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30.少女の謎~ギディアスside2

「本当に惜しい」


 残り3名のトーナメント戦を観戦しながら、ありし日の私と共に学園生活を送ったバルトスを想って口をつく。


 ちなみに今年の優勝者は5年生のペルジア=アボットだ。

ルドルフは準優勝、3位はアルノルド=ブルグルとなった。


 私達も数年前までこの大会に学生として参加していた。

そして5年間バルトスは優勝を逃さなかった。

私がどれだけ魔術や剣術の腕を磨いても、競技場が吹き飛んでも、氷漬けになっても彼は涼しい顔で優勝した。


 普段はいかにして楽に学園生活を送るかしか考えなかった彼だが、今は亡き侯爵夫人との優勝の約束だけは真面目に守った。

それを聞いた時、彼の自宅で何度かお会いした夫人にバルトスの生徒会入りを説得してもらえば良かったと心底残念に思ったのは秘密だ。


 長い付き合いの中で彼の才能は純粋に称賛すると同時に、妬ましく思った時期も勿論あった。

しかし彼は幼い頃より辺境の地で魔獣や隣国との小競り合いで実力を磨き、入学当初から冒険者ギルドで命懸けの高難度の依頼を引き受けてA級冒険者としての地位を15才で獲得。

(余談だが現在16才となる彼の実弟のレイヤードも先日A級冒険者となったらしい。)

卒業前から父親の侯爵の引退準備の穴埋めに王都魔術師団で仮所属して危険な魔獣討伐や警護を引き受けていた。

命の危険のない訓練しかしていない私が羨む資格などそもそもなかったのだ。


 そして私は16才からずっとバルトスを側近に望み続けている。

しかしどれだけ側近に望んでも、彼は頑として拒否した。

というか現在進行形で拒否され続けている。

何なら週1くらいで毎回拒否されている。

それでも王都魔術師団ではなく王宮魔術師団で働いているのは彼なりに義理を立てての事だから、共に過ごした時間は無駄ではないと思う。

恐らくルドルフにとってのレイヤードもそうだし、父上にとってのグレインビル侯爵も同じだ。

侯爵夫人が病に倒れた時に宮廷医を派遣したのも実は父上だった。


 まさかその宮廷医から、あの虚弱体質過ぎる少女がいかに優れた未知の知識を持っているのか聞かされるとは思わなかったが。

本来なら夫人の病はもっと早く発症し進行も早く、発作が何度も襲うものだった。

だが彼女の手によって早くから管理され、進行も緩やかになっていた。

5才の子供が一度で心臓を止めかねない発作を抑える薬まで作っているようだと聞いた時には耳を疑ったが、薬は宮廷医と私がたまたま夫人の発作の場面に出くわした時にそれらしい物を目視しただけで実物は得られなかった。


 あの優秀すぎる兄弟が必ず母娘の側から離れず、彼女に声をかけようにもあと少しのところで毎回邪魔をしたのだ。

まぁあの子が小さいくせに逃げ足が異様に早いのもあったのだけれど。

いや、小さいからちょこまかできたのか?

他にもグレインビル領の特産品や特許制度等、彼女の介在が疑われる事がいくつもある。

どれも確信は得られないままだ。


 だからこそ父上と宰相はルドルフのお茶会に少女を強制参加させた。

会ったことはなくとも国家間で他国の姫君と婚約している私と違い、ルドルフにはまだ婚約者がいない。

うまく繋がれば少女の謎が少しでも紐解けるかもしれないし、体が弱くとも優秀な頭脳と中立派を保つグレインビル家の後ろ楯は王家にとって価値がある。


 断固拒否する侯爵には拝み倒して泣き落としまでしたらしい。

ちょっとその光景を見てみたかったような気がするが、人払いされていた。

····素の父上はかなりお茶目でルドルフと少し似ていて甘え上手だし、父上と侯爵の仲だから良いのだろう。

そうでなければあの侯爵が愛娘の事で折れるはずがない。

お茶会の結果はブルグル公爵家のせいで芳しくなかったが、ルドルフやマルスイードの話を聞く限りどのみち少女はルドルフにも王家にも関わらずを貫くだろう。


 グレインビル家の人間は才能に溢れ、権力や地位には少しも興味がないし、むしろ距離を置く。

けれど父上や私達兄弟にグレインビル一家は少なからず情をかけているように思う。

だから私達王家は彼らを手放し難く、側に欲しい一方通行の想いを抱くのだ。

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