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10.天使の慟哭~ヘルトside3

短めのお話これにて終了です。

 結界が解けてまだ1時間ほどしかたっていないのに、いったい誰が赤子を放置したのか。

最初からいたのかとも考えたが、あの結界は300年も全ての侵入を拒んでいた。

魔人属なら赤子でも生き続けていたかもしれないが、この子はどう見ても人属だ。

しかも魔力が全く感じられないとはどういうことだ。

髪色的に隣国の流民が国境を超えてさ迷っているうちに結界の消失に出くわし、捨てたのか?


 赤子は泣くこともなくぼんやりと生気のない紫暗の目を開いている。

亡くなった娘と重ねたのだろう妻に抱き上げられ····乳を含ませたではないか!


「ま、待てミレーネ!

その子が病気でも持っていたらどうする!」

「鑑定の魔法で確かめたから問題なくってよ。

状態が餓死寸前となってるのだもの、見過ごせないわ。

あなたは回復魔法をかけて胃に吸収できるようにしてくださいな」


 てきぱきと私に指示を出す。

普段は優しく柔らかな面差しが、まるで娘を守る母親のように凛々しい。

乳をやりながら見つめる眼差しは、愛娘に向けていた慈しむような光を宿していた。


 見た限り外傷はないが、内臓は弱っているのかすぐに乳を吐き戻した。

赤子と共にひとまず屋敷に転移し、医者を呼ばせて後の事は妻に任せた。

私は陛下の元に報告に行き、そこからは隊の編成に調査に報告にと駆けずり回って不眠不休で仕事をした。

合間に屋敷へ戻り、高熱出したり吐き戻して呼吸困難になったりする赤子に居合わせては治癒や回復魔法をかけたり、便宜上アリアチェリーナと名付けてあやしたりしながら衰弱した小さな体を労る。


 見つけた場所が場所なだけに面倒事になるのがわかっていたので、赤子の為にも存在はふせておいた。


 仕事が一段落し数ヶ月ぶりにまともに屋敷へ帰ると、思い切りのよい妻によって赤子は養女となっていた。


 おや?

養女の打診は受けてたけど手続きについては保留にしてたよな?

義兄となった2人の実子も普段と違って私には目もくれず、アリーなんて呼びながら抱っこ争奪戦してる?


 私だけ疎外感がすごい。

すでに情がわき、失った実の娘への喪失感が埋められてしまった事も重なって受け入れたのは言うまでもなかった。

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