第67話 白い気
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「まだ、話すこともできないのに…」
「私が話しかけると… ニコニコ笑うんですよ…」
「その時… 私にはこの子しかいないんだと、実感しました…」
「それが…」
「あんなことに…」
「お医者さんからは私の体の弱さが遺伝して、病気に体が勝てなかったそうです…」
「……」
「私のせいであの子は死んだ…」
「私が殺したようなもの…」
「きっと… 私のもとに生まれてこなければあの子はきっと幸せに生きていけたんだわ…」
「そんなことない!!」
「あかりちゃんはあなたのもとに生まれて、幸せだったと思います!!」
「……」
「あなたに何が分かるの…?」
「あなたに大事なものを失った私の気持ちなんて分かるわけないでしょ!!」
「勝手なことを言わないで!!」
「……」
「確かに、あなたの気持ちはあなたにしか分からないかもしれません…」
「けれど…」
「分かろうとすることはできます!!」
「……」
「私は、幼いころ両親を失ったんです…」
「えっ…」
「当時は、2人が死んだのは私のせいだって、ずっと感じていたんです…」
「だから…」
「大事なものを失ったあなたの気持ちは分かる気がするんです…」
「……」
「そうだったの…」
「ごめんなさい… あなたの気持ちを考えてなくて…」
「いいんですよ…」
「……」
「あなたが元気を取り戻せるように…」
「もう一度治療を始めてもいいですか…?」
「……」
「あなたに任せてもいいかしら…」
「もちろん!!」
凛はその場でニッコリ笑った。
女性はその場で両膝立ちをして、頭を下げた。
「それじゃあ… 始めます…」
「該伯流… 気術…」
「祓…」
シュウウウ…
凛の両手から、少し煙が出始め、女性の頭に手を当てた。
「おぎゃーーっ!! おぎゃーーっ!!」
「……」
「ダメだ… この声を聞くと…」
「あの子を思い出す…」
女性は涙を流し始めた。
「私なんかが親でごめんなさい…」
「あなたの人生を奪ってごめんなさい…」
「あなたを…」
「幸せにできなくてごめんなさい…」
ギュッ…
「!?」
凛は当てていない方の手で女性の手を握った。
あっ… 温かい…
「大丈夫ですよ…」
「そんなに自分を責めないでください…」
「ありがとう…」
ピカッ……
凛たちを覆った邪気は白い気へと変わっていった。
「!?」
「これは… あの時と同じじゃ…」
「凛が…」
「2人の邪気を治療した時と…」
「おぎゃーーっ… おぎゃー…」
「へへっ…」
聞こえていた赤ちゃんの泣き声は笑い声へと変わっていった。
「あっ… あかり…」
凛たちの前に、赤ちゃんの姿が現れた。
「……」
ニコッ…
凛は女性に微笑んだ。
「治療は終了です…」
「後は、2人で…」
凛は女性を残し白い気の中から出た。
「りっ… 凛!!」
該伯達は凛に駆け寄った。
「じっちゃん…」
「治療は成功だよ…」
「少し… 疲れ…」
バタン!!
凛はその場に倒れ気を失った。
「大丈夫か!! しっかりしろ!!」
「あかり…」
女性は赤ちゃんを抱きしめた。
「ごめんなさいね…」
「もっと一緒に遊んであげられなくて…」
「もっと読み聞かせしてあげられなくて…」
「もっと色んな場所に連れて行ってあげられなくて…」
「もっと…」
「抱きしめてあげられなくて…」
「けど…」
「あなたと過ごした時間は本当に幸せだった…」
「ありがとう…」
「へへっ…」
「お母しゃん… ありがとう…」
「!?」
女性が抱きしめた赤ちゃんは最後に微笑み消えていった。
「……」
「あかり…」
「私を母にしてくれて…」
「生まれてきてくれてありがとう…」
白い気は女性の体を覆い、体内に入っていった。
バタン!!
女性は微笑みながらその場で倒れ気絶した。
ー数時間後ー
「ん… んー…」
「凛!! 目を覚ましたか!!」
「じっちゃん…」
該伯は凛を抱きしめ、涙を流し始めた。
「凛!! よくやった!!」
「わしは、こんなに嬉しいことはない!!」
「大袈裟だよ…」
「……」
「そういえば…」
「女の人は…?」
「あー… あの人はシン達と居間にいる…」
「お前に礼を言いたいそうじゃ…」
「支度して行ってあげなさい…」
「わかった…」
凛は支度をして女性のいる居間へと向かった。
ザーーッ……
凛は女性のいる部屋のふすまを開けた。
「……」
「凛さん…」
「あっ… どうも…」
「……」
「マックス…」
「俺たちは邪魔だから…」
「座禅でもしてようぜ…」
「そうだね…」
シン達は部屋を出た。
「凛さん… 座って…」
「はい…」
凛は女性と対面になって座った。
「……」
「体調はどうですか…」
「とてもいいわ… 心が軽くなったみたい…」
「それは良かったです…」
「全部あなたのおかげよ…」
「ありがとう…」
「……」
ぐすっ…
凛は涙を流し始めた。
「よかった…」
「本当に良かった…」
「こんな私でも… 誰かの役に立てた…」
「気術で人を救うことが出来た…」
女性も凛につられて涙を流し始めた。
「えー… あなたは私の命の恩人…」
「そして…」
「最高の気術医さん…」
「凛さん…」
「最後にあかりは…」
「お母さん… ありがとうって言ったの…」
「その言葉はね…」
「あかりが初めて、しゃべった言葉…」
「……」
女性はその場で凛に深く頭を下げた。
「最後にあかりと…」
「話すことが出来ました…」
「私は…」
「私は…」
「母として、幸せな時間を過ごすことが出来ました…」
「本当にありがとうございました!!」
二コッ…
凛は微笑んだ。
「どういたしまして…」
第67話 FIN




