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310.夏のクラシックケーキ

「うわあ、このケーキはクラシックシリーズ?

とっても華やかで涼しげだけど、これはいつもの春用なの?」


 クッキーは違うけど、他はもちろん従兄様のカフェで出す商品みたい。


 義父様の隣に座ってまず目に入ったのは、テーブルに置かれた義父様の手の平より少し大きいホールケーキが1つ。

下は白のムース生地、上は透明の2層の寒天ゼリーだね。

層の間に何種類かの青い花びらが入っていて、小さなお花畑みたい。

白をバックに青基調に見える涼しげなケーキだ。


 それからあちらの世界ではエディブルフラワーとも言うんだけど、いわゆる食用に育てられた食べられるお花を卵白とお砂糖でシュガーコートした可愛らしい小花達。

僕の手の平くらいの可愛らしい硝子製の容器に入っているね。


 そしてクッキー。

これは従兄様のお母さんで、僕にとっては義理の伯母様の手作りクッキーだよ。

美味しいんだ。

いつもの白い小袋に入ったそれは、上をリボンで結ばれたままテーブルセッティングされている。


「さすがアリー!

気づいてくれた?

春のクラシックシリーズは抹茶とアリリアを使ったケーキで定番化するんだけどね。

今年は少し趣向を変えて4つの季節をイメージしたケーキをクラシックシリーズとして販売するんだ。

これは夏のシーズン用!」


 ふわあ!

その得意げなお顔は義母様に似てる!

大好きなやつだ!


 義母様を今なお深く愛している義父様も何だか目元がちょっぴり綻んだ。


「毎年春夏と秋冬に分けて2種のケーキを販売していただろう?

でもチョコレートのクラシックケーキは毎回お客に要望されるくらい不動の人気でね。

だから1種類はこれを季節を問わず販売する事にして、もう1種類を季節毎に4回チェンジしようかなって」


 にこにこと従兄様が説明してくれる。

新たな挑戦は大事だね!


 僕もふんふんと頷く。


「これは夏用だから、アリーが教えてくれた食べられる花の中から青系統の花びらに統一して、花畑をイメージして作ってある。

下のミルクムースの上に食感を損なわない程度に花びらを散らせて、その上から砂糖水に酸味のある柑橘果汁を搾った寒天で固めたんだ。

その隣にあるのは、教えてもらった方法で食用花をシュガーコートしたやつだよ」


 うんうん、層の中間に花びらだけを使う事で食感の違和感を少なくしつつ、白いミルク層をバックに青い花びらを散らせたように並べる事で、色も強調されてシンプルだけれど可愛らしさも感じるね。

上の層は透明度があるから、まるで硝子のショーケース越しに青い花弁が舞ってるみたい。


「お嬢様、失礼します」

「ありがとう、セバスチャン」


 できる執事長のセバスチャンが温かいストレートティーを僕の前に置いてくれた。


 お礼を言って少し冷えた体に一口流せば、ほうっと安堵のようなため息が漏れる。


 途端に睡魔が軽く襲ってくるけど、無視してカップを置いた。


 ケーキのお皿を両手で持ってあらゆる角度から観察する。


「とっても綺麗。

このお花、使う前にお湯をかけたの?

色が鮮やかなままだ」

「うん。

衛生面と食感、色落ちを考えてね」


 なるほど、なるほど。


 頷きながら、ケーキの横に置かれたデザート包丁を手に取って8等分すれば、タイミング良くセバスチャンが差し出した小皿に乗せる。


 セバスチャン、相変わらずできる執事。


 切り分けるのは僕と従兄様の二切れだけだよ。

義父様は甘い物が苦手だから食べないんだ。


 小皿を持って断面も観察してからフォークを手にしてパクリ。


 それを待って従兄様もパクリとする。


「冷たくて美味しい!

味も夏らしい!

んー、でもこの花びらが少し味気ないのかな?

あ、ねえ、従兄様」

「なになに?」


 従兄様ってば、そのお顔でそんなに期待した熱い眼差しを向けられると照れちゃうよ。


「「チッ」」


 トントン。


 ん?

今ノック音に混ざって何か聞こえた?


 義父様を見れば、凛々しくも慈愛の眼差しで微笑まれる。


 はて?


 小首を傾げてしまう。


 気のせいかな?

横と後ろから聞こえた気がするけど、きょろきょろしても義父様とセバスチャンしかいないし。


「叔父上、セバス····」


 顔を引き攣らせた従兄様が小皿とフォーク片手に腰を浮かせているけど、どうしたんだろう?

お行儀悪いよ?


 と思っていたら、セバスチャンがドアを開けて両手でトレーを持ったニーアを招き入れた。


「失礼します」


 あ、トレーに乗ったコップを見て従兄様が途端に目を輝かせた。


 ころころと表情が変わる所は伯父様に似ているね。


「まずは薄黄色の、コリンの特製果実水から飲んでみて」


 ニーアが僕達3人の前に2つずつコップを置いて行く。

もちろん従兄様の前にだけ蜂蜜の入った小さな器を置くのも忘れない。


「これこれ!

んー、このシュワッてした感じ!」


 従兄様ってば、子供みたいにはしゃいでる。


「お好みで従兄様は蜂蜜も試してみて」

「もちろん!」


 半分ほど飲んだところで蜂蜜を足してとってもご満悦だ。


「私にはやはり少し甘いかな。

口にした時のこの独特の感覚は面白いんだけどね」

「ふふふ、そうだと思った」


 予想通り一口で難色を示す義父様が何だか可愛い。

義父様の舌は大人なんだ。


「じゃあそっちのラペ色の方を飲んでみて?」


 ラペは葡萄の事。

こっちも甘いんだけど、気に入ってくれるかな?


 従兄様と義父様がコクリと飲んだ。

新章始まりました。

お休みの間もブクマや評価をいただき大変喜んでおりますm(_ _)m

お休みの間も応援いただいたささやかなお礼の気持ちで2日連続2話更新してきましたが、いかがでしたでしょうか。

明日からはなるべく午前中に1話ずつ、なるべく毎日投稿しようと思っています。

よろしければ今後ともお付き合い下さい。


同時進行中の下の作品も有り難い事に恋愛部門に何度かランクインするようになりました。

1話1600文字程度のお話なので、サラッと読める仕様です。

これまでは毎朝投稿していましたが、これからしばらくはお昼過ぎくらいの投稿が増えると思います。

【稀代の悪女と呼ばれた天才魔法師は天才と魔法を淑女の微笑みでひた隠す〜だって無才無能の方が何かとお得でしょ?】

https://ncode.syosetu.com/n0481hq/

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