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秘密多め令嬢の自由でデンジャラスな生活〜魔力0、超虚弱体質、たまに白い獣で大冒険して、溺愛されてる話  作者: 嵐華子@【稀代の悪女】複数重版&4巻販売中
7章―1

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227.義兄妹での婚姻事情と殺伐とした会話〜ルドルフside

「あははっ。

しかも私達に向けて放たれた刺客も引き連れてグレインビル邸に行っちゃったからね。

改めてあの時はすまなかったね」


 全くすまなそうに見えない大公は背後にブリザードを背負っていそうなレイに続ける。


 心の妹は時々身じろぎしてはレイが背中をトントンとしてやると、じきにその胸に耳を押し当てるようにして眠る。


 心の妹の体格は小さいし、レイは逆にここ数年で父や兄のような青年らしい体つきになったのもあって、心の妹がより幼く見えてしまう。


 これであの耳つきフードを被られたら、間違いなくレイからひったくって俺がトントンしたくなりそうだ。


「でも全員生け捕りにしてくれたお陰で立太子を有利に進められたから助かった。

使用人も含めてグレインビル家は恐ろしいなって改めて認識したよ」

「代わりにアリーには更に底辺まで嫌われたようだけど?」

「そうだね。

私達全員への視線がゴミ屑から生ゴミを見るような目に変わったし、まだ発音がしっかりしてない幼児言葉でお断りよ、の一言だけ残してそのままトテトテ出て行って自室から出てこなくなったからね」


 よっぽどだな?!

明るく朗らかに言ってるが、内容はえぐいだろう?!


 そして想像すると幼児な心の妹も可愛らしいな!


「そちらの勝手で押しかけてきただけだし、そもそもアリーは()()()()()()生死の境を彷徨った後でまだ熱も高い時だ。

たまたま母上に抱っこされてて一目会えただけでも、ありがたいと思うべきだよ」


 大公達のせい、か。

やはり()()()()()なのか?


 グレインビル領が我が国にとって如何に国防の要として重要な場所で、代々の領主一家がどれほど多くの犠牲を払い、貢献してくれていたかを改めて実感する。


「弟が王太子になった時は先ぶれもちゃんと出したよ?

だけど1度も顔を出さなかったみたいだし、あれは弟も戻って来てからしばらくしょげてたんだ」

「当日の1時間前に届いた先ぶれは先ぶれなんて言わないよ。

それにあの時も熱を出してたからね。

僕達家族も具合の悪い幼児の気分を更に害する人間に会わせるはずがないでしょ。

今回だって君が耳と尻尾付きだったり、よちよち歩きの子供なんて餌を連れて来なければ、アリーがここに来る事なんてなかったのに。

そもそも倒れるなら他所でやって欲しかったよ」


 ん?

倒れる?

何の話だ?


「あはは。

グレインビル嬢の獣人の耳と尻尾好きは私の領にも噂になっててね。

それに下の子はまだ1才になりたてで人属らしい外見してても庇護欲そそる時期だったし。

グレインビル嬢がこれまでみたいに部屋に籠もっても、あの子達をけしかけたら出てくるかもしれないっていうのを計算してたのは認めるよ。

ほら、うちの子供達は特に可愛い部類に入るだろう」

「親ばかだね。

アリーの方がずっと可愛いよ」

「君こそシスコンじゃない。

でもあの時私が倒れたのは偶然だよ?

うちの子供達が泣き叫ばなかったら、きっとグレインビル嬢も助けてくれなかったんだろうね」


 大公の言葉に慌てる。

そんな話は初耳だ。


「待ってくれ。

大公はグレインビル領で倒れたのか?」

「そうだよ。

外で倒れてくれれば邸にいたアリーはそもそも間に合わなかっただろうし、残念でならないよ」

「あはは。

私は幸運だったと思ってるよ。

それにしても今日はたくさん話してくれてるね」

「アリーは僕の声が好きだからね。

ずっと僕の胸に耳をすり寄せてる時は子守歌代わりにしてる時なんだ」

「シスコンにブラコンだね。

弟が見たら嫉妬しそうだ」


 俺の、というか俺達3人の存在はほぼ無視して話しているが、何となくレイの顔が勝ち誇ったように見える。


「彼には一生無縁な行為だろうね」

「そうだね。

それにしてもそうしてるとまるで恋人のようにも見えるよ。

君達血は繋がってないけど、もしかしてそういう関係もありえるの?」

「どういう意味かな?」


 はっ!

それはここ数日の俺が1番気になってる話じゃないのか?!


 思わず身を乗り出しそうになるのを堪え、平静を装いながらも耳はしっかりと2人に向け、聞き逃すまいと静かにする。


「いずれ婚姻する予定なのかなって」

「それはないね。

もちろん場合によってはそうなる事は否定しないけど」

「例えば意に沿わない婚姻を強制されたり、とか?」

「そう、貴族である以上ね。

アリーが望まない婚姻をさせられそうになったら、僕か兄上と婚姻を結ぶ可能性は否定しないよ」

「それって男女の関係にはならない、いわゆる白い結婚?」

「さあ?

アリーが子供を望むならまた変わるかもしれないし、僕と兄上に婚姻したいと思えるほどの女性が現れるかどうかでも変わる」

「君達兄弟は義妹を抱けるのかい?」


 ド直球だな、大公。

だが、そこは俺だってぜひ聞きたい!


「その気になってもならなくても、そういうのは男だからどうとでもなるでしょう。

興奮する方法なんて世の中にいくらでもあるんだから」


 そ、それは····まあ確かに明け透けに話すには内容がどうかと思いながらも、正論だとは思う。


「ただ全ては僕達や婚姻に関わる状況と、何よりもアリー次第だ。

でもね、アリーの絶対的1番は母上だよ」

「どういう意味だい?」

「母上の息子である僕と兄上を縛る事をアリーは絶対に望まないだろうね」

「つまり、義理の兄妹間での婚姻の可能性は限りなく低いと?」

「そういう事」


 レイの断言にどこかほっとする。

そしてそんな自分にいささか驚く。


「それとアリー自身が望まなければどんな婚姻もどうとでも回避すると思うよ。

限りなく王位から遠い辺境の王子が王位を継承する事が可能な世の中だ。

君の弟なら実感してるんじゃない?

だからどこぞの国王は表立った婚約を打診した事がないんだと思うよ。

そういう勘は腹が立つほどよく働くタイプだよね」

「弟もそれなりに死線を潜ってきたからね。

しかし、なるほど。

手強いな」


 大公が何事かを思案する。


「死ぬ前に何かしらのお節介をしようとしてるなら、アリーにあらゆる可能性について止めを刺されて終わるだろうからやってみるといいよ」


 レイが余裕のある笑みを浮かべる。

まるでやってくれと言わんばかりな態度に大公が鼻白む。


「····なるほど。

止めておいた方が賢明なようだ。

私が死ぬ前に1つくらい弟の望む幸せをと思ってたんだけどね」

「残念。

その時が来たら大人しく死ぬんだね」

「相変わらずグレインビルは清々しいほどに容赦がないなあ」


 何だ、この殺伐とした会話。

俺の知りたかった事が知れたが、別に疑問と謎が深まるばかりだ。


 後ろの2人からも困惑した視線を後頭部に感じまくってるぞ。

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