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ぎふと  作者: えふ
5/11

落下してきたぷれぜんと

「起きて彩乃」


「ん……」


午前3時、彩乃は紫に起こされる。


「ふぁ〜」


彩乃は眠そうにあくびをしながら目をこする。


「準備しないといけないよ」


「んー」


彩乃は1回体を起こすがすぐ、枕に顔を埋めてしまう。


「ほら起きて」


「もーちょっと……」


「……」


たまにいるよねこういう人。

いくら起こしても起きない。

でも彩乃にはある言葉を囁けば一瞬で起きますよご覧くだせぇ。


「彩乃……」


「ん……?」


「脱がすよ」


「ヴぁっぷげーん!?」


なんて?

まぁ起きたのでよかったでしょう。

彩乃は姉に対してちょっとしたトラウマがありましてね。

この一言で飛び上がります。


「早く準備」


「はーい……」


変な起こされ方をした彩乃は項垂れながらベッドを出て、コタツに入る。


「ご飯作るから待ってて」


「うん……」


紫は朝食を作るために台所へ行き、彩乃はコタツに入りながらテレビをつけて早朝の番組を見る。


「……」


テレビでは誕生日で今日の運勢を占うやつをやってた。

彩乃と紫は孤児院育ちで誕生日が分からなかったから、2人とも孤児院に届けられた日、バレンタインが誕生日ということになっている。

で、テレビの占いの結果。


『5位は2月の方! 新しい出会いがある1日でしょう!』


「新しい出会いかー。 あったらいいな〜。 楽しそう」


自分とは正反対の明るい声を出すアナウンサーを見て、ため息を吐く彩乃。

別に新しい出会いなんか望んじゃいない。

姉との日々の生活が楽しければいい。


「あ〜ねむー」


「できたよ。 ちゃんと起きて」


今日の朝食はシュガートースト。

今日っていうか、ほぼ毎日シュガートースト。

簡単だからね。


「いただきます……」


「いただきます」


彩乃はオレンジジュースを飲みながらトーストを食べ、紫はコーヒーを飲みながら食べている。


「お姉ちゃんって、いっつもブラック飲んでるよね」


「そうだよ」


「ふーん……」


「どしたの?」


「濃いコーヒーばっか飲んでるから胸が成長しないんじゃないかなって」


「」


彩乃はある程度あるけど紫はまったくない。

ストーンとしてる。


「か、関係ないでしょ!?」


「え〜でもさー、コーヒー飲んでると身長とか、体の成長止まるってよく言うじゃん?」


「言うっけか?」


「あれ、聞いたことない?」


「全然」


彩乃はどっかの誰かが言ってたことを聞いただけでホントのことは知らない。

コーヒー飲んでると身長伸びなくなるとか聞いたことがあるような無いような。


「そんなことあるのかな……」


「どうだろうね。 あるんじゃない?」


「……」スッ


「ん? なんで無言でコーヒーこっちにやるの?」


「彩乃はもう充分あるから成長しなくてもいいでしょ?」


「よくないけど……。 というかそれ聞いただけでコーヒー飲むのやめないでよ……。 コーヒーすっごい好きだったじゃん」


「こんなものが私を悩ませていたなんて……」


「悩んでたんだね。 もう諦めたのかと」


「夢は見てたい」


「ミリもないんだから夢見る必要ないよ」


「残酷ね……」


「現実はそんなもんだよ」


朝から胸を馬鹿にされ落ち込む紫。

その様子を見て彩乃は元気になる。


「ふぅ…スッキリした」


「人を馬鹿にしてスッキリしないで……」


「大丈夫! きっといつかはつくよ笑 いつかは!」


「あ゛ぁ〜!」


「着替えてきまーす!」


トーストを食べきり紫にトドメの一言をぶつけて彩乃は会社に行くための準備をする。

歯を磨き、顔を洗っていつものスーツに着替える。


「よし、これでバッチリ」


最後に櫛で髪を整えて終わり。

カバンを持ち、玄関へ向かう。


「いってきまーす」


「いってらっしゃーい。 気をつけてね」


いつも通りの姉の声を背に受け、玄関から出る。


「今日も寒いね」


外は少し雪がぱらついていた。


「さ、行こ」


雪がうっすらと積もった道を転ばないように歩いていった。



















「着いた〜ってあれ……」


会社のある雑居ビルに着いて、会社のある部屋の窓を見ると電気がついている。


「あれ? 消し忘れちゃった?」


もしかしたら鍵もあいてるかもしれないと、少し早歩きで階段を上る。

部屋の前に来てドアノブを回してみる。

なんの抵抗もなく開いた。


「やっちゃったなぁ……」


これは怒られるなぁって思いながら、靴を脱ぎ部屋に入る。


「〜〜〜」


「ん?」


誰かの話し声が聞こえた。

なんだろうと思い、声のする方を見る。


「〜はい。 アラスカですか……。 でも今は規制が……」


「社長さん……」


