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430.側近達と共に〜ゼストゥウェルside

「ううん。

僕も光の精霊王も、主が願ったから力を貸しただけ。

僕達精霊は、主以外に大きく心を揺さぶられない。

もちろんゼストのように時間をかけて育む情もあるけどね。

僕にはこの国への思い入れは、そもそもないんだ」

「そう、でしたか」


 父上はどこか意気消沈したように見えた。


「それより、ゼスト。

おめでとう!

良き王になって!」


 そんな父上を意に介さず、闇の精霊殿はそう言ってふわりと浮き、私の額に口づけを落とす。


 途端、突然の立太子任命や母上の件でざわついていた気持ちが落ち着いた。

どうやら今までで1番の加護を与えられたようだ。


「もしや、加護を?」

「そうだよ。

ゼストは僕の愛し子だから。

それから今代の王。

間違ってもアリアチェリーナ=グレインビルを、この国に引きこもうとはしないで」


 精霊の加護を与える場面を見たのは、恐らく初めてだったようだ。

父上は感嘆したように呟く。


 そんな父上を、しかし闇の精霊殿は冷たく一瞥する。

初めて聞いた声と表情に、どこか肝が冷える感覚を覚えた。


何故(なにゆえ)です?

かの令嬢は特に婚約者の定めもありません。

とはいえ隣国アドライド国においても、それ以外の諸国においても価値を見いだせる逸材。

虚弱故の健康上の懸念はありますが、ザルハード国内の貴族令嬢よりも、王太子妃として適任と考えるのは、王として当然かと」


 父上の顔が国王の顔へと戻る。


 しかし突然の王太子妃の話に、私はうまくついていけない。

確かにアリー嬢の自他国への影響力を考えれば、この国の王太子として婚約を、後に婚姻を望むのは悪くない。

何より彼女は幼いながらも魅力的だ。


 ヒュイルグ国の国王に幼児趣味疑惑があるのも確かだが、自国の益もあるからこそ、長年打診し続けていたと確信している。


 しかし彼女は私の師匠の妹で、長らく世話になってきたルドルフ王子の想い人である以上、私自身の都合で手に入れようと考えてはならない身の上だ。


「それでも絶対駄目。

僕も他の全ての精霊達も、人の都合であの子を振り回したり、負担をかけるのは許さないと肝に銘じておいて。

これはゼストに限らずだ。

それは誰だろうと、()()()()()()であろうと、許さない。

意味、わかるかな?」


 この国の、つまり聖フェルメシア教がもしアリー嬢をどうにかしようとするなら、それは……。


()()()()()、闇の精霊殿」


 父上は(うやうや)しく一礼する。

国王として、大義を得た瞬間だろう。


 闇の精霊殿は頷いて、扉を見やる。


「リューイ、ジャス」


 外に向かって声をかければ、後ろ手に縛り上げられた、先程の王妃付き筆頭女官を引き連れたリューイとジャスパー=コードが入って来た。

2人共、私の側近だ。


 青銀の髪と目をした、いつぞや光の精霊王により竜人だと知らされたリューイは、特に表情は変わっていない。

いつも通りのポーカーフェイスだ。


 しかし焦げ茶の髪と緑の目、褐色の肌をしたジャスパー=コードはキラキラとした目を私に向けている。


 その後ろからは、髪と目が焦茶で、褐色の肌をした父上の側近でもある宰相が続く。


「「「おめでとうございます、王太子殿下」」」


 男達3人は、声を揃えて私に一礼した。

恐らく闇の精霊殿が私達の様子を、この3人にだけは伝えていたようだ。


「王太子?!

何を言っているんです?!」


 その証拠に、今しがたまで開いていた扉付近には人の気配もなく、この女官は私の立太子任命に、驚いている。


 闇の精霊殿は用が済んだとばかりに指輪へと消えた。


「ああ、これからも頼む」


 女官は無視し、3人に返事をする。


「し、失礼ながら、光の精霊王の加護を受けし第3王子殿下はどうなさるのです!

それに教会は決して他の方の立太子を認めません!

もうじき隣国のクレインビル嬢を側室に迎える縁談も纏まります!

第3王子殿下の発言は、他国にも影響を与えるようになるのですよ!

どうかお考え直し下さい!」


 焦ったように声を張り上げる女官の言葉に、先程の闇の精霊殿の意図を明確に知った。


 父上が宰相に目配せすれば、宰相は喚き散らす女官に猿轡をかましてから退出していく。


「行け。

そして我が妃共々、無事な姿で戻れ」

「はい、絶対に。

行って参ります」


 一礼し、踵を返す。

私の側近達も、後に続いた。

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