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5.お茶会~シルヴァイトside

「彼らの言葉に興味がないから、でしょうか。

私が養女であることも魔力がないことも事実ですが、それは罪ではありません。

むしろそれを嬉々として取り上げ、貶めようとするご自分達こそが自らを貶めていると気づいていらっしゃらないことが私には滑稽です。

私の家族は魔力が高く、この国随一と認識されるほど魔術に長けておりますが、私を貶めたことは一度としてありません。

彼らは上しか向いていないのです。

だからこそ余計に下を向いて自分が秀でていると安心するような厚顔無恥な方々には興味も持てず、関わるのが面倒でしかないのです。

ですから殿下に先ほど治していただけたことに、心から感謝しておりますの。

怪我の証拠はなくなりましたもの」


 今日の王子の護衛中に聞いた9才の引きこもりを噂されている令嬢の言葉が忘れられない。

それと同時にこの言葉を聞く少し前に自分が発した言葉を反芻する。


「我が国随一の魔術師一族であるからこそ、魔力を持たぬ娘を恥じているのやもしれませんね」


 実に恥ずかしい。

顔から火が出るとはこの事だろう。

自然と髪と同系色の銀灰色の狼耳とふさふさ尻尾がへにゃりと下に項垂れ、2メートルある大柄な背中も、職業柄珍しくはない青いつり目の目尻も今は垂れ下がり気味だろう。

ここが団長室で良かった。

こんな姿は誰にも見せられないと俺、シルヴァイト=ルーベンスは思った。


 驕りを看破されたような衝撃を受けた。

元々身体機能や魔力が一般的な人属より高い獣人属とはいえ、26才で近衛騎士団の団長となり、以来この3年その職を続けられた事を嬉しくもあり、誇らしくもあった。

けれど騎士たるもの謙虚であるべきだと常に己を戒めてきた····つもりだったのだ。

そう、つもりでしかなかったと気づかされた。


 ふと、お茶会中の少女を思い出す。

本来は最低でも10才になっていなければ招かれないはずの、13才になった王子の為のお茶会。

そこに9才の、人属の中でも小柄な部類に入る少女が混ざるのだ。

魔術師家系のグレインビル侯爵閣下の養女にして魔力0の少女は貴族の中でも有名だ。


 加えて年齢を考えれば陛下からの後押しがあったことは容易く推察できる。

自分の子供達に何かしら吹き込んだ親達ばかりだったろう。

例の兄妹だけでなく、やんごとない思いでからもうとする子息令嬢達。

直前の暴挙の一件もあってか王子からも護衛中ではあるが、少女に気を配るよう命令されている。

何かあればすぐに駆けつけられるよう他の近衛騎士も配慮していた。

が、全て杞憂だった。


 少女は給仕の侍女や侍従達をうまく使いつつ、菓子や軽食をサーブしたり、されたりしながら自分を狙うハイエナ達を品良くも食べ漁りながらかわしていたのだ。

小柄な体のどこに吸収されているのか興味をそそられるくらいにはガッツリ食べたと思われた時、不意に年相応の満面の笑みを浮かべた。

目前に迫った例の兄妹が2人とも頬を赤らめた。

少女はくるりと反対側に向き直り、ご機嫌な様子で会場を後にした。


 本当に9才なのだろうかと思っていれば、年相応の行動をする。

王子も少女に興味をもったのかお茶会の終了を早め、彼女の義兄がいるであろう魔術学園へと向かったと交代した部下から報告が来た。


 陛下はこうなることを予測されていたのだろうか。

不敬だが相変わらず読めないお人だと、薄ら寒く感じた。

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