かぼちゃの中は燃えている
「え……」
「チャ……」
何これ……。 かぼちゃが喋ってるんだけど……。
「えっと……。 お人形さん?」
「違うっチャ!」
人形じゃないって。
人形説を否定してかぼちゃさんは叫ぶ。
「オレチャマは虚奪の悪魔ティアだっキャ! 手下を手に入れるために人間界に出てきたっチャ!」
「悪魔?」
「そうだニャ! 怖いかニャ!」
「可愛い」
「ありがとっキャ! じゃないのニャ!」
語尾がコロコロ変わるなぁ……。
でも可愛い。
「お前!」
「ん?」
「オレチャマの手下になれ!」
「いいよ」
「ホントにいいっチャ?」
「楽しそうだし」
「じゃぁ行くっチャ!」
「えっ! 待って待って!」
ティアという悪魔?は 小さい手で私の手を取るとものすごい力でひっぱる。
あまりにも急すぎるのとお姉ちゃんのことを考えるとすぐには行けない。
「なんでっチャ?」
「なんでって……急すぎるし、私にはお姉ちゃんがいるからすぐには行けないよ。 それにどこに行くの?」
「行くのは地下っチャ。 地下に悪魔達の世界があってオレチャマはそこで暮らしてるっキャ。 姉がいるなら姉も連れて行くニャ。 手下は多い方がいいんキャ。」
「すぐじゃないとダメなの?」
「できるだけすぐがいいニャ。 ずっと地上にいると好戦的な悪魔に襲われるっチャ。 それは嫌なのニャ」
「そうなんだね……。 でもどうやって地下に行くの? 地下に行ける道でもあるの?」
「……」
「?」
地下に行く方法を聞いたら黙っちゃった。 どうしたんだろ。
「ヂャッ」
「えっ?」
「無理ニャァァァ! 地下に行けないニャァァ!」
「なんで?」
地下に行くって言ってたけど、急に地下に行けないってティアは叫んでる。 さっきまで行くって急いでたのに、なんで行けないなんて……。
「オレチャマは地下に行くための道を作れないニャ!」
「え!? じゃぁどうやってここに来たの!?」
「知り合いに頼んで道を作ってもらったっチャ! ここに来たのは偶然で地下から出てすぐ車に弾き飛ばされたっチャ! だからさっきお前にぶつかったんだニャ!」
自分じゃ地下に行けないって……。 どーするのさ……。 その知り合いの人を探さなきゃ行けないじゃん。
「とりあえずその知り合いの人を探さなきゃダメじゃない?」
「無理ニャ……。 アイツはアイツでやることがあるっチャ……。 南極に行くとか言ってたから」
「えぇ……」
「アイツと合流できるまで隠れるしかないっキャ。 お前どこか隠れる場所知らないカ?」
「隠れる場所ってどんな風に?」
「外じゃなきゃどこでも大丈夫っキャ。 色々と密集してる場所なら悪魔達は基本手を出さないニャ。」
「外じゃなきゃいいのね……」
だったら私の家がいい。 お姉ちゃんもいるし、ティアを紹介できる。
「私の家は?」
「んー厶、いいっチャよ」
「お姉ちゃんもいるから」
「決まりっチャ。 さっさとオレチャマをお前の住処に連れいくっチャ」
「うん。 じゃぁ行こっか」
ティアの同意も得たし、家に帰ろうと思ったけど。 このままだとダメじゃん。 家は路地裏出てすぐだけど、その間地味に人いるんだよなぁ……。 ティアを見られちゃダメな気がするし……。 抱っこすればいいかなぁ……。
「ねぇ」
「なんっチャ?」
「抱っこしていい?」
「だっこ? なんチャそれは」
「両腕で君のことをギューって持つの。 家までの道人が多いから、ティアのこと見られちゃダメでしょ?」
「ぷー厶、なるほどっキャ。 できるだけ見られたくないニャ。 オレチャマのことだっこするニャ」
「じゃぁ抱っこするね。 おいしょっ」
わぁー意外と大きいんだなぁ。 それにちょっと重い。 5キロくらいかな。 あと凄く暖かい。
近くで見てなかったから気づかなかったけどかぼちゃの中燃えてるんだぁ〜。 可愛い。 でもこのままだと周り暗いから目立つなぁ……。
「ねぇ、その火消せる?」
