて行ける。
(貴方の幸せだけを願っていよう、俺は……それがきっときっと、恩返しになる)
またひたすら黙々と歩いて林道に入る。深い木々がその姿を現して、野鳥が頭上で囀るころ。ある男二人に遭遇した。
(あれは……老人? 具合でも悪いのか? 大丈夫か……?)
聡明な顔立ちをした男は四十かそこらに見えたが、足が悪いらしく杖を持って岩に腰掛けていた。従者らしき男が腰に手を当て、何やら説教をしている。
「貴方がわざわざ行きたいと言ったから、ここまで来たというのに……」
「もし、何かお困りですか? ああ、そうだ。良ければこの柘榴でもお一つどうですか?」
それまで柘榴をじっと興味深く見ていた男の黒い瞳がぱぁっと輝き、嬉しそうな笑顔を浮かべる。
「いいのか? これはかたじけない。さぞかし大事に育てられた柘榴だろうに……」
「ははは、そんな風に見えますか? ……私の甥っ子が育てたものなんです。食べてはいないが味は保証しますよ? 真面目でよく働く少年でして……」
惜しいが仕方が無い。ざらりと纏めて六つほど渡すと、嬉しそうな顔をして受け取った。傍に控えていた男が丁寧に頭を下げ、こちらを見て少しだけ笑う。
「申し訳ない、ありがとうございます。見たところ貴方は……」
「寺の坊主です。帰る途中でしてね……良ければ何かお手伝いしましょうか? 足が悪いのでしょう? この先もまた道が険しくなりますから」
「いや、いや。そこまでして貰うのは流石に申し訳ない。大丈夫ですよ、お気持ちと柘榴だけ頂きます。それで十分です」
よく通る声で笑い、男が柘榴を持ち上げる。笑って会釈をした後、その男達と別れて林道を登ってゆく。残った柘榴は一つだけだったが心が温かくなった。師匠と分け合って食べようか。
「……ああ、冬晴れだな。今日は。空が青い、懐かしいな……」
木々の隙間から見える青空を見て笑い、足元の小石や木の枝を見つめる。帰って祈ろう、彼の幸せを。そして畑仕事をして供養をして、今日も明日もそんな風にして生きてゆく。
「よろしかったのですか、閻魔大王様? グエンとその子らを地獄に連れて帰らなくて」
「そうさのう。目を離すとあっという間に子供を産んで増えるのう、人間は」
「そんな、犬猫じゃあるまいし……今まで前例がないことです。死人が生き返って子供を残すなど、あってはならない……」
手持ちの翠玉から生み出した男だから、翠玉と名付けた補佐官が低く唸った。涼しげな顔立ちをした翠玉が苛立って、岩に腰掛けた私を強く強く睨みつけてくる。
「よいではないか、茶も馳走になった。菓子もうまかった。それにこの柘榴も貰った」
「トアン、あの男……まんまと上手く逃げおおせましたね。地獄逝きに出来なかった。あれは本気で悔いている……くそっ」
「まぁまぁ、そなたは気が荒いのう。翠玉」
高貴な宝石から生まれたからか、この男は矜持が高くて気が強い。笑って、柘榴の表面をざらりと撫でる。
「それにあそこでグエンとその子らを連れて帰れば。儂が悪者になってしまうじゃないか……なぁ?」
「悪者になればいい。……一体どうなることやら。世界が歪んでも知りませんよ?」
「なに、大丈夫だ。グエンとやらはあのショウリンとは似ても似つかぬ優しい男だ……きっと子供も良い子に育つことだろう。さて、帰るか。地獄に」
「不満です、俺は。不満です……」
「ははは、まぁまぁ。ここに柘榴が六つあるではないか、これを代わりにしようかの」
グエンとその子供達、六人を地獄に連れて帰ろうかと思ったがやめた。あのトアンとやらもすっかり改心しておる。ここで茶々を入れては、あのようやく幸せになった女子も苦しむだろう。
「それに儂は美人に弱いんだ。ショウリンにも弱い。色んな意味を含めてな」
「顔で判断するの、本当にやめて貰えませんか? むさ苦しい男となると罪が重たくなるともっぱらの噂ですよ、亡者の間では。おかげで髪を整える亡者が後を絶たない……」
「よいではないか、身綺麗にするのは良いことだ」
「そういうことじゃないんですって、本当にもう……」
短刀で柘榴を剝き、齧ると甘酸っぱい味が口の中に広がってゆく。あの男の言う通り、味が良い。苦々しく笑っている翠玉に渡すと、嫌そうな顔をしてそれを受け取った。
「うむ。これにて大団円、だな。最初から気が進まなかったのだ、儂は……まるで死神のようではないか、もう」
「似たようなもんでしょう、閻魔大王様。さぁ、帰りましょうか。お茶でも淹れてこの柘榴を食べましょう」
「うむ、そうするか。ああ、待て待て翠玉!? 一気に二つも飲み込むなよ、お前は!? 儂の分も残しておいてくれよ!?」




