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隻眼の勇者  作者: 火神ツバメ
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隻眼の勇者 第一話 片目同士

登場人物

主人公

マックアレクサス 生まれつき左目が見えない少年


マックレオナルド アレクサスの父


マックノノア アレクサスの母


ナナセ アレクサスの幼なじみ


マルク カルハバーム騎士団所属の騎士

オギャーオギャー。

今この瞬間この世界に新たな命が生まれた。


マックレオナルド「よく頑張ったな。ノノア!」

マックノノア「私にもよく顔を見せて。」


レオナルド「あぁ。元気な男の子だ。」


ノノア「本当。可愛らしい私達の初めての子ね。名前はどうしようかしら?」


レオナルド「マック家の跡取りに相応しい名前を考えておいたさ。この子の名前はマックアレクサス。」


ノノア「アレクサス。良い名ね。元気に育ってね。」


レオナルド「ちなみに眼の色は両眼とも黒色だな。」


ノノア「そうね。魔眼もちならソルジャーになる選択肢もあったかもしれないけれど、この子には普通の幸せを掴んで欲しいわね。」


このユースレイド大陸で生まれる人間の子供には稀に魔眼を宿して生まれてくる子供がいる。

魔眼を宿した子供は普通の子供達よりも身体能力が高く15歳から16歳になるまでに特殊能力スキルを獲得する。そのスキルをちゃんと使いこなせるように指導するために、その子供達は15歳になる年に中央都市カルハバームにあるカルハバーム騎士養成学校に強制的に入学させられる。

魔眼持ちの子供は特待生扱いになり入学金や授業料等も免除され、卒業後の騎士団への入隊もしやすくなっている。


アレクサスが生まれてから5年の月日が流れた。

アレクサスが生まれてから今日までノノアとレオナルドはあることを心配していた。

それはアレクサスが片目が見えていないのではないかということだ。

物を取る時に何度か手を伸ばさないと取れなかったりよく段差につまづいて転んだりしていたからだ。

それまではまだ小さいからと思っていたが他の子と比較してもその回数が多い。

そのため一度医者に診てもらいに行ったのだが、やはりアレクサスは片目が視えていなかった。

それからは片目が視えないことを考慮して過ごす様になった。


それからさらに5年経ち、アレクサスは10歳になった。

10歳になる頃には片目が見えなくても普通に生活出来るようになっていたがそれでも普通の子よりも走るのが遅かったり書くのが遅かったりするため遊ぶ時に仲間外れにされることが多かったが、唯一いつも一緒にいる友達がいた。

