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421.不穏なコラボ

「そこまでだ」


 存在感の薄かった王子が、ベルヌと押し問答していた聖騎士達にハッキリした声音で告げる。


 この聖騎士達、お部屋の中で危うく魔法を使おうとしてたからね。

僕には絶対ガード君(改)があるから問題ないけど、そこの王子や瀕死の少年はどうなっていたかわからない。


 まあエセ神官達でも防御系の魔法なら使えるだろうけど、彼らが誰をどこまで守るかはわからないものね。


 もちろんニーアやベルヌは実力差がありすぎて、論外。

むしろそんな事になれば、ニーアの方は喜んで僕以外を()()攻撃しそうだ。


「しかし……」

「どういう事か、説明せよ」


 聖騎士の1人が何か口にしようとしたけど、王子は無視。

視線をエセ神官達に向け、怒りを滲ませた声で尋ねる。


「王子、落ち着いて……」

「どういう事か、説明せよ」


 いつも通りに男性エセ神官から口を開いたけど、言い訳しようとしたのを感じ取ったのかな?


 同じ言葉で更に圧を乗せ、黙らせる。


 何だか王子っぽい。

あ、王子だったね。


「すまない、続けてくれないだろうか?

この通りだ」


 僕の方に頭を下げる。


 いつの間にかニーアがエセ神官達の方を向いて、それとなく……何で胸元のポケットに手を入れてるのかな?

何が隠されているのか、気になるけど、聞かないぞ。


 あ、エセ神官達がニーアの動きに気づいて……青くなった?

確かただの侍女だと思ってなかったかな?

何も知らずに見たら、侍女がただポケットに手を突っこんでるだけだよ?


 確か初めての時は僕共々、馬鹿にしたようなお顔を向けてたし、邪魔だからついてくるなって、当然のように言い捨ててきたんだ。


 今朝は全くニーアを見ようともしなかったよね?

ニーアは何も言わずに、当然のようについてきたにもかかわらず、だよ?


 それに前は上司であるエセ教皇がいても、ニーアとベルヌをジロジロ見て、わざとらしくそんなふざけたお顔を向けてたのに……。


 何だかおかしいな?


 ニーアの薄灰色の目を見つめれば、何でかうっとりと見つめ返されたぞ?!

ニーアは無表情がデフォルトだけど、長く付き合えば、そんな中にも心の何かしらの機微は見て取れる。


 でも……思ってた反応と違いすぎて、どう判断したらいいのかわからない?!


 ひとまず、顎でクイクイッと後ろの少年を差して、頷いてみる。


 途端にものっ凄く面倒臭そうだったのが、ものっ凄く嫌そうなお顔になって、再び手を目にかざした。

あれ、無表情なデフォルトはどこ行った?!


「礼を言う」


 僕へなのか、ニーアへなのか、はたまた両方へなのかわからないけど、王子はそう言ってから、ひたとエセ神官2人を見据えた。


 聖騎士達は戸惑いながらも、1歩後ろへ退いて、様子を窺う。


「それで、そろそろ答えたらどうなのだ?

何故、光の精霊王の加護を受けた、この国の第3王子たる私の従者が、このような惨たらしい状態に成り果てた?

加えて、この者は教会に多大な寄付をする家門の1つ、ネルシス侯爵令息だと知っての狼藉か。

私は教会で従者を預ける事には同意したが、このように傷つけるとは聞かされていない」

「それは、その……気がついた時には……」

「その者が逃げ出そうと……ですが私達は……本当に何も……」


 聖フェルメシア教にとって、光の精霊王は特別な存在だ。

その精霊王に加護を受けたと国内外にアピールしたのは他ならぬ教会だもの。

それに聖女のように取りこむには、王族であるという事が邪魔をする。


 上位神官だからと強く出られないのも当然か。

まあ、エセだし。


 それにしても、さっきから少し両眼の調子が……。


 それとなくニーアの傍に行き、背中越しに抱きつく。

もちろん目元を隠す為だよ。


「お、お嬢様」

「んー、苦戦中?」


 目は構造が特殊な器官の1つだものね。

それに元々ニーアは攻撃魔法の方が得意なんだ。

聖女のように治癒魔法特化型ではないから、時間がかかるのは仕方ないんだけど……あれ?

でもちょっと集中力も……。


「い、いえ……もっと強く抱きついて下さっても、潰れませんから」

「んふふー、ぎゅ~」


 お言葉に甘えてしっかり抱きつきつつ、陰から両眼の力を使う。


 ああ、そういう事か。

これじゃあ、治癒は難しい。


「美少女の無邪気な抱擁……」

「「……尊い……」」


 何かな?

王子と聖騎士が不穏なコラボ?

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