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《1》魔王の頼まれ事 〈ガルシュダッド〉





「魔王陛下・・・あのぉ・・・」



広々とした執務室の中で、山積になっている書類を片付けていると、なんとも焦れったい声が聞こえてきた。

顔を上げれば、濃い紫色の髪に紫色の目をした初老の男性が、申し訳無さそうな表情で立っている。



「ラルグランか、どうした?」


ラルグランは、現魔王が魔王になってから、ずっと側近として付いてくれている、魔族にしては珍しい者だ。


「そのぉ・・・。」


「何だ、気持ち悪い。言いたい事があるならさっさと言え。」


先を促すと、ラルグランは意を決した様に、こちらを睨みつけきた。


「なっ・・・何だ?」


一瞬喧嘩を売られているのかと、身構えると、ラルグランは慌てて視線を自分の足元に向け、自分を落ち着かせようとしてるのか、何度が深呼吸を繰り返す。

何時も冷静沈着な彼には、とても珍しい事だ。

ラルグランは、最後に大きく息を吐き出すと、両手を強く握り込み、また こちらを睨みつけてきた。


「いっいえ、すみません。私事なのですが・・・・。」


やはり、喧嘩を売られているのだろうかと、内心ハラハラしてしまう。

純粋に魔素力勝負なら、簡単に勝つ事が出来るのだが、魔王になったばかりの頃、色々あって・・・あり過ぎて・・・

できるならあまり争いたくない相手だ。


「我が娘と会っていただけませんか!」


ラルグランの半ば叫ぶ様な声が部屋の中に響き渡った。


ラルグランの娘?

確か前に娘が産まれたと聞いてはいたが、そんなに意気込んで言う事だろうか。

もしや、コレは見合いの話なのか?と、身構えると、ラルグランが慌てて声を上げる。


「違います。見合いではありませんから。」


素早く相手の思考を読み取るとは、流石と言うしかないのだが、その表情は彼らしく無く、焦って見える。


「では、何だというのだ?」


ラルグランはゆっくりと深呼吸を繰り返し、ゆっくりと話し始めた。


「娘は白いのです。」


「白い?どういう意味だ?」


「そのままの意味でございます。肌も髪も爪も真っ白く、唯一色があるのが紫の瞳だけなのです。」


魔界に白は、存在しない。


魔界に入ったあらゆるモノは、魔界の空気中に含まれる、濃厚な魔素によって、淡い灰色に染められるからだ。

それは、布や食品、花や木々、人族や獣族まで、魔素を持つ者、持たざる者、関係無くだ。

もちろん、人界や獣界にも、魔素は存在するが、魔界ほど濃くは無く、変色するほどの濃さは無い。


「それは、魔素を弾いているという事か?」


魔素は、常に空気中を漂っているモノであり、魔界において接触せずにいる事はほぼ不可能だ。

もしも、本当にラルグランの娘が白いのであれば、魔素に触れないよう、なんらかの力により、魔素が弾かれている可能性がある。


「私も、最初はそう思っておりました。ですが、私や妻の与える魔素は、間違い無く娘に吸収され、娘の糧となっているのです。」


魔素には、二通りのモノが存在する。一つは空気中を漂うモノ。もう一つは魔族の体内で生成されるものだ。

子供の魔族は、体内の魔素に関する器官が未発達で、自身で魔素を作り出す事も、空気中から魔素を抽出する事も出来ない者が多い。

しかし、魔族の子供は、魔素が無ければ成長する事が出来ず、死んでしまう。その為、食事と共に、親が子へと魔素を分け与えている。


「ならば問題ないだろう? 確かに魔界で白は珍しい・・・どころでは無いが、お前の娘ならば他の者達が手を出す事もできまい。多少成長がゆっくりだというだけで、どうしたと言うのだ?」


長い時を生きる魔族にとって、自分の知らない事、珍しいモノは、喉から手が出るほど欲しい。となれば勿論、奪おうとする者が出てくる。しかし、ラルグランの魔素力は魔王に次ぐほどだ。