その子はいつも片目に眼帯をしていた為、俺のように仲間外れにされていた。


その子と今日も遊ぶ約束をしていた。


アレクサス「おまたせ!ナナセ。」


ナナセ「うん。アレクは今日も元気だね。」


この子はナナセ。俺と同い年の女の子で赤ちゃんの頃から孤児院で育ったらしい。


アレクサス「まぁね。今日は森に冒険だからね。」


ナナセ「目的を忘れてないかい?」


アレクサス「もちろん!最近元気がない孤児院の先生の為にキノコを取りに行くんだろ?」


ナナセ「そう。そのキノコはとても貴重らしくてね。森の奥にしかないらしい。本当は森に子供だけで入っちゃいけないんだけど。」


アレクサス「俺達ももう10歳だし何度かお父さんとお母さんと行ったこともあるから大丈夫だよ。」


ナナセ「そうだね。それじゃあ、早速行こうか。」


アレクサス「行こー!」


2人は森に足を踏み入れた。


アレクサス「それでそのキノコは森の奥の何の辺に生えてるんだ?」


ナナセ「森の奥にある洞窟に生えてるらしい。」


アレクサス「そっか。なら洞窟目指して行くぞ〜。ナナセは片目眼帯して見えないんだから気おつけなよ。」


ナナセ「それを言うならアレクもだろ?」


アレクサス「俺はもう慣れたから大丈夫。」


ナナセ「私も同じだよ。だから心配ご無用。それよりそのスコップは何に使うの?」


アレクサス「これは何かあった時用だよ。ナナセはそのリュックの中に何を入れて来たんだ?」


ナナセ「それはもう少し後のお楽しみかな。」


アレクサス「気になるな〜。」


それからもう少し歩きお昼になり2人は少し休憩することにした。


アレクサス「ふ〜。少し休憩しようか。」


ナナセ「そうだね。アレクはこの辺までは来たことあるんだっけ?」


アレクサス「そうだね。ここから先は行ったこと無い。」


ナナセ「そっか。そうだ。簡単だけど、お弁当作ってきたから一緒に食べよう。」


ナナセはリュックからお弁当箱を出し広げた。


アレクサス「うわ〜。すげぇ。これ全部ナナセが作ったのか?」


ナナセ「孤児院の先生にも手伝ってもらったよ。」


ナナセ「それじゃあ、食べようか。」


2人「いただきます!」


アレクサス「ごちそうさま!おいしかった。」


ナナセ「良かった。」


アレクサス「さてと。お弁当も食べたしそろそろ行こうか。」


ナナセ「そうだね。行こう。」


2人は再び歩き始めた。


しばらくして目的地の洞窟に辿り着いた。


アレクサス「洞窟だ!」


ナナセ「先が暗くて見えづらいね。少し怖いな。」


アレクサス「大丈夫だって足元気を付けて進もう。」


2人はゆっくり洞窟の中を進んで行った。


アレクサス「あっ。キノコあった!」


ナナセ「うーん。コレは違うなぁ。図鑑に載ってたのと違う。」


アレクサス「そっか。」


ナナセ「あっ。あれだ!あの上にあるやつ。」


アレクサス「あれか!ちょっと届かないな。そうだ。俺が下になるから俺の上にナナセが乗れば届くんじゃないか?」


ナナセ「うーん。なんだか悪い気がするけどここはアレクに甘えようかな。」


アレクサス「よし!いつでもいいぞ。」


ナナセ「それじゃあ、乗るね。無理しないでね。」


アレクサス「大丈夫!」


ナナセ「よいしょっ。」


アレクサスは四つん這いになりその上にナナセが乗り手を精一杯伸ばした。


ナナセ「もうちょっと…採れた!」


アレクサス「やったな!」


ナナセ「うん。色や形も図鑑に載ってた通り。このキノコは採った後に独特な匂いがするらしいんだけど、確かに凄い匂いがするね。」


アレクサス「確かに。なんだろう。初めて嗅ぐ匂いだな。」


ナナセ「とにかく目的は達成出来たね。ありがとう。アレク。君が居なかったら採れてなかったよ。」


アレクサス「良いって良いって。俺も冒険出来て楽しかった。それじゃあ、帰ろうか。」


ナナセ「うん。」


2人は来た道を戻り村に向かって歩きだした。


ナナセ「アレク。」


アレクサス「ん?どうした?」


ナナセ「なんか聞こえない?」


アレクサス「なんかってなに?」


ナナセ「足音。何かが近づいて来てる。」


アレクサス「足音?」


アレクサスには何も聞こえなかった。


ナナセ「急ごう!」


アレクサス「わかった。」


2人は森の出口に向かって走り出した。

しばらくしてアレクサスにも足音が聞こえてきた。

後ろを振り向くとそこには大きなイノシシがこちらに向かって走ってきていた。


アレクサス「なっ。なんでイノシシが!」


ナナセ「もしかしたらこのキノコの匂いを嗅ぎつけたのかも。それならキノコを捨てれば助かるかも。」


アレクサス「それは駄目だ。そのキノコは孤児院の先生を元気にするために必要なんだろ?」


ナナセ「でも!それでアレクが危険な目にあったら意味ないよ。」