「それはオレチャマに死ねって言ってるのと同じっキャ。 火が消えたらオレチャマも終わりニャ。」
「そっか。 じゃぁどうしよ……」
ティアの火が見えてるの目と口だけみたいだし……、胸に押し付ければ周りからは見えないようになるかも。
「ちょっと苦しいかもだけど我慢してね」
「ムキュッ」
「よし」
ティアの火が見えなくなったから少し早歩きで家に向かう。 路地裏から出てすぐはいつも人通りが多くて、今日は時間的にもいつもより人が多かった。
(隠してよかった……)
そのまま早歩きで歩いて、アパートの階段に着いた。
「着いたよ」
「ぷはぁっ…… お前のこれなんニャ?」
そう言ってティアは私の胸を軽く叩く。
おっ〇いなんて言いにくいから胸でいいかな。
「胸だよ。 どうかしたの?」
「めっちゃ柔らかいニャ。 落ち着くっチャ」
「ふふふ〜それはよかった」
ティアを抱っこしたまま階段を上って、部屋の前まで行く。
「ここが私とお姉ちゃんの家だよ」
「この板が?」
「これはドアだよ。 地下には無いの?」
「同じやつあったけど使ったことないニャ」
「へ〜」
地下にも建物あるのかな。 行けるようになったら行ってみたい。
ティアを片手で抱っこして開いたもう片方の手でドアを開ける。
「ただいまぁ〜」
「あ、おかえりなさーい」
部屋の奥からお姉ちゃんの元気な声が聞こえる。
靴を脱いで部屋に上がる。
「早かったね……て、あれ? なにそれ」
「可愛いでしょ」
「わぁ〜可愛い〜!」
お姉ちゃんがティアを見て凄い笑顔になる。 可愛いもの好きだからね。
「人形?」
「えっとねぇ……」
「人形じゃないっチャ! お前ら姉妹は同じ考えなんだな!」
「おぉ〜喋った……」
「お前ら変わってるっチャ。 普通悪魔を見たら人間は驚くっキャ」
「悪魔……?」
「あ、急すぎてわかんないよね。 私もよく分かってないけど。 ちょっと落ち着いて話そ?」
「ぷ厶」
スーツのままだといずらいから部屋着に着替えて、その後お姉ちゃんにティアと出会った経緯とティアの言ってた地下に行くとかの話をした。
「君の手下になるってこと?」
「そうっチャ。 2人を手下にして地下に行くっキャ」
「でも今は地下に行けないからしばらくはここですごすっていう事ね」
「そういうことニャ」
お姉ちゃんは頭がいいから話が早い。 すぐティアの話にOKを出してくれた。
お姉ちゃんもティアが暮らしていた地下の世界に興味があるみたい。
「まぁ兎に角、一緒にすごすことになるんだし、これからよろしくねティア」
「よろしくっチャ。 そういえばお前たちの名前はなにっキャ? 知りたいニャ」
「私は青葉彩乃。 彩乃でいいからね」
「私は青葉紫。 紫でいいよ」
「あやのとゆかりっキャね。 これからしばらくは世話になるっチャ。 よろしく頼むっチャ」
「うん。 いっぱいお世話してあげるよ〜」
「そうだね」
今までの生活に1人……なんて言うんだろ? まぁ1人でいいや。 1人増えるわけだから楽しい毎日になるんだろうなぁ……。 大変なこともあるんだろうけど頑張ろう。
「にしても可愛いね〜ティアって」
「厶……」
お姉ちゃんがティアをギューって抱きしめる。
ああ…ない胸を押し付けちゃって……。
「厶?」
「ん〜? どしたの?」
ティアがお姉ちゃんのない胸を軽く叩く。
「硬いっチャ。 ペったペタっチャ」
「」
「あやのはとっても柔らかかったニャ。 なんでこんなに違うんキャ?」
「お姉ちゃんはね胸がないから硬いんだよ」
「ここまできて言われるのか……」
「仕方ないよ……ないんだもん」
「もういいや…ご飯作ってくるね……」
「いってらっしゃい」
「なんか落ち込んでるっチャ?」
「お姉ちゃん胸で悩んでるから……」
「崖っチャ」
「やめようかw」
「彩乃笑ってるじゃん」
「しかたないよw」
「じゃぁ明日朝起きたら彩乃全裸になってるかもね」
「え」
明日が来ないでほしいよ。