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秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中
7章―2

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265.悋気とつれなさと爆弾〜エヴィンside

「まあその日から明らかに死者が激減したんだからあんな気色悪い見た目でも文句はねえさ」

「ゴードンさん達は少し気の毒だったけどね。

膀胱の方は多少使い回せたけど、羽根は····」

「あー、まあ鳥属にとっちゃ羽根は矜持ってとこがあるからなあ」


 バツが悪そうに口ごもる愛しの化け物と2人してあの時の鳥属達の涙目が頭を過っちまったみたいだ。

当時の気の毒さを思い出す。


 今じゃ知れ渡ってる無類の獣人の耳や尻尾好きな愛しの化け物は、表情が乏しかった当時ですら申し訳無さそうな顔をしていた。

そこに関してはよほど幼心を痛めていたんだろう。


 にしても人を一瞬で炭化させたあの男の所業には何の感慨も示さない冷たい目を向けていただけだったり、俺達への感情のように許せなければ救える命を救わない選択を素でやるんだが、獣人には人らしい感情を向けるんだよな。


 幼児の頃からこいつの倫理観は歪んでいたのをこういう時に不意に感じちまう。


 ま、こいつの事をとやかくなんて言えた義理はねえか。

それに歪んでても俺は一向に構わねえ。


「今はこうしてお前が作ったのを使えてるし、問題ねえだろ」

「まあね。

でもこれも含めて手術に関する事を他言するのも、今後何かしらの病気でも頼る事すら許さないから。

もちろん手術する旅人さんの事を詮索するのもね。

約束は守らないと、後であの赤髪の彼にお仕置きしてもらうんだから」


 可愛い顔してても、ちゃっかり釘を刺してきやがる。


「ああ、わかってる。

お前は医者になりたいわけじゃねえ事も、知識を人命の為に優先して使いたい性格じゃねえ事も、今回ラスティンに手を差し伸べてくれたのがお前の気まぐれな事も、全部理解してるさ。

あの男のお仕置きだけはマジで勘弁だ。

俺じゃねえ誰かが見せしめに炭になる未来しか見えねえ。

こっちはお前らの性格の悪さもよく理解してんだ。

肝に銘じるさ」

「君が約束を守ればお仕置きなんてないでしょ。

手を差し伸べたからって、君のお兄さんが必ず助かるとは限らない事も忘れないようにね」


 追加で痛い所を突いてきやがる。


 そうだな。

手術は3週間後だ。

状態が悪化すれば中止。

手術中に死んじまう可能性も高い。


「わかってるさ。

ついでにお前の出した条件も忘れてねえよ」

「それは当然。

でもあの件は帰る時でもういいよ。

誘拐犯の彼らもここにいる間は今さら僕に手出ししないだろうし、帰ったら邸からしばらく出ないもの」

「誘拐犯と直接話して何か気づいたのか?」

「ふん。

一々そいつに話す必要はないでしょ、僕の可愛いアリー」

「もちろん!」


 何かしら気づいたのかと探りを入れようとしたが、そこはこの次兄にぴしゃりと拒否された。

一応国王なのにそいつ呼ばわりだし、明るく肯定する愛しの化け物に軽く傷つくぞ。


 まああの時家族の中でこの次兄だけが邸にいてあんな事になったんだ。

しかもそのせいで可愛い妹は心に何かしらの負の感情を抱えてそれをずっと膨らまし続けた。

グレインビル侯爵一家の中じゃ愛しの化け物に次いでこの兄の恨みを多大に買ってるのは間違いねえか。


 心の重荷をいくらか下ろした今の化け物を見ていればわかる。

傍目には変化がないようでいて、自分の心に素直になった。


『それにあの時の君が····よりによってあの時の彼に似ていた、から····』


 しかも初めて見せたあの顔。

ムササビの顔でもわかるくらいに強烈で複雑そうな····誰かへの思慕。

兄達とのイチャイチャを見ても生まれなかった悋気が胸中で暴れそうになった。

お前にあんな顔をさせるのは一体誰だよ?


 ついため息が漏れちまった。


「頼まれていた誘拐犯達の裏にいる者と今自国の学園に通ってる王女の身辺調査の報告はもう手元にあるから、必要ならいつでも言え。

なあ、やっぱこのままこの国の王妃にならねえ?」

「「却下」」

「はぁ。

息ぴったりだな」

「んふふ、でしょ?

ねー」

「ねー。

その発言はあくまで僕の可愛いアリーを心配しての事だろうから聞かなかった事にしてあげるよ。

ねー」

「ねー」


 そう言うと愛しの化け物は再び兄の首に抱きついた。


 些か面白くはない。


 幼児としては違和感しかねえ冷え冷えする眼差しやら殺気やら向けて、一国の王すら言い負かして思い通りに持って行った化け物が、まさかここまでの無類のブラコン(兄馬鹿)だったなんて、あの時は予想もしてなかったな。


「そろそろいいかな」


 そう思っていれば、愛しの化け物は兄の膝から降りて袋の様子を確かめ、手際よく紐や針を腕から外す。


「じゃ、帰りも転移で出て行ってね」

「つれねえな」

「まだ事後処理と今回のアドライド国の王太子滞在のすり合わせもあるでしょ。

あ、手術にはバルトス義兄様も必要だからちゃんと向こうに大義名分与えておいてね」

「は?!

こいつに執心する王子より、長兄になにかしら執着する王太子のが面倒なんだぞ?

手術の事も秘密裏にすんのが大変じゃねえか」

「んー、頑張れ?」

「他人事かよ····」


 去り際に爆弾落とすのは止めて欲しい。

あの愛しの化け物が望まねえばれ方してあの男に消し炭にされないように祈ろう。

本日2話投稿しています

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