アレクサス「大丈夫!俺には秘策がある!」


ナナセ「秘策?」


アレクサス「前に来た時にお父さんと作ったイノシシ用の落とし穴があるのを思い出した。だからあとは任せろ!」


そう言うとアレクサスは立ち止まった。


ナナセ「アレク!?何してるんだよ!」


アレクサス「さっき言っただろ。俺には秘策があるからあのイノシシを落とし穴まで誘導する。だから、ナナセは早く行け!」


そう言うとアレクサスはイノシシに向かって走り出した。


ナナセ「アレク!こうなったら早く大人の人を呼んで来なくちゃ。」


ナナセは村に向かって走り出した。


アレクサス「あのまま逃げてたら2人とも追いつかれたかもしれないからな。俺が足止めしないと。」


アレクサスにイノシシが近づいてきた。


アレクサスはイノシシに向かって石を投げた。


アレクサス「イノシシ!こっちこい!」


イノシシはナナセからアレクサスに向きを変えて走って来た。


アレクサス「スコップがようやく役に立つ時が来た。おりゃ〜!」


アレクサスはスコップを持ち上げながらイノシシに向かって走り出した。

イノシシにスコップを振り下ろしたのと同時にアレクサスは後ろに吹き飛んだ。


アレクサス「ぐはっ。」


イノシシは一旦止まったが改めて突進してきた。


アレクサス「くそ。体が動かない。」


イノシシがアレクサスに突進してきたその瞬間。


ザシュッ。


突然現れたその人物によりイノシシは斬られ倒れた。


アレクサス「えっ?何が起きたんだ?」


騎士の男「子供が一人で森に入るなと教わらなかったか?」


アレクサス「えっと。ごめんなさい。それとありがとうございました。」


騎士の男「これに懲りたらもう森には入るなよ。ん?どうやら迎えが来たみたいだな。」


騎士の格好をしたその男がそう言うとしばらくして村の大人達が集まってきた。


村の大人「これは一体。」


レオナルド「アレクサス!無事か!」


アレクサス「お父さん!うん。大丈夫。少し身体を打っただけだよ。」


レオナルド「そうか。良かった。ところで貴方は?見たところ騎士ですか?」


アレクサス「この人が俺を助けてくれたんだ。」


騎士の男「たまたま通り掛かったらその少年がイノシシに襲われていたので騎士として当たり前のことをしたまでです。」


レオナルド「そうですか。ありがとうございました!お名前を聞いても宜しいですか?」


マルク「カルハバーム騎士団所属のマルクです。」


レオナルド「マルク様。改めてありがとうございました!是非ともお礼をさせて頂きたいのですが。」


マルク「このぐらい騎士として当たり前のことですから、どうかお気にせずようお願い致します。すみませんが私は用があるのでここで失礼させてもらいます。」


そう言うとマルクは走って去っていった。


その後アレクサスは家に戻りレオナルドとノノアから怒られた。


次の日にアレクサスはナナセに昨日の話をしていた


ナナセ「アレク。本当に無事で良かったよ。」


アレクサス「うん。ナナセは孤児院の先生にキノコ渡せたのか?」


ナナセ「うん。怒られたけどね。でも喜んでくれた。」


アレクサス「そっか。なら頑張ったかいがあった。」


ナナセ「アレクを助けてくれた騎士の人にもお礼が言いたかったな。」


アレクサス「ナナセ。俺将来、騎士になりたい。」


ナナセ「あ〜。アレクならそう言うと思った。」


アレクサス「ナナセもなろうよ。」


ナナセ「私は無理だよ。」


アレクサス「今から無理って決めつけるなよ。やってみなきゃわからないだろ?」


ナナセ「わかったよ。それでどうするの?」


アレクサス「どうするって?」


ナナセ「騎士になるためにはどうすればいいの?」


アレクサス「特訓すればいいんじゃないか?」


ナナセ「はぁ〜。まぁアレクらしいね。」


アレクサス「よ〜し。頑張って騎士になるぞ!」


その日から二人は騎士を目指し特訓を開始した。


それから更に5年が経ち。


ノノア「忘れ物はない?」


アレクサス「大丈夫だよ。母さん。」


レオナルド「しっかりな。」


アレクサス「うん。父さん。それじゃあ、行ってきます!」


アレクサスは家を出て歩きだした。


ナナセ「おはよう。アレク。忘れ物はないかい?」


アレクサス「おはよう。ナナセまで母さんと同じこと言うなよ。」


ナナセ「アレクのことはアレクの両親から頼まれてるからね。」


アレクサス「それを言うなら俺だって孤児院の先生にナナセのことを頼まれたぜ。まぁいいや。それじゃあ行こうか。中央都市カルハバームへ。」


二人は中央都市カルハバームへ騎士養成学校に入学するために入学試験を受けに向かった。



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