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落ちる世界  作者: 掃本将大
声を聴いた
7/13



 彼女は狐に、「この人は大丈夫だから、手伝ってもらいなさい」と言い、続けて僕に、「という訳なんで、私は向こうを探すから、あなたは向こうをよろしく!」と言って去りかけた。


 「おおっと危ない。危ない。見つかったら私にL○NEして、また此処に集合ね。ああ、もし7時まで見つからなかったら、勝手に帰ってくれていいよ。ただできればそれもL○NEして欲しいな」

 「わ、わかりました」

 「じゃあ、互いの健闘を祈る!」

 そう言って今度こそ去った。


 僕と狐が残された。

 

 「よろしく」そう話し掛けるが、狐は黙ったままだった。

 

 仕方がないので、自転車を停めても大丈夫そうな所に停め、狐の子供を探し始めた。狐は歩く僕の周りをうろちょろしながら、自分の子供を探しているのだろう。困っているのだろうがその様子はかわいく思えた。子供行方不明で探し回る親を見てかわいいなんて不謹慎かと思えたが所詮狐である。

 彼女との会話を思い出し、多分動物と話せるよな、そんなバカな事を思ったりもしたが、今はとりあえず探さなければならない。


 狐の子供が行きそうな場所、そんな場所は一般的な男子高校生である僕は知らなかった。スマホで検索してみても、イマイチわからない。しいて挙げるなら、ボールが好きで、木に登るらしい。木の上に居るのだろうか?

 引き続き、この状況を打破してくれる情報を探していると、ああやっと分かった。何故、彼女が僕に、いや、人に、子狐探しを依頼したのか。ということは、僕は、はあ…僕にそれを求めちゃ駄目だろ、和泉さん……


 彼女にL○NEで一つ質問を送った。

 『子狐が居なくなったのはいつですか?』

 

 すぐ既読がついた。

 『昨日からだそうです』

 『ごめん、伝えるの忘れてたね』

 と、可愛い猫が謝るスタンプと送ってきた。


 はあ……とても面倒だ……

 ため息ばかりでてしまう。しかし、彼女からの直々の依頼だ。無下にはできなかった。


 とりあえず、僕は近くを歩いていた買い物帰りと思しき主婦に話し掛けた。

 

 「あの…すみません」

 「………?」

 「えっと、昨日から今日にかけて、子狐を見かけませんでしたか?」

 「子狐がどうかしたのかい?」

 「いえっ!あの、その、友人のペットなんですが、逃げてしまって…」

 嘘をついてしまったが、仕方が無い。話しをスムーズに進めるためだった。


 「さあ、知らないねぇ」

 「そうですか…ありがとうございました」

 礼をして、その場を立ち去った。


 まさか、1人目から当たるとは思っていない。その後も、主婦や、帰宅途中であろう男子中学生─僕が話しかけられるような優男である─、サラリーマン─同じく優男─、4,5人に聞き込みをする。だが子狐を見た人はいなかった。

 小学生、女子中高学生に話しかけないのはわかってくれるだろう。この歳で不審者扱いされたくないからだ。


 しかし、僕が知らない人に話しかけていることには自分自身驚いた。たぶん何かしらの和泉さんパワーが働いているのであろう。明日はできないに違いない。


 まだ、6時半。後30分は探さないといけない。


 見知らぬ通りをあてもなく歩いていると、子供の元気な声が聞こえてきた。野球部と違い、高くやんちゃな、声を聞く限りでは男女がわからないような、それぐらいの年齢の声だ。そして、すぐに、小さな公園が見えた。


 小さな公園だったが、とても大きな木が生えていた。遊具はすべり台、砂場、それだけだった。ピンク、赤、黄、緑と無駄にカラフルな、ただ所々剥がれたすべり台。砂場には崩れかけの泥団子とまとめて置かれた雑草。

 小さな、と言っても小学校3,4年生ぐらいだろうか?それくらいの子供が2人追いかけあって遊んでいた。

 僕も小さい時はあんなんだったんだろうか。少し懐かしい気分になる。自分の子供時代を回想しかけたが、今はそんな事している場合じゃなかった。

 通りに人はおらず、自動車もいなかった。ただ、子供の純粋に今が楽しい、と高らかな宣言が響いている。羨ましく感じる。


 子供2人組以外誰もいない。しょうがないと割り切った。2人は運よく?男子である。高校生が見知らぬ小学生に話し掛けたら、とっても危ない感じがした。通報もあり得るかもしれないとか思った。


 でも、それ以上に彼女の役に立ちたかった、のだと思う。僕は子供に話しを訊くことを決意した。


 「なあ!そこの少年達よ!」

 あ、セリフ間違ったな、言ってすぐ気がついた。

 

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