「それが・・・多少では無いのです。娘は今年で産まれて20年になるのですが、その姿は未だ人間年齢の2歳ほどなのです・・・」


「に・・・2歳・・・。」


魔族の子供の成長速度はそれぞれ違う為、成長具合を表す時、人間年齢を使う。


人間は一定の速度で成長し、魔族ほどの個体差がないからだ。対して魔族の子供は、1年〜20年ほどと個体差がとても激しい。その為、成魔族になった歳を魔族の一歳とし、成魔族となる前段階の成長を、人間年齢として、人間の成長具合と照らし合わせる。


「お前が老けたのは、娘のせいか?」


魔族は、成魔族になると、そこから見た目の年齢が止まってしまう。

大量の魔素を使えば、老いたり、若返ったりする事は出来るが、消費する魔素がかなり多いために、よっぽどのない限り変える事は無い。

しかし、一つだけ成長とは関係なくとも、魔素を使わず見た目が変わる事がある。


「はい・・・娘に大半の魔力を与えているので、常に魔素が枯渇しており、次第に老いてしまい・・・。」


急速な魔力の枯渇。数年前から徐々に老け込んでいたのは知っていたが、数十年前から人族の貴族になりきる、という趣味に熱を入れていたので、そのせいだろうと、気にしていなかった。



「お前ほどの魔素持ちでも、賄えないのか?」


「ええ、妻の魔素を足しても到底・・・。」


「で、そんな娘に会えというのは?」


理由は大体想像がつく。

魔素を分け与えてほしいというのだろう。しかし、現魔王の魔素は簡単に分け与えられるものでは無かった。

歴代の魔王達の魔素であれば、問題は無かっただろう。しかし現魔王は別格だ。歴代の魔王達より膨大で上質な魔素を持ち、それを常に垂れ流していないと、ちょっとした魔法でもあらゆる物を破壊してしまう。

しかも、垂れ流された魔素は、魔力の弱い魔族には、耐えられないらしく、魔素の弱い者が現魔王に近づくと、魔力酔いを起こすほどだ。それなのに、成魔族にもなっていない子供が、到底受け止めきれるとは思えない。


「娘に魔素を分けていただきたいのです。勿論無理は承知です。本来ならば、魔王陛下に頼らねば育たぬ娘など、見捨てるべきなのでしょう。しかし、私と妻は少しでも可能性があるのなら、お願いしたいのです。」


「娘が死ぬ可能性を考えているのか?」


一瞬ラルグランの表情が険しくなり、手が強く握り込められたが、直ぐに覚悟を決めたように魔王を強く見つめた


「分かっております。娘も納得の上でございます。」


どうしたものか・・・

どう考えても面倒事。その娘が、魔素を受け止められたとしても、短期間で成長させられるわけではない。少しづつ少しづつ魔力を与え、成長を促すのだ。そうなれば、長い時間が必要となる。短くて1年、長ければ何年かかるか分からないほどの大仕事だ。


本来であれば、断るところなのだが、他ならぬラルグランの頼みである。それに、この魔界において魔素に染まらない真っ白な娘を、一目見てから断るのも良いかもしれない。

ラルグランの事だ、断られる事も考えているだろう。


「ならば、お前の娘が本当に真っ白で、俺の興味を引く事ができたのならば、引き受けるかもしれん。」


「本当ですか?」


僅かな希望に、目を輝かせるラルグランに釘をさす


「期待はするな。」


「分かっています。それでも、感謝いたします。」


そう言って、ラルグランは深々と頭を下げると、素早く部屋を後にした。

間違いなく、娘を連れてくる手配をしに行ったのだろう。

残されたガルシュダッドは、小さく鼻で笑うと右手を軽く上げる。

その瞬間、机に積まれていた書類達が宙を舞い、一瞬にして文字が刻まれると、パラパラ机の端に重ねられた。どうやら、わざと手間をかけて書類を書いていたらしい。

全ての書類が完成すると、魔王は部屋の隅に置かれたお気に入りのソファーに寝転んだ。

産まれて100年以上の現魔王は、既に退屈しはじめていた。



以前、魔素、魔力、魔法に関する設定を後書きに入れていたのですが、書いているうちに、訳が分からなくなり、ややこしくなり・・・・アホな作者は、その設定をゴミ箱にポイする事にしました・・・・

申し訳ございません。


魔素を用いて魔法を発動させる。とうい設定で、やっていこうと思います。

話の内容としては、大した変化は無いと思いますが、よろしくお願いいたします。


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