声の主は社長で電話で誰かと話しているようだった。


「早いなぁ……」


自分よりも早い時間に人がいるなんて初めてだ。

とりあえず電話の邪魔になってはいけないので黙って突っ立っとく。


「ええ、では明日と明後日。 ここで。」


「……」


「っ!? なんだ彩乃君か……」


「あ、驚かせてすみません」


黙って突っ立っていたから驚かせたようだ。


「いつからいた?」


「ついさっきですよ」


「そうか……」


「? どうかしたんですか?」


「いや、なんでもない。 気にしないでくれ」

「はい。 じゃぁ掃除を……」


「あ、少しいいか。」


「?」


いつも通り掃除を始めようとする彩乃を佐々木は呼び止める。


「彩乃君は明日と明後日は来なくていい。 ここで大事な商談をするからな。 彩乃君は休みだ。」


「休み……ですか。 分かりました」


「それだけだ。 行っていいぞ」


(休み……)


彩乃にとって初めての休み。 休日。

会社に来ない日ということだ。


(休みかぁ〜 しかも2日も。 お姉ちゃんと一緒にいよ)


いつも通り給湯室に来て心の中で叫んでみる。 そこまで叫んではいないけど。


「帰るまではちゃんとお仕事しなきゃね」


給湯室の隅にカバンとジャケットを置き、掃除機を持って給湯室から出る。


「彩乃君」


「はい?」


給湯室を出たところで社長に呼び止められる。


「まだ掃除はいい、それを置いてこっちに来て」


彩乃は掃除機を壁際に置き、言われた通りに社長の方に行く。


「なんですか?」


「今日は少し変わったのを、と思ってね。 両手を出して」


彩乃が両手を出すと佐々木は彩乃の両手を縄で近くに取り付けた細い柱に縛り付ける。

そして佐々木は自分の席に戻る。


「……」


「……」


「……」


「あの……」


「なんだい?」


「これは…なんですか?」


「放置プレイだよ」


「え」


「たまにはいいでしょ?」


「まぁ……いいですけど」


この会社に来て初めての放置プレイ。

彩乃は放置されるのが1番苦手。


(放置かぁ……)


多分、今日1日放置ということになるだろうから、めちゃくちゃ暇だ。

兎に角頑張るしかない。 ただ放置されてるのを耐えるだけだけど。 メンタルが持つかどうか。


「……」


社長は黙って書類でなんかしてる。


(ほんとに放置か……)


他の社員が来る8時過ぎまで続きました。




















「よし、今日は終わりだ。 帰るぞ」


「「「はい」」」


社長が終業を告げる。


「……」


「今外してやる」


あの後ほかの社員が来たら外してもらえるんだろうと彩乃は思っていたが、外してもらえなくて今に至る。


「まだ7時だが、君も帰っていい」


「え? いいんですか?」


「あぁ。 特にすることないだろうからな」


「はぁ……分かりました」


最近は変なことも起こるもんだ。

2日も休みが与えられたと思ったら、今日も早く帰れる。

悪いことではないからいいんだろうけど。


(……そういえば、社長さんが朝電話してる時に言ってた規制って、何の話なんだろう)


最近規制が厳しくなったのは麻薬の密輸ぐらいだ。


(そんなことは……ないよね?)


麻薬じゃなくてほかのものかもしれないし、まぁ別に気にしないでいいものなのは間違いないだろう。


「帰ろう……」


給湯室からジャケットとカバンを取ってきて、会社から出る。

社長はまだ残ってるみたいだ。


「まだ何かやるのかな」


急に色々と起こってよく分からないが、社長は違法なことをしてるわけじゃないんだろう。

そこまで気にすることじゃない。


「とりあえず帰ろう」


不安な考えを振り払って帰ることに集中する。

集中することでもないけど、違うことに集中した方がいいんだ。


「また路地裏通ろうかな」


あの路地裏、街灯とかあるわけじゃないから夜通るとめっちゃ暗い。 だからいつも携帯のライトをつけて歩いてる。

おかげで転けることなくいつも歩けている。


「ここ通るとすっごい近いなぁ」


もう少しで路地裏を抜けると思って少し足を早めた。 その時、上からなんか聞こえた。


「ニィィヤァァァァァ!!」


「ふぇ!?」


で、なんか降ってきた。 いや、落ちてきた。 同じか。

その落ちてきた何かは見事に彩乃の頭にゲキトツする。


「ヂャッ!」


「ぐっ!」


その衝撃で彩乃は尻もちを着いてしまう。


「いったぁ……」


「チャ……」


落ちてきたものもなんか呻いてる。 てか生き物落ちてきたのか。 めっちゃ硬いやん。


「何……」


どんな生き物が落ちてきたのか、と思い落ちてきたものが吹っ飛んでった方を見てみると、


「え?」


「キャ?」


喋って光るかぼちゃがいた。

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