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55.ギザ耳

「バゴラさんから出店のスープに使ってる調味料を置いてると聞いてうかがいました、とここの人に伝えてくれますか?」


 今年も入ってすぐに出迎えてくれたお手伝いの子供に取り次ぎをお願いする。

子供は頷くとパタパタと奥へ呼びに行ってくれた。

僕より小さな猫耳の男の子だ。

可愛いね。


 待っている間ブース内の商品を見渡すが、あっちの世界とよく似た香辛料らしき物が陳列していて心が踊る。


「いらっしゃい。

可愛らしいお客さんだ。

バゴラの店のスープはここに並べてある調味料を全て使ってるんだけど、一揃えするのかな?」


 奥から細身の柔らかい顔立ちの落ち着いた雰囲気の長身の獣人さんが出てくる。

バゴラさんより少し年上かな?

白髪赤目で同色の耳と尻尾は黒の入った虎柄だ。

僕の目線に合わせるように屈んでくれる。


 ····モフりたい····交渉して····いや、でもレイヤード義兄様から知らないお耳と尻尾には触らない約束をしているんだった····耐えろ、僕。


「あ、獣人は慣れてない?

ごめんね、怖かったかな?」


 ついつい見いって無言になってしまったので、あらぬ誤解を生んだみたい。

お耳と尻尾がヘニャリと垂れ下がる····いかん、モフりの危機!


「はっ、ごめんなさい、違います!

僕、獣人さんのお耳と尻尾が大好きなんでついつい見つめてしまいました!

こちらこそ勘違いさせてしまってごめんなさい。

もちろんそちらも一揃えしたいんですが、初めて見るので基本的な使い方を教えて下さい。

他にもコレとアレとソレも気になるので追加でお願いします」

「それなら良かった。

たくさんあるから、そこのテーブルでお茶でも飲みながら説明しようか。

まだ小さい子なのに、料理とかするの?

それともお使い?」

「調理場の料理長さん達と時々料理するんです。

毎年の商業祭で珍しい調味料を見つけたら買って帰るので、ある意味お使いですね」

「そっかぁ、えらいね。

用意するから、奥のテーブルに座って待ってて」

「はい!」


 小さい子というのに少し引っかかるけど、虎耳付きの素敵な笑顔に免じて忘れよう。


 言われた通りに行こうとして振り返ると、ちょうどブースに入ってきた背の高い人影と目が合った。


「「····」」


 しばし見つめ合う。

赤髪赤茶目に髪と同色で右耳がギザギザのお耳と尻尾は赤茶の虎柄だ。

どこかで見たぞ····どこだっけ····。


「····グレインビル?」

「····去年の商業祭で見た人?」


 ほぼ同時に呟く。


「「どうして知ってる(の)?」」


 またまた同時に呟く。

あれ、てか僕は今変装してるはず。


「あれ、2人は知り合い?」


 後ろからたくさんの香辛料の瓶とお茶を乗せた盆を持った先ほどの白いお兄さんの穏やかな声がした。

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