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486.タコ焼き映像〜ジルコミアside

「結界の中にあった時間を操る魔具が、どうなったら外にいたお前の手元に?」


 ベルヌが問えば、王女はクスリと微笑む。


 私も何度かあの魔具を見た事がある。


 初めて見たのは、ある寂れた場所。

王女はゲドグルの失くしたレプリカとは違う、鮮やかな()()の精霊石を埋めこんだ魔具()をかざして、ある魔具を直した。


 それはアドライド国王城で保管されていた魔具()だ。

霧の神殿から見つかった貴重な魔具で、調査した結果、何百年も前に壊れた、映像を記録したとされる鏡。


 あの時はイグドゥラシャ国第1王女の姿で、ふらりと私達の前に現れたんだったか。

その時私達の祖先が、王妃とルーベンスの祖先に裏切られたと聞かされた。


 当時の私達は騎士団長と副騎士団長だったから、立場を使ってベルヌと共に拝借した。


 立場に対しての矜持はあったが、元々は移民だと知っていた。

自分達が何故アドライド国に流れ着いたのか、一族も理由をはっきり言えなかった。


 騎士団に入ったのは生きる為もあったが、一族のルーツを知る為でもあった。


 そうして幾らかの葛藤を抑えて持ち出した鏡が王女によって復元され、そこに映し出されたのは私の祖父。

両親が保管していた肖像画通り、英雄と呼ばれた祖父の耳は一部欠けていた。


 他に祖父を含めた英傑と呼ばれる戦士達も映し出され、ベルヌも自身の親から譲り受けた英傑全員を集めた絵に描かれた人物達だと言った。


 ただ、あの魔具は霧の神殿で見つかった。

だとすれば壊れたのは、500年は前。

なのに英傑達やベルヌの年齢を考えても、せいぜいが300年程前ではないのかと、あの時は疑問に感じてはいたんだ。


 まさか、その謎がこんな形で解けるとは……。


 思考が鈍くなっていても、王女の話は覚えている。

色々な疑問が繋がっていくが……どう信じて良いのかまとまらない。


「そうね。

そういう意味では、そこの2人にも感謝すべきかしら。

私が目を抉り出された場所はね、グレインビル領内にある霧の神殿の周りに張った結界を張り直した直後だったから、神殿近くだったの。

結界を張り直した代償に、魔力を全て失ってしまったから抵抗できなかった」

「魔力を失った?」


 頭の中で白銀の髪がチラついて、思わず声に出していた。


 至上3人目の魔力を全く保持しない少女。

本来ならあり得ない事が、グレインビル嬢に、あの嬢ちゃんに起こっている。


『はい、タコ焼き!』


 不意に思い出したのは、嬢ちゃんが私に怒鳴られながら料理をして、満面の笑みで怒れる私へ出来上がった料理を差し出した時の光景。


 手違いであの子を誘拐してから比較的すぐに流行った食べ物。


 何がどうなったのか、イグドゥラシャ国で誘拐した時、収納魔鞄(マジックバック)ならぬ、収納魔(マジック)ポケットなんてふざけたポケットから、自前のデビパス焼きセットを取り出して焼き始めた。


 誰が食うかと、その時はゲドグルにあの子を任せてその場を離れたが、結局ゲドグルがその後に持ってきて置いてったのを仕方なく食ってやったんだ。


 まあ、美味かった。


 デビパス焼きを頑としてタコ焼きと呼ぶ意味は未だにわからないけど、まあ食べ物に罪はないし、特に薬も仕込まれてなかったから、全部食べてやった。


 そこまで思い出して、思考が完全にクリアになっている事に気づく。


「ふうん……興味深いわね。

魅了からちゃんと魅縛に変容していたのに……」


 私をしげしげと見つめながら、王女は何を呟いた?

魅了?

魅縛に変容?

そういえば王女を女王と思いこんでいた事といい、まさかコイツに魔法で魅了されていたのか?


「ジルコ」


 思わず王女を睨みつけそうになったけど、ベルヌに短く呼ばれてそちらを見やる。


 喜んだ表情はしている。

だけどそれはわざとだ。


 本心は……ベルヌが素早く2度瞬きをして、更にもう1度普通に目を閉じて開く。


 何も反応するなと言いたいらしい。


 すぐに表情を無くして、側妃を抑え直した。


「くっ」

「……まだ完全ではなかっただけ、かしら?」


 呻く側妃の方を軽く一瞥した後、王女は何かに納得したように呟いた。


 王女の得体の知れない魔力のような何かが浴びせられる。

一瞬、脳ががグラリと揺れる感覚がして、不愉快さを感じる。

が、それだけだった。


 表情をしっかりと消しながら考える。


 今にして思えば、王女と接する頻度が増えるにつれて、徐々に感情的になる事が増えた。

ずっと私達の一族をはめたアドライド国王妃と騎士団長のルーベンスを始め、アドライド国の貴族への怒りからだと思いこんでいた。


 あの嬢ちゃんにキツく当たった事には、何も思わない。

元は孤児だろうと、今は裕福な貴族だ。

それだけで嫌う理由になる。


 だけど、あそこまで当たる必要もなかったと今なら思える。


 魅了は感情が揺れるとかかりやすくなるって言うし、そのせいか?

でも変容って何だ?


「チッ、続けろ」

「下手な期待はしない事ね、ベルヌ」


 そう前置きした王女はベルヌがわざと忌々しそうにした舌打ちに、むしろ気を良くして続けた。

明けましておめでとうございます。

年末年始に風邪を引いてしまって更新が遅くなってしまってごめんなさいm(_ _)m

本年と何卒よろしくお願い致します。

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