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168.俺様~バルトスside

「兄貴、連れて来た」

「ありがとう、バゴラ。

レイヤード殿は?」


 ひとまず大人しくなった頭の悪そうな小僧達の言った通り、手伝いの子供達は奥の休憩スペースにいたみたいだな。

黄虎が1人抱えて2人の幼児の手を引き、頭悪そうな2人の横をすり抜けて白虎の隣にやってきた。


「それが、入り口の手前で出くわしてボタンをバルトス様に渡すように言ったらどっか行っちまった。

バルトス様もどっか行ったみたいだし、どうすりゃいい、兄貴?」


 な、何だと?!

レイヤードめ、抜け駆けか!!

相変わらず俺の姿が見えていないみたいだな。

これは今すぐ追い····。


「おい、待て!

リリは、リリーシェはどうした?!」

「は?!

あのまマセガ、じゃねえ、お嬢さんこいつらといたのか?!」


 今絶対黄虎はマセガキって言おうとしたな。

頭悪そうな自称王子の後ろで突っ立ってる橙頭の小僧が睨んでるぞ。


 マセガキ発言にこいつらの知り合いっていう時点で嫌な予感がする。

その手の<性別・女>に昔から拒絶反応が激しいレイヤードが雷撃していない事を願うばかりだ。


 まあしてたらしてたで隠蔽するか。

そういえばボタンがどうとか言ってたな。


 黄虎の言葉にまずは2人の幼児達が反応して激しく泣き出し、虎の抱えた羊属の少年も怯えた顔つきになる。


 マセガキ、一体何やらかした?


「ふっ、うっ、あのお姉さん、お兄ちゃんを叩こうとしたのっ」

「土下座しろってお兄ちゃんに迫ったっ」


 男女の幼児が嗚咽の合間に告げ口する。

白い兎の耳と丸い尻尾の女児か····あの冬の日の天使の勝利だな。

約束を守って羞恥で赤い顔をしたうちの天使の可愛いさはまさに暴力的だった。

隣の犬コロ幼児は論外だ。


「あのお兄さんが、止めて、くれた。

かっこ良かった。

頭撫でてくれたんだ」


 レイヤード、確かにあの涙目の羊少年の頭は触り心地が良さそうだな。

このまま俺の天使じゃなく浮気相手(羊少年)にもふりの鞍替えをしないだろうか。


「おい、リリに何をした?!

見てこい」

「はい!」


 橙頭が慌てたように奥へ向かった。


「リリ、いや、リリーシェ=ハンソン伯爵令嬢は俺様の婚約者にして留学後は我が国の教会が聖女と認める予定の聖女候補だ。

危害を加えられていた場合、それ相応の対処をする」


 ····ぶはっ。


「何だ?」


 おっと、いかん。


 転移で俺様の後方へ移動する。

今ので白虎が気づいたな。

虎兄弟の耳がぴこぴこ動いてるが、こっちに耳を向けてるのは白虎だ。


 というか、俺様?!

アリーがたまに読んでる小説でも最近はそんな表現ないぞ?!

一昔前にちょろっと流行ったくらいじゃなかったか?

何だ、俺様って?!

誰か今度流行らせてくれ!


「殿下!

リリが倒れていました!」


 頭悪そうな橙頭が類友っぽい女を横抱きにして連れてきた。


「殿下ぁ、怖くて動けなくなってしまいましたの。

立てなくさせられた上に醜い聖女って暴言まで吐かれましたわ!

あそこの坊やの傷を治そうとしただけですのに」


 目を潤ませて甘えた口調で訴えるが、嘘臭い。

羊少年がビクッと肩を震わせて黄虎にしがみついてるぞ。


「おい、獣人ごときが私の婚約者に何をしてくれた?!

光の精霊王様に選ばれた俺様と、治癒魔法の力に優れた聖女とうたわれる心優しい俺様の婚約者だぞ!」


 俺様の目は節穴か?

羊少年の様子を見てみろ。

それに黄虎に食ってかかるが、そもそも見当違いだろう。

間違いなく何かしてるならレイヤードだ。


 それより羊少年の傷はレイヤードが治したって事か?

レイヤードよ、浮気相手候補だからな。

 

「違いますの、エリュウ様。

私に無礼を働いたのは、そのような獣臭い獣人ではありませんわ」


 第3王子は確かエリュシウェル····それでエリュウか。

心優しい聖女の割りに獣人差別が酷い。


「ならば誰がリリを傷つけたのですか?!

心優しいリリを襲うなんて、恥知らずな!」


 いやいや、橙頭、そこの俺様発言こそ恥ずかしいって気づけよ。


「金髪に情熱的な紅の目をした背の高い凛々しい面立ちの男性ですわ。

もちろん人属ですし、何か誤解があったんだと思いますの。

品がありましたし、貴族であれば直接謝罪してくれれば許しますわ」

「ふっ、俺様のリリーシェ、リリ。

お前は優しいな。

そこの獣、その男はここの関係者だろう。

何者だ」


 そういえば第3王子の婚約者には絶対会うな、特に2人きりは避けろと釘を刺されていたな。

20代の顔の良い王宮勤めの高位貴族は軒並み絡まれないようにと数ヶ月前に注意喚起された。

学園でもその手のもめ事があったと聞いたが、このマセガキが元凶か?


 ふっ、性格も論外だが、この程度の顔の造りでは俺の天使には到底及ばないぞ。

そこの俺様の節穴だらけの目に止まらないういうちにさっさと天使と合流しなければ。


「存じませんね」


 白虎がにこりと微笑んで答える。


「そもそも私達は共に話していましたが、奥の休憩スペースへはあなた方の横を通って行かなければ入れませんよ?

それに金髪に紅い目の男性という特徴だけではどなたの事か特定しかねます」

「隠し立てするか。

獣人ごときに舐められたものだ。

お前達は我が国の貴族であり、ザルハード国第3王子の婚約者に危害を加えた。

よって粛清する」


 言い終わるとパチンと指を鳴らす。

俺様の周りに光の玉が浮かび上がり、光の矢へと変わった。

左手を上げると手首を虎兄弟や子供達に向かってくいっと曲げる。

すると光の矢が彼らへと放たれた。


 ····何だ、ただの魔具か。


 俺様の手首のブレスレットに仕込みを入れてるみたいだが、もちろん氷の壁を作って防いでやる。


「な、防いだ?!」


 ····驚くのはこっちだ。


 威力低すぎだろう?!

レイヤード作、天使命名《バッチ来い電撃君》の方がよっぽど威力が、というか殺傷能力が高いぞ?!


「貴様!

獣臭い獣人の分際で防ぐとは何事だ!」


 橙頭が吠えるが、そもそも再びお門違いだ。

虎兄弟も困惑してるが、気づけよ。


 しかしさすがにこれ以上の傍観は俺の天使にばれた時にへそを曲げられてしまうか。

俺の可愛い天使は虎の耳と尻尾も大好きだからな。


「他国の街中で祭りの為に他国から招いた商人達に立場を振りかざした挙げ句、他国の民をも攻撃するとはな。

それこそ国交問題にされたいか?」


 気配消しや幻覚魔法を解いて彼らにとって全くの死角から声をかけた。


「「うわ!」」

「きゃっ」


 唐突な背後からの声に驚いて3人が飛び上がる。

弾みでマセガキが橙頭の腕から転がったぞ。 

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