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42.競技場から今まで~ゼストゥウェルside4

「すでにグレインビル侯爵には手紙を送ったよ。

そんなに焦ってどうしたのかな?

まだあれからそんなに経ってないよね。

それにアリアチェリーナ嬢は君が思うよりも体が弱くてね。

今の時期は体調が落ち着いているとはいっても、それは彼女なりにっていう意味であって王都への外出が短期間に続くのを心配しているようなんだ。

彼女は1度体調を崩すと持ち直すまでに時間がかかるからね」

「それなら私が直接あちらへ謝罪に····」

「それに加えて大会の際の君の発言はあまりに酷いものだっただろう?」


 笑顔の仮面を着けているその目が細くなる。


「我が国唯一の魔法技術学園の年に1度の大会だ。

関係者以外の外部の観客だっていた。

それこそ貴族、平民関係なくね。

そんな場所で魔力がないなんて言ってしまえば、彼女は奇異の目に晒されると思わなかった?

今まで顔まで知る者はほとんどいなかったのに、一部の幼女趣味な変態の目に止まりやすい美幼女だってバレちゃったね。

それに少し調べればすぐに欲しくなるような、世界史上3人目の魔力が全くない貴重な実験体かもしれないよ?

魔力過多症、魔力欠乏症で苦しむ者にとっては特にね」

「····そ、れは····」


 被せるようなギディアス殿に、私は何も言い返せない。

自分の事しか考えていなかった。


「ん?

もしかして、王位継承に近いとされる君が何も考えていないのかな?

彼女が引き取られてから、体調以外でも命の危険に晒された事なんていくらでもあるよ?

あそこは家族だけじゃなく、使用人含めて優秀だからこそ事なきを得ているだけだよ。

少し考えればわかることだし、だから彼女を気に入ってる私も弟も不必要には接触しないんだよ?

年の近い王族が気にかけてるなんて噂が広まれば困るどころの話じゃなくなるんだからね。

それに家格が侯爵家で多少劣っていても、グレインビル家の残してきた功績は公爵家よりも大きいと3つの筆頭公爵家含め、認めている。

何度も陞爵の話は出ているのに歴代の当主達が全て断ってきただけの話で、王家はいつでもそうさせたい特別な家なんだよ。

この事は王家も公にしていて周知の事実だから、少し調べればすぐにわかる事だ。

そんな家に自国だろうと他国だろうと年の近い、婚約者もいない王族が行ったらどうなると思う?

魔力のない婚約者候補として何かしら利用しようとする者達、あるいは排除しようとする者達の餌食になりかねないって思わなかった?

残念な事だけど特にこの国の貴族は魔力の少ない者を下に見る者が多いのもあってね。

この国の王太子としてそんな事は許可できないのは当然じゃないかな?」


 親しみやすい王太子の笑みを浮かべてにこにこと淀みなく話すギディアス殿の雰囲気が、ふと変わった。


「それに君の王子として、王族として奢った無自覚な考えでこの国の王家である私達の友が何よりも大事に守る家族を危険に晒し続けてまだ足りないのか?」


 その殺気に息をのんだ。

いつも顔に貼り付けている仮面の下の素顔を覗き見た気がして後ずさりそうになる。


「ま、せっかくの留学だからね。

産まれた時から王子としてしか接して貰えない自国よりも、君自身の在り方を問われる我が国で多くの事を学んで成長させる事を願っているよ。

でも留学が嫌になったら、いつでも言ってくれればいいよ」


 いつもの雰囲気に戻って、言外に国へ帰るかと問われる。


 アリアチェリーナ嬢の件は根回しが必要だからもう少し待つようにと最後通告され、側に控えていた侍従に目配せして退出を促された。


 私はもう反論する事など出来なかった。

私はそのまま重くなった足を引きずるようにしてこの国の王太子の執務室を出た。

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