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29.少女の謎~ギディアスside1

「くくっ、ふっ、ふふふ····」

「····ギディアス殿下」

「す、すまない、っくふっ」


 隣の呆れた目をした宰相に咎められたが、なかなか笑いが止まらない。

グレインビル一家が目立つだけ目立って去って行った。

まるで嵐のようだ。


 広く知れ渡っているようにグレインビル家は実力派魔術師家系だが、ぶっちゃけ剣術だって騎士顔負けなのだ。

かつては魔獣蔓延る辺境の土地、そしてそれが落ち着けば隣国との紛争地帯となった土地だ。

そんな土地を代々治め、今のように栄えある領土と呼べる土地にしてきた実力は伊達ではない。

だからこそあの神殿の監督管理も一任されていた。


 レイヤードの落雷の魔法も普通なら即死レベルだったが、同時に高難度の上級治癒魔法を使って瞬時に軽症まで治した。

彼の父兄を除けば後ろに控える王宮魔術師団団長くらいしか気付いていないだろう。

当然宰相も気付いていない。

恐らくやられた本人すらわかっていないはずだ。

いくら学園の生徒であっても一国の王子に使う魔法ではないが、すでに証拠は失われている。


 昨年のお茶会の時のブルグル家に対してもそうだったが、あの養女が絡むと彼等は本当に容赦がない。

私も怖くておいそれとちょっかいなどかけられない。


 あぁ、あの王子の護衛は気付いていたかな。

全く顔色は変わっていなかったが、軽症にしか見えなかったにも関わらずレイヤードと同じ上級治癒魔法をかけようとしていた。

長身で細身だが鍛えた体をした青銀髪に同色の目が印象的だ。

一見人属のような外見の彼は獣人だろう。


 にしてもあの靄は何なのか。


 今日は何度か競技場を挟んで貴賓席の前の保護者席にいたバルトスの方をつい見てしまっていたのだが、あの時少女の呟きを読唇術で拾ってしまった。


"んー····黒い靄····あぁ、そっか····"


 養女になる前の素性も、あり得ない程の高度な知識を有しているだろう事も、今日のあの呟きも、謎が多すぎる。

あの父兄を知る私からすれば、ある意味では彼女もグレインビルらしい。

家族である彼らはそんな義妹の秘密を知っているようだが、絶対に口を割らない。

これまで秘密裏に何度も調べようとしたが全く掴めなかった。


 それにしても魔力が無くても靄が見えるのには驚いたが、それをあの王子が気付き、行動に移してしまったのには頭が痛くなる。

年齢なりの好奇心と行動力だろうが今回の言動は王族らしからぬ浅はかとしか言えない行動だ。

しかしそれほど靄が重要な存在でもあるように見えた。

仮にもあの王子は数年以内には隣国の王太子として立太子すると噂に聞いている。

愚かしいとは思うが、彼の祖国の現状を知る身としてはただの愚か者とも考え難くなる。


 どちらにしてもレイヤードがさっさと棄権したのは注意を自分に引き付ける意味もあったのだろう。

父兄も彼らを追ってすぐに姿を消した。


 レイヤードのあの雷撃は一国の王子を使った周囲への警告でもある。

彼等の義妹に手を出せば間違いなく誰であろうが痛手を負わせるという。


 今回うちの可愛い弟は隙あらば少女に会おうと画策していただけにさぞ残念だろうが、しばらく彼女は自領から出てこないだろうな。


 余談だがこのせいでまたド直球に妹が欲しいアピールしないか心配だ。

私達の両親ではあるが、あの2人は仮にも一国の国王と王妃なのだ。

まぁ父上はまんざらでも無さそうな顔をしていたが、やはり母上の年齢的な負担は考えるべきだろう。


 話は戻るが昔からグレインビルの男達は懐に入れた子女を過保護なまでに庇護しようとするのだ。

少なくとも彼らの祖父も妻や息女にはそうだったと父上から聞いているが、グレインビルの女は血縁関係なく短命が多いからかもしれない。

あの兄弟と血の繋がった生後半年程だった妹も母親もそうだった。

血縁関係はないあの銀髪の義妹も病弱で何度か生死の境をさ迷っているが、果たしてどこまで生きられるのだろうか。

私としては何年も側近の誘いをかけ続けては断られるあの友の為にも末永く、願わくば健やかに長生きしてもらいたいものだ。

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