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13.再会

「兄様、アレ食べたい!」


 僕は張り切ってバルトス義兄様の手を引っ張る。


 今日は1週間続く年に1度の王都の商業祭3日目。

この祭りの為に各国の商業ギルドがこぞって出店する。

レイヤード義兄様も来たがったんだけど、去年は我慢したんだとバルトス義兄様が断固拒否したら邪魔してやると邪悪な笑顔で捨て台詞吐いて学校に行っちゃった。

ふふふ、そんなところはまだまだ可愛い少年だよね。

ちなみに毎年恒例のバトルになってる気がするのは気のせいじゃないかもしれない。

僕自体の邪魔は絶対しないと思うから特に気にしてないよ。


 それよりも初めまして美味しそうな食べ物達。

お久しぶりだね、美味しかった食べ物達。

今年も色々食べてやる!


 出店以外にもアデライド国からみた東西南北で大まかに分けた各同盟国の商会がまとまってブースとして構えられてる。

個人のお店に材料を卸すのが商会で、商会ギルドというそれら商会が集まって作る組合もある。

ブースでは各商会の独自商品なんかも売っているけど、必ず孤児院の子供を雇う事を義務付けてるんだよ。

福祉事業の一環なんだって。


「はぁ、笑顔が尊い。

アリーだけの格好いい兄様がいくらでも食べさせてあげるから、慌てなくていいんだよ」


 普段は優しげな面差しだが、デレッと崩れ気味なのがちょっと残念だよ、義兄様。

僕は買ってもらった串焼きを口いっぱいに頬ばる。


「んん!醤油?!」


 この世界にはない懐かしの味!


「おじさん!

このタレどうやって作ったの?!」

「おや、嬢ちゃんお目が高い!

これは東の国のジャガンダで作ってるセウルって調味料を使った秘伝のタレだ!

もう1本買うならあそこの商会に口利きしてやるぜ!」

「兄様、10本買って!」

「太っ腹だね、ありがとよぅ!」


 義父様達の分も買ってもらう。

頭に手拭い巻いたおじさんはニカッと笑って名前と商会のブースを教えてくれた。


「こら、アリー!

手を離しちゃダメだ!

俺の可愛い天使が拐われる!

向こうの端にあるんだから色々見ながら進もう」

「ふふっ、楽しくて!

あ、兄様、これ去年食べたお菓子だ!

食べたい!」

「はぁ、天使の笑顔が俺を癒す····」


 うん、危ない人だ。

なまじ顔が良いだけに残念すぎるよ、義兄様。


収納魔鞄(マジックバッグ)持ってきて正解だったね」

「そうだな、アリー。

そろそろ抱っこするよ」


 平べったくて小さいカステラの入った紙包みを鞄に入れていると、ごった返す人の波に小柄な僕は遭難しかける。

鞄の見た目は子供用ポシェット。

この紙包みだけでいっぱいになりそうだけど、魔術で空間を広げたいわゆる魔具なので食べ物くらいならいくらでも入る。

立ち並ぶ屋台も真ん中まで進めばさすがに抱っこが恥ずかしいなんて言ってられない人の多さだ。


 抱き上げられて筋張った前腕にちょこんと座る。

義兄様って魔術師なのに体はけっこう鍛えてるよね。

190センチを超え、人にしては長身な部類で獣人の男性とも張り合えるくらいの高さだから、抱き上げられると見える風景が全然違う。

高くて怖さはあるけど、今日は特に色々な種類のケモ耳が見れて楽しい。

猫耳、熊耳、兎耳、犬耳。

あ、あのケモ耳さんは片耳の先がギザギザで大きい赤毛の三角耳だ。

ざっと見ただけでも色々な毛色の色々な種類の耳がたくさんある。


「むー、モフりたいなぁ」

「ふふ、獣人の耳は好きに触っちゃダメだぞ?」


 相変わらずデレた顔だけど、注意はごもっともだ。

獣人の耳は繊細で、不用意に触れば殴られても文句は言えないのがこちらの世界の常識。


 黒猫と銀灰犬のケモミミが向こうから近づいてくる。

抱き上げられて義兄様より高くなった僕の目線と同じくらいの高さだなぁと何となく目で追う。

あれ、僕達に近づいてきた?


「兄様、知り合い?」

「ん?」


 方向を指差す。

あの獣人さん達どこかで見たような····。


「チッ、なぜここに」


 義兄様、舌打ちが聞こえたよ。

ケモ耳2人に挟まれて黒髪の人属の子供?

え、嘘でしょ····。


「茶会以来だな、アリアチェリーナ嬢。

バルトス殿も久々だが、元気だったか」


 お茶会ぶりでルドルフ=アドライド第二王子殿下と近衛騎士様達に再会した。

相手は王族だったが、義兄様は思い切り顔を顰めて嫌そうだ。

義兄様····不敬罪で投獄とか····ないよね?

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