表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

415/491

414.イエスかノー

「嬢ちゃん、聞いていいか」


 あれからすぐにニーアが、次いでベルヌが戻ってきて、フェルはすぐにいなくなった。


 いくぶん体が軽くなり、ニーアの淹れ直した紅茶を一口飲んでほっと息を吐いた僕に、ベルヌがそう切り出す。


「何?」


 部屋は人払いしてあるし、僕の護衛も兼任するできる専属侍女、ニーアがドアの近くに控えているからね。

せっかくの高級茶葉だもの。

一緒に紅茶を楽しもうと、ベルヌに護衛は一旦休憩するよう伝えて、向かいのソファに座ってもらってるよ。


「嬢ちゃんは何でここに……まあ連中は本当なら、王都の教会本部に誘いたかったんだろうが、何で教会に足止めされてんのか、気づいてんのか?」

「そういうベルヌはどうなの?

そもそもベルヌは命令でここにいるのか、脅されてここにいるのか、自主的にここにいるのか、どれだろう。

それとも、そのどれもかな。

そろそろ話す気になった?」


 僕の些細な反応も見逃すまいとしているのか、僕をひたと見つめるベルヌを、僕も正面から見据える。


 ややもして、ため息を吐きながら、ガシガシと頭を掻いた。


「はぁ〜、ったく、どこまで気づいてんのか、聞くのが怖えな。

嬢ちゃんはあの教皇や上位神官やらを見て、どう思った?」

「普通の人、相手にするのも面倒、もう帰りたい」

「ブハッ……まあ、その通りだろう。

だが悪いな。

まだ帰すわけにはいかねえんだ」

「それは何故?」

「こっちも人質を取られてる」

「ひょろ長さんと利害関係が不一致になったかな?」

「はぁ……まあ、そんなとこだ。

ジルコを見捨てられねえ。

だが、あいつは今の場所から動けないでいる」


 自嘲しながらため息を吐きいた彼の言うジルコとは、僕が逞しさんと呼ぶピューマ属の女性だよ。

本名はジルコミア=ブディスカ。


 僕の大好きな狼属の、シルヴァイト=ルーベンス

近衛騎士団団長を心から憎んでいる。


 でもそれは彼女が元近衛騎士団副団長で、その時に何かがあったからじゃないよ。

彼らの祖父母世代からきた縁故。

それも、あの盗人が歪めた歴史が起因して起こった事。


 それを確実に知っている僕からすれば、逞しさんの逆恨みどころか、とんだお門違い。

道を歩いてたら、ヤンキーにぶつかってもないのに因縁をつけられたに等しい、由々しき事態だ。


 でもそこにはまだ触れられない。

一応その為の下準備はもうしてあるよ。


 フェルに狸聖女って呼ばれてたキティが、本当に古王として目覚めるなら、その為にもしておいて損はない下準備にも繋がるから、一石二鳥。


 まあ、ある人を呼び出すだけなんだけどね。


「だから私に確かめたいの?

でも私が何かを話す事はないってわかってるんでしょう?」


 今のところは、だけど。


「ああ、わかってる。

どのみちアドライド国の侯爵令嬢の言葉を、アイツが素直に聞くとは思ってねえ」

「ふーん……だからわざとタイミングをみて私達を会わせて、生まれるかもしれない何らかの副産物に期待してる?」


 __チャ。


 んん?!

ニーアが、小さな金属音と共に、前世の忍者が持ってそうなクナイっぽい武器構えたよ?!


「待て待て、最後まで聞けって」


 でもベルヌはそれを予想してたのか、余裕の態度で両手を上げて降参のポーズを取った。


 ニーアもそれがわかってて、音をわざと消さなかったんだよね?!

殺気がダダ漏れしてる気がしなくもないけど、わざとでしょ?!

まだいつでも投げれそうだけど、投げるつもりはないんだよね、ね?!


「それで?」


 とにかく早く話をしてしまおうと先を促す。

もちろんポーカーフェイスは崩さないけど、せっかく手に入れた、熊さんのお耳様とお尻尾様を死守せねばと、内心は焦りまくりだ。


「俺は嬢ちゃんの言葉なら信じていいって確信してる。

だからこれだけは教えてくれ。

何を知ってるのか、どうして知ってるのかは今はいい。

イエスかノーだけでいいんだ。

ルーベンスとアドライド国の王妃の血筋の奴らを、俺達が恨む事は、筋違いってやつなんだな?」


 ベルヌの言葉に、僕は静かに頷いた。


 むしろ彼らは、今は地図からも、歴史からも消えた、彼らの母国の民を救う為に動いた人達だから。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