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363.ヘタレと引っかかり

「楽しかったわ。

こんなにも有意義な時間を過ごせたのは、これまでにもそうはなかったから」

「私もですわ」


 盤上の白と黒は半々。


 勝負は引き分けだよ。

姫様は負けか勝ちでの選択を用意したから、第3の選択をしてみたんだ。


「グレインビル侯爵家の面々に周りの方々が執着する理由がわかった気がするわ。

婚約式には……いえ、これはあなたには難しいわね」

「申し訳ありませんわ」


 僕の体調的にも、成人の儀をぶっちした身としても、絶対無理だ。

申し訳なさげなお顔でお断りしておく。


「いいの。

それよりもルドルフ王子とゼストゥウェル王子の事を聞いているかしら?」

「ルドルフ王子殿下とゼストゥウェル王子殿下?」

「ええ。

彼らの出方次第ではイグドゥラシャ国の末姫があなたに牙をむくかもしれないから、注意して」


 何の事だろう?


 情報通の艶女を見れば、何だか気の毒そうな目で僕を見ている。


 何でかな?


 首を捻ってしまう。

他の事でならわかるけど、あの2人が絡んでって言われると····うん、全くわかんないや。


 もう1度姫様を見るけど、言った張本人も苦笑してる?


「そこは何も知らされてないのね。

ヘタレなのかしら」


 ジャガンダ国にもヘタレって言葉があるの?

でも何でヘタレ?


「ヘタレには同意しますわね」


 なんて思ってたら、艶女もヘタレ発言だ。

しかも同意してる。


「ごめんなさいね、アリー。

私達の方から詳細を伝えれば、きっと2人には恨まれてしまいますの。

理由はいずれわかる日がきましてよ」

「ブルグル嬢の言う通りよ。

私の言い出した事なのに、今は教えられないのは申し訳ないけれど、とにかくイグドゥラシャ国の末姫、いえ、あの国そのものを警戒して欲しいわ」

「····わかりました?」


 ヘタレ王子達に恨まれるとか、何で?

何だかわからないけど、()()の話に飛んだから、ちょっと気が引き締まる。


 でも何でヘタレからそこに話が飛ぶのかは全くわからなくて語尾に疑問符ついちゃった。


 でももう遅い気もするな····数時間前に会っちゃったよ。


 あ、でも僕とは従兄様越しにした対面してないし、あの時隣国の第3王子も僕を平民だと言ったからバレてないのか。


 あの時第3王子は僕のバックにいる義兄様達を恐れたのをアレにバレたくないから誤魔化したんだよ、ねぇ?


 と思ってたんだけど、まさかの実はアレから庇おうとしたとかって事は····うーん、でも王子2人が絡む理由がわからないから何とも言えないなあ。


「ザルハード国の第3王子については何かお聞きになってらっしゃいますか?」


 わからない時は聞いてみるのもいいよね。

ジャガンダ国の人には僕とはまた違った情報収集ルートがあるだろうし、レイチェル様はそもそも社交界で活躍する人だから小さな噂話でも耳に入りやすいはずだ。


「第3王子····あまり学業には専念されてらっしゃらないようですわね。

学園ではその王女とよく共にいるとか。

何でも悋気を起こしやすくて王女がどなたかと仲良くされるのを極端に邪魔するとお聞きした事がありましてよ?」

「ジャガンダ国の私の耳にはあまり····」

「左様ですのね」

「何か気になる事がありますの?」

「いえ····ただ····」


 あ、れ?

何か引っかかるぞ?


 僕は何かを見落としてる?

それとも何かを思い違いしてる?


「第1王子と第3王子の仲はいかがです?」

「そうですわねえ、私が在学中は特に····ああ、でも入学したばかりの頃よりは歩み寄りが····でも例の王女が入学してからは結局元に戻ったようでしてよ?

第3王子の王女への独占欲が特に強いと、最近では噂を時々耳にしますもの。

入学したばかりの頃は他の学生も中途入学の王女が珍しいのか、王女自身が市井の出で気安い性格だったのか、学園で声をかける生徒もいたのに、最近では遠巻きにされてしまっているとか」


 さすが社交界の花だけあって、よく知ってるね。


「今は春休みに入りましたから、この領にもお付きの者達といらしているようでしてよ?

でも悪目立ちしていると噂が····」


 悪目立ち····まああんな風に騒いだら、ねえ。


「この領には何故?」

「第1王子への偵察では?

ザルハード国はまだ立太子していないのでしょう?

この国の王太子やルドルフ王子のように兄弟仲が良いならまだしも····でも、何か不自然かしら?」

「まあ、何か気になりまして?」


 姫様と艶女の会話を聞きつつ、僕も自分の中にある違和感に集中する。


「第1王子はこの領と自国の関係を改善させる為にここへ足繁く通っているでしょう?

それが立太子を望む第3王子としては気に入らない。

それなら何かしら第1王子に直接干渉するなり、領民を攻撃すなりして邪魔をすれば良いのに、実際はただこの領にきて無駄に騒いで悪目立ちするだけ。

それって自分の首を絞めているだけで無意味じゃないかしら」

「それも····そうですわね?」


 姫様に相槌を打ちつつ、ふとあの時の第3王子達の様子を思い出した。

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